リプレイ

2/26(水) 第一フェイズOP公開
3/18(火) 10:00
リプレイ公開
3/25(火) 第二フェイズOP公開
ジョン・スミス

――あの時の話、ですか? もう、あれから半年近くになりますか。
確かにこれまでの経緯をご説明する為には、あの出来事から話す必要があるかもしれませんね
今思えばですが、これも全ては決まっていた事だったのかもしれません。
いえいえ、ボクは何も知りませんでしたよ。ええ、勿論。むしろ一体誰にこうなる事が予想出来たでしょう?

ジョン・スミス

あれはサルヴァトーレ・ロッソの処女航海中に起きた出来事でした。
ボク達クルーはまだお互いの顔も名前も良く分かっていない間柄のまま、初陣を経験する事になったのです。
……では、始めましょうか。少し長くなってしまいますが、お付き合い下さい。
大丈夫、きっと退屈はしない筈ですから♪

エージェント:ジョン・スミス


オープニング

●崩壊

 ――LH044の崩壊は、時間の問題だった。
 異星生物ヴォイドの襲撃を退けるには、LH044の防衛戦力は余りにも脆弱だ。交戦開始からそう時を置かずコロニーへの侵入を許し、作戦目標は早々に防衛から脱出へと切り替えられた。
「こいつら次から次へと! どこから湧いて来ている!?」
「ダメだ、またコロニーに取りつかれた! このままでは住民が……!」
 周辺宙域では防衛部隊がCAMによる戦闘を展開していたが、状況は劣勢。
 次々と押し寄せる異形の生命体は幾ら倒してもきりがなく、次々に味方のシグナルが消滅していく。
「何なんだこいつら! 畜生、纏わりつくんじゃねえ!」
「落ち着け、冷静になれ! CAMなら十分に対処出来る!」
「うわああっ、く、来るなあああっ!?」
 真空を縦横無尽に駆けるその身体能力もそうだが、この異形の最大の脅威はその外見にあった。
 悍ましい外見で迫る怪物は防衛戦力から冷静な思考を奪い、その物量もあって指揮系統は壊滅。後は虱潰しに食い尽くされるのを待つだけの状況にあった。
 怪物はコロニーの外壁を突き破り内部にまで侵入している。このままでは数えきれない程の死傷者が出る……そんな時だった。

●救世艦

「――LH044を確認! メインモニターに映します!」
 惑星間航行用戦略宇宙戦艦、サルヴァトーレ・ロッソ。その艦橋でダニエル・ラーゲルベックは惨状に眉を潜めた。LH044は大量のヴォイドに包囲され、防衛部隊は全滅寸前だった。
「何度見ても悪趣味ですね。絵に書いたようなエイリアン……性質の悪い冗談です♪」
 ダニエルの隣でジョン・スミスが呟く。ブリッジクルーの中には敵を生で見るのは初めてという者も多い。人材は一流を揃えたが、経験はこれから。化け物を前に萎縮しない方がおかしい。
「総員戦闘配備! これよりLH044の救助活動を開始する!」
 ダニエル艦長の怒号に呆けていたクルーの手が動き出す。ジョンはニコリと微笑み横目で艦長を捉える。
「初陣の者も多い筈。やれますかね?」
「その為に俺がいるんだろうが。使えねぇなら使い物にするだけだ」
「や、実に頼もしい。それではお手並み拝見と行きましょうか」
「……全砲門開け! チマチマやるだけ無駄だ、一斉砲撃で風穴をブチ空ける!」
 闇を駆ける巨大な真紅の船。それは人類が反撃の為に研ぎ澄ました一振りの刃。
「マテリアル粒子砲を使う!」
「おや、いきなりですか?」
「黙って見てろ。大火力の効果的運用ってモンを見せてやる」
 肩を竦めるジョン。オペレーターは艦長の指示に従いマテリアル粒子砲を起動する。
「マテリアル粒子砲展開! エネルギーチャージ開始! 主砲発射カウント開始……!」
 サルヴァトーレ・ロッソ前方下部に取り付けられた主砲、マテリアル粒子砲。そのからくりが如何なる物かなどダニエルにとっては関係ない。ただ一つ確かな事、それはこの力がヴォイドを打ち破る反逆の狼煙となるであろうという事のみ。
「マテリアル粒子砲、発射ぁ!」
 収束した青白い光が瞬き、光の矢が放たれる。それはうろつく小型のヴォイドを飲み込み一瞬で蒸発させ、射線上から敵の姿を一掃した。圧倒的な力に呆然とするクルーに男は次の指示を出す。
「野郎共突撃だ! CAM隊発進! 安全を確保し次第、救助艇を出す! もう十分過ぎる程死んでんだ。これ以上誰も殺すんじゃねえぞ!」

 人型の戦闘装甲機、通称CAM。ハンガーに並んだそれらが起動し、艦後方のカタパルトへ移動を開始する。
「艦長も大胆な事するな。ヴァイキングの末裔って、あながち冗談でもないのかもな……っと」
 カタパルトへ移動したCAM、デュミナス。そのコックピットで男は操縦桿を握り締め前を向く。
「マーティン隊は防衛部隊の援護を優先するぞ。訓練通りにやれば大丈夫だ。リラックスして俺の後ろを飛べばいい……なっ?」
 後続の味方にウィンクしてから男は息を吐く。
「クリストファー・マーティン、デュミナス……発進する!」
 次々にカタパルトから射出されたCAM隊が隊列を組みながらLH044へ向かう。クリストファーはアサルトライフルで次々にヴォイドを撃墜しながら味方を導いていく。
「こいつらの相手をするにはコツがある。あんまり真面目に見つめすぎない事だ。生き残って帰った時何をするか……救助した人たちの笑顔。そういう事を考えながら戦うんだな」
「そ、そんな楽観的な……!」
「安心しろ、デュミナスは強い。汗水流して訓練した時間は裏切らない。やれるさ、俺たちなら」
 優しく、力強く微笑むクリストファーの声。その頼もしい背中に続き、CAM隊が攻撃を開始する。

「マーティン隊、防衛部隊と合流! 防衛ラインを再構築しています!」
「救助艇を往復させ住民をこの艦に避難させるぞ!」
「周辺宙域に既に離脱した物と思われる脱出艇の反応があります!」
「当然それも回収だ! 急げ!」
 慌ただしく指示を飛ばすダニエルの隣、ジョンは顎に手をやり状況を見つめていた。
「コロニーの損傷も激しい。あまり残された時間は長くない……というより、いつ崩壊してもおかしくないでしょうね」
「艦長! 大型ヴォイドの接近を確認! 更に大量のヴォイドが出現、本艦に向かってきます!」
「救助作業中はここから動けませんね……艦長?」
 無数の怪物を取り巻きに連れながらゆっくりとLH044に近づく大型ヴォイド。その大きさは500m。闇に浮かぶクラゲのようなそれは夥しい数の眼球を出鱈目に動かし続けている。
「……マテリアル粒子砲再充填急げ! 住民の回収が完了し次第主砲を使って退路を作る!」
「マテリアル粒子砲、再充填まで急いでも12分必要です!」
「というか、救助完了にはもっと時間が必要では?」
「それを何とかするのが俺たちの仕事だ。全員がベストを尽くせば希望は見えるだろうさ。俺たちにはこんな所で躓いている暇はねぇんだ……四の五の言わずに勝ちに行くぞ!」
 状況は困難を極めたが、ダニエルは諦めていなかった。
 この艦はその為にある。諦めを吹き飛ばし。敗北を覆し。人類を救う為の艦。
 救世艦は自らが背負うそのさだめを知らぬまま、戦いの歴史の幕を開けようとしていた。

                                   執筆/担当 神宮寺飛鳥

※今回のプレゲームについて
 今回のプレゲームは「回想」であり、既存WTRPGの合戦や大規模作戦と異なります。
 入力の前にご確認くださいませ。

リアルブルーの人々

ダニエル・ラーゲルベック
地球連合宙軍宇宙戦艦「サルヴァトーレ・ロッソ」艦長
ダニエル・ラーゲルベック
ジョン・スミス
地球連合宙軍エージェント
ジョン・スミス
クリストファー・マーティン
連合宙軍 戦術兵器CAMデュミナスパイロット
クリストファー・マーティン