サルヴァトーレ・ロッソ調査/避難誘導、安全確保/清め祓いのお祭り/歪虚との戦闘
●外へ――
清め祓いのお祭りで低下した負の力、避難誘導、安全確保によって住民の安全が確保され――。
歪虚反応のあったサルヴァトーレ・ロッソを調査していた部隊により、見つかった多数のヴォイド達。
「調査班より入電! 小型ヴォイドがいっぱい、外壁を上ってきているよっ!」
報告を受けたシンシア・クリスティーが、緊迫した声を上げた。
艦内に侵入した小型ヴォイドとの戦闘が始まる。
対処するのはリアルブルーの軍人と、協力を申し出てくれたクリムゾンウェストのハンター達。
「即席での連携すら――難しいか」
既に時間が、ないのだ。
アバルト・ジンツァーはハンターとの緊密な連携を諦めて、軍人のみであたろうと動く。
アバルト達軍人やハンター達は、ひとまず自分たちの手慣れたやり方で事に当たることにした。
報告を受けた場所の近く――複数の通路で、ヴォイドの姿が見つかったとの知らせがあったためだ。
まず侵入したヴォイドを排除し、戦力を集中させ艦外のヴォイドを殲滅する計画だった。
大きな艦とはいえ、大人数で進むには狭い通路である。
数名ずつ迂回路も使用し向かって行くこととなった。
いくつかある通路で――。
「最悪、死ぬのも運命やろて、な……っ!」
蠍のような外見のヴォイドと対峙したべノンはごちる。
毒の有りそうな針に、強固な甲殻――そして2メートルというサイズ。
ベノンは余裕のある表情を見せたまま、肚で覚悟を決める――。
「無賃乗艦は困るんだよねぇ、お客さん」
そこへ共に移動していた沢渡 源之丞の銃撃がヴォイドの甲殻の継ぎ目に襲いかかる。
「おっと、こんなこと言っちゃうと、本当のお客さんに失礼かな」
沢渡の銃撃でベノンに向かっていたヴォイドは、その動きを止めた。
「……今やっ」
僅かに生まれた隙を好機と取って、ヴォイドに刀で何度も斬りかかるベノン。
強固な殻を避けるように継ぎ目を狙う。
沢渡もまた、ベノンの攻撃の合間に銃撃での援護を行う。
「結構、手ごわかったな」
ベノンと沢渡の連携によって、通路を塞いでいたヴォイドを排除 することに成功。
霧散していくヴォイドを睨めつけた後、二人は先を進む。
「やれやれ、なんでこういつもトラブルに巻き込まれるのだろうね……」
新たにヴォイド出現の報告があった別の通路を進む鳳覚羅。
「ここまで来たんだし、貴方達の言う『乗りかかった船』ってやつね。歪虚の始末、私もお手伝いするわ」
鳳と共に進んでいるのはハンターのエルムだ。
「噂をすれば、なんとやらってね」
二人の前に現れたのは大きな鋏を持つザリガニの様なヴォイド。
通路を塞ぐように長い胴を投げ出していた。
「少々厄介だけど、こちらも当然容赦はしないよ?」
刀を抜き放つ鳳と、手狭な場所でも使いやすい小刀 に手をかけたエルムの二人は構える。
まず動いたのは――スピードを活かして斬りかかるエルムだ。
鳳はエルムに敵の攻撃が向かわないよう注意深く観察し、タイミングをずらして撹乱しつつエルムの攻撃に合わせていく。
即席の連携ながら二人はヴォイドに対して確実にダメージを加えていく。
鳳やエルムを狙って攻撃をするが、空を切るヴォイドの鋏。
二人は鋏の甲殻の繋ぎ目を攻撃して両方共切り落とすことに成功する。
鋏の無くなったヴォイドは攻撃手段を奪われ、すぐに倒されてしまった。
鳳とエルムは先を進む。
邂逅――。
「その格好……俺たちと同じ世界の人間か?」
自分と同行することになったハンターに、綾瀬 樹緑は問いかけた。
「そうだ。急にこっちに来ちまったんだ」
お前らよりは少し早い到着だ――と白水 燈夜は頷き、懐かしき世界の同胞、綾瀬の姿を見つめる。
「わたくしはクリムゾンウェストに住まうもの……エルフのエゼル ラプーンです 」
暗くはないが明るいとも言えない通路を行く三人。目的は敵の排除――艦の安全の確保だ。
連絡があったポイント付近――蜂のような ヴォイドが現れる。
「中にいる人たちの安全は守って見せます!」
エゼルは剣を斬るというよりも刺す形で攻撃を繰り出す。
「それにしてもその力は何だ……?」
クリムゾンウェストのハンター の力を見た綾瀬は疑問に思う。
疑問に思いながらも綾瀬は持ってきた幾つかのナイフを手にした。
自分には彼らのような不思議な力はないが、彼らの補助程度は出来るはずだ。
エゼルに攻撃をかけるヴォイド、綾瀬はナイフを投げてエゼルに対する攻撃を牽制する。
「甲殻類は中身が柔らかいってのが定石……なんだけど、コイツはどうだろうな!」
眉をひそめ悪態をつきつつも、燈夜は敵の弱点を探る。
幾ばくかの攻防の後――エゼルは羽の付け根を刺し貫き、飛行を出来なくさせた。
地に落ちた所へ皆でとどめを刺すと、排除したことを確認し、敵の侵入が多い第二艦橋側 へと向かっていった。
●リアブリッジにて
艦内の掃討 が一段落つき、外周部のヴォイド排除へと作戦は進行していた。
艦外は広々とした場所故に、艦内に入り込んだヴォイドよりも艦外のほうが数は遥かに多かった。
艦外に出たハンターや軍人達は大量の敵に驚きつつも対処すべく動き始めた。
前衛は剣や槍で武装したリアルブルーの軍人やクリムゾンウェストのハンター達。
後衛を担当するのは銃器を装備した軍人、弓や魔術といった攻撃手段を取るハンター達。
後衛と前衛は方陣を組んで背後からの攻撃に警戒する形で迎え撃つことになった。
対するヴォイドは艦内に出てきたような蠍の様なものや、ザリガニ様なもの、蜂のようなモノそれ以外にも多様な敵が居た。
軍人の大々 大は剣を装備して、攻めてくるヴォイドに対して斬撃で攻撃をしている。
柔らかいであろう部分を狙って斬撃を当てているといった具合だ。
着実に倒しているものの、敵の数が問題であった。
一方、月架 尊は甲殻の間を短剣で切り開いて、銃をその中に突き込み、乱射して攻撃をしていた。
効果的であるものの、多少、時間がかかってしまうこともあった。
ハンター達も奮戦する。
グランツは大剣や甲冑の頑丈な部位で攻撃を行っている。
突くというより、叩き切るという形での攻撃――敵が硬く弱点を狙っていても数が多いために苦戦している。
「貴方達と仰ぐ旗は違えど、歪虚の前には無意味。今は皆が戦友、往くぞ!」
鼓舞するように言ったのはクリステル ノースハイド。
敵の攻撃を盾で弾き、攻撃直後の体勢の崩れた所に一撃を叩き込む方法で攻撃していた。
弾き飛ばされた敵が敵にぶつかって行くということもあったが、おおむね 成功していた。
「ていていっ! 僕……じゃなくて俺の男らしさの礎になれー!」
ミュオ・ソーティスは大槍でもって突く形で攻撃を行っている。
リーチがある分、有利ではあるが懐に入られると弱い。
クラン・オルトリアも槍を振り回しつつまとめて串刺しにするように攻撃を繰り広げている。
多数とまでは行かないまでも2匹ほど串刺し、そのまま敵の群れへ投げつけたりしていた。
ジル・バルフォリアは孤立する危険はあるものの冷静さを忘れずに縦横無尽に剣で攻撃をしている。
時には、敵の間を縫う様に移動したりして同士討ちを誘発させたりと、フリーデもジルのように戦闘域を動きまわり敵を撹乱する作戦をとった。
敵の数が多く、陣を組んでいない雑多な集まりである小型ヴォイドには効果的だ。
ジルとフリーデによって攻めてくる敵を掻き回している形になっていた。
「この艦は転移してきた皆様に遺された『ホーム』だからね。なるべく傷つけないよう戦わないといけないよ?」
ユージーン・L・ローランドが魔法を放とうとする面々に苦笑しながら告げて、仰向けに倒れた蟹の口へレイピアを突き入れる。
「こんな所まで追って来て、しつこい連中だ」
月村 恭也が悪態をつきたくなるのも無理はない。
イカに似たヴォイドの触腕を切り落とすと、剣を突き入れ縦に切り裂く。
そんな中、サシン ソリッドはナイフを手に他の攻撃によって弱体化した敵の頸部や、急所と思われる位置を貫く様にして攻撃していた。
「どんなものでも関節を狙えばいいのよ? あとは目ね、目は鍛えられないから……」
くすくすと笑いながら高雅聖は、使い慣れた刀で敵の眼を突く。
サシンは個人戦を徹底的に避け、多対一での戦闘に持ち込むようにし、弱った敵を狙って攻撃することで確実に仕留めていっていた。
後衛も前衛が攻撃を始めるのをきっかけに攻勢をかけ始めた。
まだ勝手の判らぬ空間と いうこともあり、銃器を持ったリアルブルーの軍人が中心 となっていた。
アレックスは重機関銃では前衛や艦に 被害が出るのを考慮して、狙撃での援護をすることにした。
重機関銃の威力は強いが、狙撃銃は弾幕を張れない代わりに一発が強烈だ。
敵も小型で動きが速いため、 難易度も高い中での狙撃。
狙撃銃の弾丸は敵の甲殻を確実に抉っていき、時には急所にあたって一撃で仕留めることもあった。
ジェーン・タイラーは腰に一丁、コート内に二丁の予備を携帯したSMGを使って前衛が射線に入らないように気をつけながら弾幕を張って前衛を援護している。
SMGの貸与を希望した他の軍人にも貸出を行っていた。
「気にするな。武器を望む兵士に、それを与えるのが私の仕事だ」
こうして、前衛と後衛がある程度連携して戦闘をする事により、多かった敵も徐々に数を減らして行くことで、押され気味だった前衛も勢いに乗って敵を殲滅して行くこととなった。
敵が、知力に乏しく、雑多な形で攻めて来たのも幸いしている。
当初より、前衛によって切り伏せられる敵の数が増え、後衛の援護も相まって、あちらこちらに敵の屍の山が築き上げられていく事となった。
形勢が有利な状態を保ったまま、第二艦橋部にいた小型ヴォイドのほとんどが殲滅された。
●中型登場
一方、サルヴァトーレ・ロッソの甲板上では、外壁にまとわりついていた中型ヴォイドとの戦闘が始まろうとしていた。
20メートル 近くはあろうかと思われる中型ヴォイドとの戦闘には、多くのCAMも出払っていた。
しかし――宇宙用のスラスターを装備していたCAMは飛び上がる といった事もできず、甲板上を移動しての攻撃となっていた。
迫り来る中型ヴォイド、迎え撃つのは軍人の乗ったCAMと覚醒者と呼ばれるハンター達 。
CAMが本来の力を発揮できない という、やや不利な状況で戦闘は始まった。
「艦左舷、下方より接近する中型個体有。聞こえてますか、あなたの近くです!」
カメラでヴォイドの位置を確認したサーリャ・V・クリューコファの呼びかけにより、コーネリア・デュランは適度な距離感を取るため、その場からゆっくり後退する。
現状ではCAMでの攻撃がしづらい状況のため、まずは誘き出すための攻撃が始まった。
立花 天道は仲間よりやや後方に下がり、甲板が広く見渡せる位置から中型ヴォイドに対して狙撃を始めた。
致命的なダメージは与えられていないものの、ヴォイドは確実にダメージを受けているようだ。
それに釣られるように中型ヴォイドは立花の方へと向かって来ることとなった。
一方、神楽坂 凜も大口径狙撃銃で近づいてくる中型ヴォイドに攻撃を浴びせている。
二人の攻撃により、少なくとも上甲板の中型ヴォイドは甲板に向かっていく様になった。
一体の中型ヴォイドが、CAMの射程範囲へ誘い出されたことで、CAMの特性を生かした大火力による戦闘が始まる。
「無調整の機体だ、移動砲台ぐらいにしかならんぞ」_
CAMに搭乗した伊藤 毅は、甲板上を移動しながら機関銃による制圧射撃を行う事で向かって来る敵を牽制する形となった。
同じようにイヴァン・レオーノフもCAMのアサルトライフルで伊藤と連携して、集中砲火を行っていた。
CAMの弾丸が中型ヴォイドへ降り注ぎ、連続した銃撃音と共に排莢した空薬莢が落ちる音があたりに響く。
無論、CAMによる攻撃はアサルトライフルだけではない。
Kurt 月見里は狙撃銃で援護をしつつ、残存している小型ヴォイドが集団となった時にもミサイルを使って攻撃を行う。
ミサイルが吸い込まれるように敵へ向かっていき、大きな爆発を起こす。
上空ではミサイルによる爆発が花火のように戦場に華を添える。
戦闘は始まったばっかり ――一部を撃破出来たものの、まだ敵の数は多い。
甲板近くに取り付こうと現れた中型ヴォイドに対しCAMだけではなく、生身でも攻撃を行う者達がいた。
ヴァイスは覚醒して 大剣を使い、他との連携を取りながら中型ヴォイドに斬りかかる。
「参ったな、こんなのが相手とは。報酬は出るのかな?」
リンランディアは斬りかかるヴァイスと連携して弓で中型ヴォイドの目や節や急所と思しき場所を狙って攻撃をしている。
中型ヴォイドの気を引かせ、呼び寄せるのもリンランディアや同じギルドであるコーネリアの攻撃目的の一つだ。
ダヴィドはそんな二人や他の味方を守るように行動している。
「我が祖国と皇帝陛下の御名にかけて! 私は、お前を倒す!」
アリオス・スペイサーはサーベルで中型ヴォイドに攻撃を行う。
気合の入れた一撃が敵を傷つけていく。
「壊す事しか知らない、かぁ……ボクも似たようなモノだねぇ」
刀で近接戦を挑み、敵の注意を引きつけるように動きながら攻撃を回避し、次の動作に移るまでの隙に斬りつける。
ヒースはギリギリの際どい戦いを繰り広げていた。
「家族と今一度会うまでは、こんな所で死んでやるものか!」
軍人のスバル・キョウガヤは日本刀を振りかざして斬りかかり、敢えて自らが囮となるように動きまわることにした。
避けろというロバート・ガレオンの声が聞こえたと同時、スバルは身を低くする。
数瞬後、彼の頭上をロバートの放ったミサイルが通り抜けていき、ヴォイドに炸裂した。
ロバートは歩兵携行ミサイルで攻撃しつつ、自身も敵の注意を引き つけるためミサイルで攻撃しながら走り回っていた。
囮となったスバルやロバートに引きつけられる中型ヴォイド 。
気を引きつけられているせいでヴォイドの攻撃対象は囮役に絞られているし、ロバートらを死なせまいとする仲間たちからの集中的な攻撃を闇のように黒い巨体に受けている。
しかし、知能は低いが数は未だに多い小型ヴォイドにも、手を焼いているのは確か。
そこは紛う方無き――戦場だった。
開設された野戦病院には、負傷した軍人やハンター達が次々に運び込まれてくる。
ギャリー・ハッシュベルトは救護班を組分け。1チーム3〜4人に分かれ、治療に回っている。
トリアージを行い重傷者は艦内の診療施設へと運び込まれていく。
戦場で負傷者を探すクロード・オールドマン。
危険を侵して戦場に飛び込み、負傷者を見つけ出しては応急処置を行って周囲と連携して搬出し、自身は捜索にあたった。
クラウス・エンディミオンはクロードが見つけた負傷者の回収と護衛を担って野戦病院や艦内の診療施設への輸送も行っていた。
捜索と情報に基づき負傷者は迅速に回収され、適切な処置を受けることで重体化を防ぐことが出来た。
戦場において重要なものは情報に治療――そして、兵站。
エルドラド宇如原は何人かと周りの軍人やハンター達とチームになって弾薬の輸送や兵員の輸送にあたっていた。
また、途中、負傷者の回収も行っていた。
「一体どれほどの数が出てくるというの……? キリがないわ……!」
怪我人や、民間人の保護を続けていたアティエイルは、その端正な顔に焦りを見せる。
「アティ、そんな顔をしないで。私が、この身を盾にして必ずあなたを全てから守る。だからあなたは――」
私を信じて他の誰かを助け続けてほしい、と呟いて、エヴェリーナ・Cは跳びかかる昆虫型のヴォイドを武器で叩き落とす。
わらわらと近づいてくる敵に、エヴェリーナはきつく唇を噛みしめた。
小型ヴォイドが固まっている場所に、突如撃ち込まれる無数の銃弾。
「――お嬢さん達! 乗んな!」
アティエイルらに声を張り上げた安藤・レブナント・御治郎。
機動車に重火器を積み込み、CAMや生身に向かう小型ヴォイドを攻撃している。
「載り心地は保証できねえけど、我慢してくれよ? さて、足回りは任せろ! デカブツに派手なのかましてやれ!!」
集中的に浴びせられる大火力に、これ以上は耐える事が出来なかったのだろう。サルヴァトーレ・ロッソに取り付こうとしていた一匹の中型ヴォイドは倒された。
あと一匹。
「なんでだ!……何でだよ!」
戦っているのは兵士だけではない。
衛生兵も兼ねて甲板上を走り回るラッセル・バーバンクは斃れた味方を目に涙を溜めながら憤った。
安全だと思っていたこの艦にヴォイドが現れるなんて……そんな怒りと恐怖が一筋の涙となって零れた。
CAMと中型ヴォイドとの相対距離もほぼ無くなり白兵戦を行うCAMも現れる。
シンイチ・モリオカもそんな一人だ
「ロマン? いいえ、自ら艦を傷つける事は避けるべきと判断します」
ロマンも魅力的だが――それだけではままならないことは大いにある。
盾を構えて攻撃を阻み続けてきたが、接近戦になって盾で攻撃を受け止め、刀で触手を切り飛ばし、機関銃で零距離射撃を行うように動いていた。
ヴィーズリーベ・メーベルナッハは接近戦を行っているシンイチ達を巻き込まぬように後方から射撃で援護を行っていた。
長良旭もCAMが宇宙仕様ということを鑑みて、突出は出来ないと判断し、ヴィーズリーベと共に射撃を行い味方を援護している。
斬りつけられ、後方から銃撃される中型ヴォイド。
甲板付近の中型ヴォイドは上空から甲板上に降り立ち 、激戦を繰り広げていた。
固定砲台として銃撃を行うCAMや接近戦を援護する味方達。
それぞれの連携により甲板上 の敵は一掃されつつある。
意外と厄介な小型ヴォイドを排除することで、CAMは中型ヴォイドの攻撃へ専念できていた。
彼らが細かく積み重ねていった攻撃はヴォイドに効いている。中型ヴォイドの動きが、目に見えて鈍ってきたのだ。
「ちくしょう、CAMは!?」
如何せん、中型ヴォイドの装甲や戦闘力は想像を上回っていた 。
中型ヴォイドはもう少しで駆逐できるというのに、機能を十分に発揮できないCAMがもどかしい。
ロケットランチャー等の大型火器で動きを止めたり、気を引いた中型ヴォイドを攻撃するルイス・バーネット。
剣戟と銃火器やミサイルの爆発が甲板上で幾度も繰り広げられる。
「砲撃行くぞ! 巻き込まれるんじゃあないぞ!」
CAM以外では対崎・紋次郎がサルヴァトーレ・ロッソの使えそうな対空砲 で中型ヴォイドを攻撃していた。
体勢を崩し、船体から離れて海上へ落下していく中型ヴォイド。
その巨体は、落下中にボロボロと崩れていく。
それを見た仲間たちは、大きな歓声を上げたのだった。
一方――
甲板の下にも敵が居た。
それに気づいた若干名が敵の殲滅を行っていた。
気づいて居なければ――再び侵入を許していたのかもしれない。
腰部に資材搬入で使うクレーンのワイヤーを巻き付けたCAMに乗っているのは柊だ。
こうすることによって、海上に放り出される心配はなくなっていた。
壁をへこませぬよう加減して蹴りながら下降して、ライフルで艦へ取り付こうとする小型ヴォイドを攻撃していった。
柊は甲板に出現したヴォイドを倒すために奔走したお陰で、死角となっていた甲板下からやってくるヴォイドを発見し、倒すことが出来た。
表立って戦闘を行っている部隊だけではない。
支援する部隊も必死になって闘っていた。
情報、通信を担当する部隊は通信する人の声やせわしなく動く人等で騒然 としていた。
「人手不足だな。じゃ、始めるか……」
ぼやいていては対処が遅れてしまう。無線機を手に通信兵の手伝いを始めたのは神森 悠。
現状の情報のやり取りや指示など多岐にわたる内容を行う。
涼野 音々も同じように通信部隊の支援に入る。
一部の部隊が 担当して情報を1カ所で管理する中央コントロール型を取り、コンピュータで艦の情報と照らし合わせながら指示を出していた。
「此方、戦力が足りてないよ! 直ぐに回してくれないかな!?」
レベッカ・ヘルフリッヒはヴォイドとの戦闘の戦況等の情報を収集し、人員の指示を出していた。
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」との言葉があるように情報は極めて重要だ。
支援をすることによってヴォイド撃退の一翼を担っていたいとも過言ではなかった。
こうして、皆が一丸 となってヴォイドにあたった結果。
当初、苦戦しつつも何とかヴォイドを殲滅することが出来た。
被害が無かったわけではない――負傷者やCAMの破損も出た。
だが、辛うじて 今回は敵を殲滅することが出来た。
執筆:後醍醐/監修:藤城とーま/文責:フロンティアワークス