• 無し

【奇石】押し寄せる影

マスター:奈華里

このシナリオは3日間納期が延長されています。

シナリオ形態
シリーズ(新規)
難易度
普通
参加費
1,300
参加人数
現在5人 / 3~6人
ユニット参加人数
現在5 / 0~6
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2018/09/25 09:00
リプレイ完成予定
2018/10/07 09:00

オープニング

●序
「あ、ママっ! うーたんが…うーたんがぁー!」
 少女の視線の先には彼女より一回り小さい位のぬいぐるみ。
 しかし、手を引く母はそれを落とした事に気が付かない。
「にーちゃっ、うーたんが、うーたんがー!」
 彼女の隣りでは父に手を引かれる兄の姿があって、しかし彼も父に手を引かれているから声が聞こえていても戻る事叶わない。けれど、兄の方は妹の言葉に気付いたらしい。
「父さんっ、エルが呼んでるっ!」
 少年がそう呼びかけるも、残念ながら父には届かず。
 なぜなら、彼等の背後には複数の雑魔や歪虚の影があったから…。
 どういう訳かは判らないが、突如として押し寄せてきたそれらに彼らは驚き、慌てて屋敷を飛び出してきたのがついさっきの事だ。今はとにかくハンターオフィスのある街に向かう為、無我夢中で走る。
「うぅ、にーちゃぁあん!」
 唯一気付いてくれた兄を呼ぶ妹の声がする。
 けれど、今引き返す事は出来なかった。

 それからどれくらいは走っただろう。まだ街までは距離があるのだが、家族は野宿を敢行する。
 敵の出現からずっと走りっぱなしだったのだ。徹夜して歩く事も考えはしたが、暗い視界の中で襲われては元も子もない。穴になった岩肌に身を寄せて、小さな焚き火を囲んで夜を明かす。だが、突然起こった衝撃過ぎる出来事を前にそう簡単に眠れるはずもない。
「にーちゃ、おきてる?」
 妹のエルがローブに包まれながら問う。
「うん、起きてるけど…」
 兄の方は妹より四つも上だ。妹の問いにパチリと目を開けて言葉する。
 その瞳に映ったのは目を真っ赤にした妹の姿だった。住まいである屋敷を出た直後から泣きっぱなしだったらしい。まだ泣き足らないみたいだが、とうに涙を出し尽してしまった様子で今は表情だけでこちらに悲しさを訴えてくる。
「うーたん、だいじょうぶかな?」
 妹の手から滑り落ち道に置き去りにしてしまったピンクのうさぎのぬいぐるみ。
 それは少し前に家族で行ったカーニバルのゲームで兄のフキが的当てをして手に入れたものだ。そのうさぎをエルがいたく気に入り、四六時中連れ回す程に可愛がっている。
「…さあ。多分大丈夫だと思うけど」
「けど…なにぃ?」
 万が一という事もある。ただのぬいぐるみだが、野生の動物は知らずに噛みつくかもしれない。
 もしくは雑魔の類いが荒らさないとも限らない。正直に答えられなくて、兄はそのまま口ごもる。
 それがまたエルの不安を後押ししてしまったらしい。くしゃっと顔を歪めて、ばっと立ち上がる。その拍子に掛けられていたローブが落ちたが、疲労で深い眠りに落ちてしまった両親は気付かない。
「お、おい。エル、まさか…」
「もういい。にーちゃんがいってくれないならエルがいくっ」
 ぷぅと頬を膨らませて、エルがパタパタ走り出す。
 が、駆け出したと同時に真っ暗な森がざわついてびくりと肩を揺らし固まる彼女。
 ゆっくりと振り返って見えた顔にフキはどうしても手を差し伸べずにはいられない。
「にーちゃっ…」
 エルが言う。その言葉に立ち上がって、小さくなりかけていた焚き火に予備の松明を翳し火をつける。
「もう、うーたん連れ戻すだけだからな。見つけて、拾ったらすぐ戻るよ?」
 フキが彼女の手を握り約束する。
「うん、わかった」
 エルがその言葉に破顔した。しかし、兄妹はそれがどれ程危険な事は判っていなかった。

●兄妹の行方
「…エル、フキ……」
 そんな事があったとは露知らず、小鳥の声に目を覚ました両親が顔を青くする。
「ねえ、あなた。まさか二人は…」
 母親に最悪の事態が頭を過り、ぶるぶると震え始める。
「いや、大丈夫だ。あの子達は賢い…それに襲われたのなら、もっと荒らされているはずだ」
 そう言いはするものの父親とて気が気ではない。だが、フキは確かに優秀だった。
「うそ…ねえ、あなた。これって」
 焚き火の隅に何かの切れ端があって、そこには『すぐ戻る』とフキの文字で書き残されている。
「一体どういう事だ…戻るって、まさか!」
 そこで両親はハッとした。走っていた時は気付かなかったが、野宿を始めた時からずっとエルはぐずっていた。理由は勿論うーたんであり、簡単な食事を取った時もぶつぶつ呟いていた位だ。
「まさかこんなことになるなんて…」
 たった一体のぬいぐるみの為に、二人はあの危険な家の方に戻ったというのだろうか。
 雑魔や歪虚の事についてはちゃんと教えてきたつもりだが、何分へんぴなところに住まう為、子供達が実物を見たのは今回が初めてだった。だから子供の中では歪虚の力を野犬や猪の類いと同等くらいにしか認識していなかったのかもしれない。
「わ、私のせいだわ…もっとしっかり教えていればっ」
 そう悔いてももう遅い。今は悔いるより先にしなければならない事がある筈だ。幸い、雑魔や歪虚は家に注視していた。だが、人間を見つけたら襲わないとも限らない。それにだ。二人の記憶が確かならば、屋敷の傍にあるつり橋で落としていたように思う。そうなると、通り慣れていたとしても普通に転落する可能性も出てくる。
「いやっ、何てことなの…」
 この事態に耐えられなくなって、母親が眩暈を起こす。
「ああっ、しっかりしてくれ。私は子供達を追う。君にはオフィスに行って捜索願を」
 妻を落ち着かせようと、父親も不安を押し殺し冷静に言葉する。
「うっうう…そうね、わかった…わ。あなたも気を、付けて」
 妻はその言葉に奮起して、足早に街へと向かう。
(あぁ、ご先祖様。どうか皆無事で返して下さいませ)
 夫とてただの研究者であり、覚醒者ではない。ざわつく心を必死に抑える。
 唯一夫は先祖代々伝わるお守りを持っているものの、それは気休め程度のものなのだった。

解説

内容
ぬいぐるみを取りに戻ったと思われる兄妹の捜索

雑魔から逃げる為、必死で飛び出してきた家族でしたが
その際に妹が大事にしていたぬいぐるみを落としてしまい、
それを拾いに子供達は戻ってしまいました
家の方にはどういう訳か雑魔や歪虚の類いが集まってきているようです
そんな敵に出くわしたら子供達は殺されてしまうかもしれません
先に捜索に出た父親と合流して一刻も早く二人を見つけ出し、安全な場所に連れ戻しましょう

●家までの経路について
オフィスから彼等の住んでいた屋敷までは大凡徒歩で二日かかります
尚、屋敷自体はとても特殊な場所にありまして
つり橋を二つ越えた先にあり、そのつり橋を通らない限り屋敷に行く事は出来ません
つり橋の下は川になっており、海が近い事から川幅も広く落ちたら一たまりもないでしょう
なお、ぬいぐるみはその橋と橋と中間地点辺りで落としたのではと推測されています
屋敷自体はこの家族の先祖から引き継いだものであり、
屋敷の隣りには屋敷を一部覆う様な大樹があります

●人物紹介
エル(3)
兄のとったうさぎのぬいぐるみがお気に入りの少女
へんぴな所に住んでいる為か兄が友達であり、とても信頼している

フキ(7)
エルのお兄ちゃんで、妹に泣きつかれるとついつい甘くなってしまう
常識的な分別はつくもののまだまだ子供 七歳にしては割と賢い

*緊急事態という事もあり、ユニットの使用は可としておりますが
 使用場所を間違うと大変な事になりますのでくれぐれもご注意下さい

マスターより

久し振りにシリーズ物の展開を 奈華里です
五話完結を予定しておりますが、行動次第で前後するかと

そして、記念すべき第一話は兄妹の捜索であります
とにかく無事を願って…うーたんもちゃんと一緒に連れ戻せたなら大成功
そこまで難しい依頼ではないので、シリーズだからと気をせず一見参加も大歓迎
少し行動判定はいつもより厳しめにつけるつもりですが、ご参加お待ちしております(^-^)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2018/10/07 02:07

参加者一覧

  • 龍奏の蒼姫
    ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239
    エルフ|15才|女性|闘狩人
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 魔導アーマー共同開発者
    レオーネ・インヴェトーレ(ka1441
    人間(紅)|15才|男性|機導師
  • うら若き総帥の比翼
    ひりょ・ムーンリーフ(ka3744
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
  • 不器用な優しさ
    和音・歩匡(ka6459
    人間(紅)|26才|男性|聖導士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/09/24 15:18:50
アイコン 相談卓
和音・歩匡(ka6459
人間(クリムゾンウェスト)|26才|男性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2018/09/25 06:05:16