辺境から飛び立ったサルヴァトーレ・ロッソが不時着した痕跡は大きく大地をえぐり、遥か彼方まで続いている。
　制御された重力を纏った艦でなければ、この村一つを木っ端微塵に吹き飛ばしていただろう。
「これで羊は全部ですか？」
「ああ。助かるよ、ハンターさん」
　馬車に積み込まれていく羊を見送り、篠原神薙は農夫に手を降った。
　墜落したサルヴァトーレ・ロッソ周辺には既に多数の連合軍が集結しつつある。
　帝国各地で起きた同時襲撃事件に戦力を割かれてはいるものの、次の敵の狙いがサルヴァトーレ・ロッソであろうことは明確で、その準備を怠るわけにはいかない。
　何よりもロッソは巨大なマテリアル機関を内蔵した船だ。その輝きに帝国内の雑魔が活性化されたのか、引き寄せられるように集まるケースが確認されていた。
「聖機節だってのに、祝うヒマもねぇや……」
「くそ、なんでこんなことに……刈り入れもできないんじゃ蓄えがなくなっちまうよ
　村人がそう言いながら馬車で走り出す。連合軍が墜落地点周辺の村々に派遣した救助部隊により避難誘導は進められているが、彼らが戻るべきこの村が戦争の後に残っているとは限らない。
「それにしても……帝国北部は結構寒いんだな……」
　天気が崩れていれば雪でも降りそうだ。上着の上から身体を抱き、神薙は白く濁った息を空に吐き出す。
「いや、この悪寒はなにか、寒さとは関係のないもののような気もする……」
　住民の避難を終えた神薙が踵を返す。この後は周囲を哨戒し、その後ロッソに戻って報告する予定だ。
　神薙は自分と同じように空を見上げていたハンターを見つけ、声をかける。
「この村、ロッソに吹き飛ばされなくてよかったね。いや……良くはないんだけど」
　戦場となるであろう場所の近くになってしまったせいで、住民は避難。人的被害は奇跡的にゼロだったが、ロッソが農場の端っこを吹き飛ばしてしまった。
　ここに来る前に立ち寄ったロッソでは、多数の死傷者の治療が今でも行われていた。目の前で人が死んでいく、それが戦場のリアルだった。
「俺は元々ただの学生だから、治療技術とかもなくて……ロッソにいても邪魔になるだけだから。あそこから逃げたくてここに来たのかも。あ、いや……君がそうだとは思ってないよ。哨戒任務とか、住民の避難だって重要なハンターの仕事だからさ」
　国境沿い、そして帝都では多くの人が死んでいる。その変えられない現実を前に悔しさを噛みしめる。
「ヴィルヘルミナさんが乱心したって噂も聞いたんだ。あの人の事は転移した直後から知ってるけど、そんな事をする人には思えなかった。何が起きてるのかな……」
　ヴィルヘルミナとは決して仲が良かったわけではない。時には対立した事もあった。
　だが、彼女はいつもひたむきで、少なくとも神薙を一人前のハンターとして扱ってくれていた。人類救済に燃える、情熱的な人だった。
　間違っても、人類に刃を向けるような人物ではなかったはずだ。何故かそれを思うと、妙な話なのだが悔しくて、腹立たしかった。
　俯く神薙にハンターが声をかけようとした時だ。闇の気配を感じ同時に視線を向けると、農場の端に歪虚の姿が見えた。
　鎧を着込んだゾンビ。いわゆる剣機型と呼ばれる個体だ。
「ゾンビ……やっぱりこんな所にも。でもあれは雑魔じゃない……歪虚の手が加わっている改造型、剣機ってやつか……？」
　ハンターの呼びかけに応じ、神薙も剣を抜く。
「ここにはもう人はいないけど、放置するわけにはいかないね。俺達で片付けよう」
　現場に残っていた数名のハンターが集まり得物に手を伸ばす。
　ゾンビ達は生物の気配に瞳を輝かせ、ゆっくりと進軍を開始した。

●目標
剣機ゾンビの撃破。


●概要
サルヴァトーレ・ロッソ不時着地点付近を哨戒する。
現在、歪虚の帝国領侵攻とサルヴァトーレ・ロッソ不時着に伴い、ハンターらの協力を要請している。
といっても各地では歪虚の同時多発攻撃が発生しており、人員は不足した状況にある。
諸君らにはサルヴァトーレ・ロッソに急行後、現場の指示を受け、それぞれの任務についてもらいたい。
ロッソは現在行動不能状態にあり、歪虚の接近を許すわけにはいかない。
また、周辺にはまだ避難していない帝国民の村や町がある。可能ならば彼らの避難にも手を貸してもらいたい。
そして敵と遭遇した場合は可能な限りこれを撃破し、手に負えない場合はすぐに報告に戻ること。


●敵戦力
「エルトヌス型」
鎧を着込んだ人型のゾンビ。
槍で武装した個体が２体。火炎放射器を装備した個体が１体。剣と盾を装備した個体が２体。
動きは鈍く頭は悪いが、とても頑丈。余談だが、大規模第二フェーズのあちこちにいる。

「プラッツェン型」
大型の狼のようなゾンビ。サイズ２。
鎧を着込んでいるので頑丈だし、見た目以上に素早い。
爪と牙で攻撃する他、背中に大砲を搭載している。


●友軍戦力
「篠原神薙」
機導師の少年。片手剣使い。近接よりの支援型。
スキルは機導剣、防御障壁、機導砲。

お世話になっております。神宮寺です。

久々の神薙です。
敵を倒すだけのシンプルな戦闘依頼です。初心者さんでも無理なくクリアできると思います。
概要に書いてあるのはこの戦闘が始まるまでの経緯なので、読まなくても大丈夫です。
強い敵が急に現れるとかそういうことはありません。心配しないでください。
神薙が感じている悪寒は、そういうフラグじゃなくて、ショップでやってるイベントのアレです。
関連NPCがいるので、神薙が質問等にはお応えできます。雑談でもいいよ！
そんなにガチガチにおかたいシナリオではないので、ラフに楽しんでください。
何度も言いますが、何も起こりません。

それではよろしくお願い致します。