※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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幕間~閲覧室から食堂につくまで~
休憩したい思っていたアラベラは、Uiscaが訪ねてきたのをきっかけに、閲覧室で広げた資料を片付けはじめる。
「何を調べていたのですか?」
Uiscaが問いかける。
アラベラが広げていた資料はどれも古そうなものばかりだ。分厚い皮の装丁に、紙は手垢で黄色くなっている。本そのものが大きく、抱えるのも大変だ。
「デミアン……エミルが殺した人たちの墓の所在を調べていたのですよ」
それは、エミルが消滅間際にアラベラに託したこと。もう時間のない自分の代わりに、墓参りをしておいてくれ、というものだった。
正直、これは難航していた。200年近く前の事件なのだ。それに時代は戦乱期。大勢死んだ時代である。記録が残されていたとしても、抜けている部分もあり、あてにならない。
エミルの殺したのは平民あるいは身分の低いものばかりだったのだ。馬車に乗った人間や従者とともにいるような高貴な人間を襲うようなことを彼はしなかった。あくまでもひとりで出歩いているものを殺していた。これはエミルが打算的だったわけではなく、彼の殺人が衝動的なことに由来する。
貴族出身だったら、先祖代々の墓所があるのだろうが、平民はそうはいかない。身分が低いが故に、彼らは共同墓所に葬られたりした。誰も彼も一緒くたである。
「……手伝いますよ」
Uiscaは分厚く大きい資料の数冊を、アラベラの代わりに抱えた。
「ありがとうございます」
2人は揃って、司書のいるカウンターに資料を返却してから、閲覧室を出た。
「しかし、こう本とばかり向き合っていると体が凝りますね……」
アラベラは浮かない表情だ。疲れた、というより調査の進展のないことがきついのだろう。
Uiscaはその手首に、誕生日に送ったミサンガがはめられていることに気がついた。
「願い事は叶います」
アラベラはミサンガを気に入っていた。そして、ミサンガがどういったものかも覚えている。
「願い事が叶ったら、これは切れてしまうのでしょう? それは惜しいですね……」
「その時は、またつくりますよ」
Uiscaの紫の瞳には、願い事が叶うという確信があるように見えた。
「だから、進んでください。きっと、大丈夫ですから」
それが星のようにUiscaの瞳の中で煌めいている。
未来を見据え、危機を見つめながらも、最善を目指す尊い確信であった。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka0754 / Uisca Amhran / 女性 / 16 / 聖導士】
【kz0250 / アラベラ・クララ / 女性 / 22 / 英霊】
【ゲストNPC / エミル・ズィック / 男性 / 32 】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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最悪はすべての人に等しく降りかかるが
最善は、足掻いた者にしか与えられない