※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
柵の外

●気紛れなスタート地点

「きょーうーはーどーこーに~、しーよーうーかーな~?」
 まよいの好奇心は尽きることがない。
 ハンター活動がない自由な日は何も決めずに出かけるのにぴったりで、買い食いできる程度のお金を持って気儘に繰り出すことにする。
 知らない何かが見つかるための備えなんて必要ないのだ。常に全身全霊であたるのがまよい流!
 なんてことはなく、ただの気紛れである。

「それじゃあ、今日はこの道にしようかな?」
 あみだ籤をなぞるように、曲がり角の度に楽し気に先を選ぶ。今日のルールは単純で、見覚えが無いと思ったらその道を選ぶというもの。
 帰り道の事も考えない、その時になってからでも遅くないのだ。
「決~めた、次はこっちだね」
 裏路地へと、ぴょんっ!

●囲い

「わあ、お兄さん達何か用?」
 ニヤニヤと笑みを浮かべる破落戸に囲まれるのは予定調和みたいなものだった。
 仕立ての良い服を着た少女が無邪気に歩くようなところではないのである。特に今のまよいは武装らしきものは身に着けていないから、世間知らずのお嬢さんととられても……間違いでは、ない。
「そっかぁ……遊んでくれるんだね♪」
 にっこりと微笑めば、都合のいい獲物だと考えたのか、幼い笑顔に鼻を伸ばしたのか。男の一人が無防備に手を伸ばしてきていた。
 するり。
「鬼ごっこ? 捕まったら、どうなるの?」
 自然に身をかわして、けれどすぐに目の前に戻る。くすくす笑いながら見上げれば、照れたような返事。かつての保護者が喜ぶ仕草は、この世界でも誰かを喜ばせることができるらしい。
「ふぅーん。……じゃあ、捕まったら鬼の言う事を聞く、ってことにしようよ♪」
 甘いあまい蜜のように、とろりと流れるまよいの言葉。
 無知な子供だと、判断した男達全員は首を縦に振った。

「お兄さん達……忘れちゃだーめ、だよ?」
 まよいの楽し気な笑い声が響いて。
 ふわり、風もないのにまよいの髪が宙を舞う。
 同時に閃いたスカートに気をとられた男達は、まよいの青の瞳の輝きが強くなったことに気付かない。
 気付くべきだったのだ、もっと、ずっと前に。

 呪文を紡ぐ小さな声に?
 ……もうすぐ唱えおわる終わりの魔法は、止めることができない。

 解放されたマテリアルに?
 ……その時点で、まよいは逃がすつもりなんてなかった。

 毒を包んだ蜜の言葉に?
 ……破落戸達の目には獲物しか見えてなかった。

 指に光る、フォースリングに?
 ……小さな銀の指輪は、まよいを金持ちの子女に見せていた。

 無邪気な、幼い様子に?
 ……それこそまよいの本質で、疑う余地はどこにも、誰にもないのだ。

●渦中

「全てを無に帰せ…ブラックホールカノン!」
 男達が地へと倒れ込んでいく。まよいがただの少女だと。簡単な獲物だと向かって来ようとしたその油断が隙となって地へと叩きつけられたのだ。
 けれど。
「あれぇ? お兄さんはどうして、倒れないのかな?」
 1人だけ、立ち尽くした男へと近づいていくまよい。
 心底不思議だという声で、無防備に。
 倒れた男達の呻き声を背景に、散歩と同じ気軽さで。
 未だ起き上がれない彼等を無造作に踏みつけながら。
 遊んでもらっている少女の笑顔、そのままに。
 状況に頭が追い付いていないその男は、ただ口をはくはくと、呼吸しようと動かすばかり。
 格好の獲物だと追い詰めた筈の男達は、迷宮へと誘い込まれたのだ。
 甘い香りのする、先の見えない暗い夢路。

「つーかまーえた♪」
 笑いながら男の手に触れるまよい。
「他のお兄さん達ももう、逃げられないでしょう? これで私の言う事、みんな聞いてくれるよね?」
 未だに動くことができない彼等に、頷く以外、出来ることはあっただろうか。
「大丈夫だよ、すぐにおしまいになるからね!」
 誰の相槌を求めるわけでもなく、まよいが手を叩いてくるりと回る。
「私、知ってるよ。お兄さん達は、悪い人なんだよね!」
 笑顔で尋ねているようで、確信を持った声。この場の誰も、まよいを止めることはできない。
 口を挟むなんてことさえも、出来るはずがなかった。
「だからね、もう、お休みしていいよ」
 男達は誰も、言葉の示す真実を理解することができなかった。
「果てなき夢路に迷え…ドリームメイズ!」

●出口はひとりで

「だって二度と目が覚めなければ、悪いことなんてもうしなくなるんでしょ?」
 全員の瞼を閉じさせて、ぐっと伸びるように立ち上がる。
「おやすみなさい、お兄さん達」
 静かになった路地裏に背を向けて、まよいは明るい街道へと戻っていく。
「ふふっ♪ 次は、おうちにおよばれしようかな」
 だって、悪い人たちのおうち……アジトまで、案内してくれるんでしょう?

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka1328/夢路 まよい/女/15歳/魔壊術師/解き放たれた狂気】
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発注者:キャラクター情報
アイコンイメージ
夢路 まよい(ka1328)
副発注者(最大10名)
クリエイター:石田まきば
商品:おまかせノベル

納品日:2018/11/05 11:06