※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
東へ~それでも私は~

 これでいい。
 これであの男は逃亡する。
 あの要塞で殺してやっても良かったが、それでは乾いた心は満たされない。

 追い詰めて、追い詰めて。
 そして、すべてを奪って惨めに――殺す。

 その瞬間を想像するだけで、胸が滾る。
 あの高慢な顔がどのように歪むのか。
 早く見たい。すぐに見たい。

 だが、今はその欲望を抑え込む。
 もっと、もっとあの男を追い込まなければ……。


「わっはっは! それは難儀でござったな」
「あの……笑い事では……ありません」
 水野 武徳(kz0196)の高笑いに桜憐りるか(ka3748)は苦言を呈した。
 突如生まれたヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)の殺人疑惑。
 デッドウェスト・ジェイルの囚人が殺され、その現場でヴェルナーが目撃される。ヴェルナーにとってはまったく身に覚えはないのだが、審問部隊『ベヨネッテ・シュナイダー(銃剣の仕立て屋)』のメイ・リー・スーはヴェルナー捕縛の為に動き始めていた。
 偶然出会い事情を知ったりるかは、ヴェルナーを匿いながら安全な場所へと逃れる。
 それがりるかの故郷である東方だったのだ。
「いや、すまんすまん。このような事を想像してもいなかったからのう」
 東方ではりるかの故郷へ向かう予定だったのだが、既にメイが手を回したのか帝国の兵士が到着していた。おそらくヴェルナーと関わりの深い者としてりるかの名が上がり、りるかが向かいそうな場所へ手を回していたのだろう。
 そこでヴェルナーは東方のツテとして武徳の元を訪ねた。
 正直、ヴェルナーはここだけは来たくなかったようだが。
「他人事と思って楽しそうですね。こちらは大変なんですが」
「そうじゃろうなぁ。まあ、帝国の者がきたら適当に追い払っておくわ」
「武徳さん……どうして、ヴェルナーさんを、信じたのですか?」
 りるかは気になっていた事を武徳へ投げかけた。
 ヴェルナーはりるかを知っているからこそ、殺人など犯さないと信じられる。
 だが、武徳もヴェルナーを知っているとはいえ、そこまで簡単に信じるものなのだろうか。
「うむ。単純な話よ。ヴェルナー殿が人を殺めるならば、そのような直接的な手は使わぬ。策を労し、準備を整えてから行うはずじゃ。話を聞くだけで嵌められたと気付いたわ」
 武徳も詩天の軍師を務める人物。
 物事の先を読み、臆病なまでに慎重に慎重を重ねる。ヴェルナーの性格を知っていればそのような無謀な方法を用いないと知っているのだ。
「ふふ、褒められたと受け取っておきますよ」
「それよりおぬし、何故殺人の濡れ衣をかけられるのだ?」
「ヴェルナーさん、あの手紙を……見ていただいた方が」
 りるかの言う手紙。
 それはヴェルナー宛に送付された物だ。その手紙には『裁きは下される。罪はめぐり巡って在るべき場所へ』と記されている。
「りるかさんはこの手紙をどう考えますか?」
 ヴェルナーからの問い。
 りるかは少し間を置いてからゆっくりと話し始める。
「はい。とても……恨みが、込められています。ヴェルナーさんに向けられた負の感情が伝わってきます」
「殺人を犯すだけではなく、ヴェルナー殿に化けてわざと目撃させる。恨みがあるならヴェルナー殿を殺せば良いが、それをせぬ。余程ヴェルナー殿に恨みを抱く者の仕業じゃな」
 りるかの言葉を補足するように武徳が考えを述べた。
 そう、この事件は無駄が多いのだ。
 恨みを晴らすならばヴェルナーを殺せばいい。だが、危険を冒して要塞の内部で囚人を殺害。ヴェルナーに化けて嫌疑をかけさせている。
 その理由を考えればヴェルナーへの強い恨みがあるとしか思えない。
 殺すだけでは飽き足らない。
 追い詰めてヴェルナーを殺す覚悟。
 それを支える怨嗟。
「やはり皆さんも同じ答えになりましたね」
「ヴェルナーさん、何か心当たりが?」
「ふふ、どうでしょう。私にその気はないのですが、方々で恨まれる事が多いようでして」
 このような時にもヴェルナーは笑顔を崩さない。
 余裕の表れなのか、それとも楽天家なのか。
 だが、事件の犯人に関する鍵は既に掴んでいるようだ。
「在るべき場所……つまり、犯人にとって忘れられない場所です。
 強い恨みが生じる程の事件があった場所……デラクルス洞穴でしょうか」
「!」
 ヴェルナーが口にした地名。
 りるかは聞き覚えの無い場所であるが、そこに事件の鍵がある。
 もし、推理通りならきっと犯人はそこで待っている。
 だが、ヴェルナーは過去に何をしたのか。
 それはまだりるかの口から問いかける事ができなかった。
「りるかさん、聞きたそうですね。何があったのかを」
「え……」
「お話しますよ。ここまでお付き合いいただいたのですから」
 りるかの心を見透かしたかのようなヴェルナーは、いつもの笑顔を向けてくれた。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka3748/桜憐りるか/女性/17歳/魔術師】
【kz0032/ヴェルナー・ブロスフェルト/男性/25歳/疾影士】
【kz0196/水野 武徳/男性/52歳/舞刀士】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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近藤豊でございます。
この度はおまかせノベルの発注をありがとうございます。
再びのおまかせノベル発注に感謝でございます。前回の続きとなる「容疑者ヴェルナー・ブロスフェルト」シリーズ(今名前を決めました)二作目となります。
少しずつ見えてきた犯人の姿。その裏に潜む感情を前に、ヴェルナーとりるかさんはどう立ち向かうのか。書いてる私もちょっとドキドキです。
またの機会がございましたら、宜しくお願い致します。
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発注者:キャラクター情報
アイコンイメージ
桜憐りるか(ka3748)
副発注者(最大10名)
クリエイター:近藤豊
商品:おまかせノベル

納品日:2018/10/29 17:59