※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
胸に灯る光

 あの瞬間、確かに死を間近に感じた。ただ単に恐怖を感じる間もなかっただけかもしれない。もし自分が崩れてしまえば大切な仲間たちの身まで危険に晒す結果を生む、そんな自らの生き死にを蔑ろにした考えが封印術を維持出来るだけの集中を残した頭の片隅にぼんやり浮かんでいたように思う。はたからはそう見えないだろうけれど、自分と彼は似た者同士だから。あのとき彼がどんな顔をしていたかは判らない。それでも逆の立場だったら自分が浮かべるだろう表情と同じだったのではないか、そんな風に思うのだ。

 体調が悪く自分の身体なのに思うように動かない。それは歯痒いことで、自らに出来うる限りのことをし尽くしたつもりでも結果が伴わなかったときの絶望感ともよく似ている。未熟で頼りなくてもいつかは強くなれるのだと半ば言い聞かせるように信じ、駆け抜けて。そして信頼してやまない仲間たちと共に挑んだ戦いは遂に結実を迎えた。だから今より拙く物知らずで、それ故の無謀さもあった幼少のみぎりより平気なのかもしれないと思う。しかし何よりも、唯一無二の人がいることがきっと大きかった。
 静寂に満ちた部屋、のぼせたようにぼんやりする意識。ふわふわした感覚の中で手をついて、金鹿(ka5959)はゆっくりと起き上がった。屋敷と比べればこじんまりとしていて、まだ我が家と呼ぶには面映ゆさがある。ただ碌に食事も摂らず寝る目的で帰っていたと言うだけに、少し疲れて横になったらすぐ寝てしまうほど上等なベッドで、こういう言い方は誤解を招く気がするが、彼の匂いに安堵するというのも眠りに誘われる大きな要因だ。ナイトテーブルには寝入っていたせいで若干変色してしまったうさぎさんリンゴが一切れ分と水が一杯。金鹿は喉を潤し、リンゴに爪楊枝を刺して口に運んだ。サクサクと気持ちのいい歯応えがする。味もうっすら感じられた。
 目を閉じれば出ていくのを躊躇する彼の顔と、金鹿の送り出す言葉に心配の色を残しながらも頷いた姿が思い浮かんだ。それと、慈しむようにおでこから前頭部にかけてを撫でる手のひら。子供をあやすような素振りでいて、それは恋人――伴侶に向けたものに違いなかった。惜しみなく注がれる愛を同じ分だけ。渡して、両親とはまた少し違う関係を築きあげていくのだろう。
「そのためにも、一刻も早く治しませんと」
 呟き大人しく横になる。願いは朦朧とする頭の中に溶けていった。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
子供の頃の熱云々は入れるべきか凄い悩んだんですが、
呟きでの立場が逆転しているやり取りがとても好きで、
金鹿さんが彼に看病されている感が出したいなという
欲望には抗いきれませんでした……負傷をノベル的に
どう落とし込むか、というのは結構迷うところですね。
それと同棲しているっぽい感じにしてしまいましたが、
このおまけノベルでの時期は微妙ですが、少なくとも
このすぐ後にはプロポーズをされる(し合う?)なら
そういう話が出ていてもおかしくないのかな、という
これまたおまかせのお言葉に甘えて自分の脳内想像を
ぐっと一杯盛り込んだ形になります。
盛大にやらかしていたらすみません!
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発注者:キャラクター情報
アイコンイメージ
鬼塚 小毬(ka5959)
副発注者(最大10名)
クリエイター:りや
商品:おまけノベル

納品日:2019/09/02 11:18