※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
未来も晴れるから

 鬼塚 小毬(ka5959)が帰宅し時計を見ると、夫を出迎えるのにまだ時間の余裕がありそうだった。なので買ってきた食材を魔導冷蔵庫の中に仕舞い、袖をたくしあげ軽く気合を入れると掃除をし始める。結婚してそれなりに経つが、最近は随分と手間が省けるようになりテキパキと進めていく。初めて訪ねたときも汚部屋ではなかった。むしろハンター業以外に無関心で私物が少なかったくらいだ。それが段々と二人の思い出の品が増えていき、小毬の持ち物も当たり前のように置かれるようになって、食卓を囲む為の食器類も買い揃えた。だから、お揃いに出来たと思うと複雑だが。手間がかからなくなったのは小毬が慣れたのと彼のこなす仕事量が減ってきたのが理由だ。中身を見るわけにもいかないので順番が合っているかは気にしないでデスクの上に積まれた書類を揃え、窓の方向に合わせて重しを乗せる。その紙束は薄く、風で飛ばずに済みそうだ。――旅立つ日が近付いてきた証拠。
「……今からでも布団を干してしまおうかしら」
 それでも、つい所帯染みた言葉が口をついた。本当は訓練場に行く前に干しておきたかったのだが、あのときはまだ雨が降っていた。今は出掛ける前が嘘のように晴れあがっていて、しかし時間を考えると悩ましいところだ。こうなると、決まって故郷の母を思い出す。妻の先輩としても尊敬の念が生まれて、それが日ごと大きくなっている。いつかは自分も母になる日がやってくるのかもしれない。
(ああなりたいものですわね)
 二人でだって、時々詮のない嫉妬を抱くくらい彼が愛おしくて、毎日幸せを噛み締めているけれど。家族が増えたなら、想像出来ない程の幸せが自分たちを包んでくれるに違いない。ふわり口元が緩んだのも束の間、それに至るまでの流れを考えると火がついたように顔が紅潮しだした。誤魔化そうと手で扇ぐも耳まで赤くなったのが自分でも分かる。真剣な瞳を向け手が優しく頬を撫でる。その記憶を今は、頭を振って追い払った。髪が顔を叩いて痛い。デスクから離れて無心に掃除しだした。
「何故かどっと疲れましたわ……」
 肩を落とすも満足のいく出来で、いい頃合いなので料理を作る。母に教わったレシピを元にし、自分たち好みにとアレンジを加えた。これが鬼塚家の味になっていつか、受け継がれるのかもしれない。
「そのときが楽しみですわね」
 小さく呟いて、鼻歌を歌う。未来でも響くようにと願いながら。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
実家は実家でもちろん暖かくていいものなのだと思いますが、
大事にされていて多分将来的にも困らないだろうところから
一人未知の世界に飛び込んだ、その第一歩があったからこそ
今の小毬さんがいると思うと、結局は運命よりも必然だった、
そんなふうに感じたりもしますね。
FNBが幕引きを迎えたことで、寂しいですがその人の将来が
見えてきて、より人生というか生身の人間にも等しい深みが
生まれたともいえるのではと……。
自分が小毬さんと関われたのはその人生のほんの一部ですが
このとき一体何を思い何を言うだろうと考えているうちにも
少しは近付けたような気がします。
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発注者:キャラクター情報
アイコンイメージ
鬼塚 小毬(ka5959)
副発注者(最大10名)
クリエイター:りや
商品:おまけノベル

納品日:2020/02/03 10:38