※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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姉妹というもの
金鹿には兄がいるが、弟や妹はいない。
下の弟妹がいたらどんな感じだろうか……と想像した事はあったけれど、別にそれを不満に思った事はなかった。
自分を甘やかす兄を見て、大袈裟だと、どこか冷ややかな目線で見ていた部分があったと思う。
――お兄様には申し訳ない事をしましたわ。
だって、知らなかったんですもの。
妹という存在が、こんなに可愛いものだったなんて……!
「……金鹿さん、これで合ってます?」
「ええ、合ってますわよ。裁ち終わったら、布を中表にしてくださいね」
「中表?」
「布の表を内側にして合わせるんですのよ」
「ああ、なるほど……」
真剣な顔で布地と格闘している三条 真美に微笑みを向ける金鹿。
彼女は、妹分である真美に請われて裁縫の手ほどきをしていた。
「急にお願いしてすみません。ご迷惑じゃなかったですか?」
「とんでもないですわ。真美さんのお役に立てるのはとても嬉しいですし。でも、裁縫を習いたくなった理由は気になりますわね」
にっこり笑う金鹿。
そう。最近この可愛い妹分に気になる人がいるらしい。裁縫を習いたいだなんてもしや……!
「あの……私、女の子らしい事を全く知らなくて……。今は男のフリをしなくていいですし、そういうのを覚えた方がいいのかなって……」
もごもごと恥ずかしそうに呟く真美に、お姉ちゃんガードを発動しかけていた金鹿がハッとする。
――先代の三条家の当主であり、八代目詩天だった三条 氏時は長い事子供に恵まれなかった。
ようやく生まれたのが娘で――彼は我が子を詩天の座に就けたかったのだろう。
その為には真美を『嫡男』と謀る必要があったのだ。
それが、結果的に詩天に内乱を呼ぶ事になったのは何とも皮肉な話だが――。
男子として生きる事を望まれてきた真美が、女の子らしいものに触れる機会がなかったのは仕方のない事なのかもしれない。
――自分より小さいのに、沢山のものを背負わされて。
口には出さないけれど、辛かったのではないだろうか……。
そう思うと、何と言うか。甘やかしたくなってしまうのだ。
そんな事を考えながら、真剣な表情で布とにらめっこしている真美を見守る金鹿。
真美の小さな悲鳴が聞こえて身を乗り出す。
「真美さん? 大丈夫ですか!?」
「大丈夫です。指に針を刺してしまって……」
「あらあら。ちょっと失礼しますわね。……血は出ていないようですけれど、念のため手当てしましょうか」
「いえ、そこまでしなくても……」
すっと応急手当セットを出して来た金鹿にでっかい冷や汗を流す真美。
――このお姉さんはいつもそうだ。
自分を、当然のように子供として甘やかしてくれる。
金鹿とは詩天が危機に陥って、どうしたらいいか分からなくて……とにかく何とかしなくちゃと城を飛び出した時に出会った。
穏やかな内に燃えるものを秘めた人。綺麗なだけじゃない。優しくて強い、自慢のお姉さんだ。
……ただ、こう。いくらお姉さんが自分に優しいからと言って、甘えてしまうのはどうなのかなと思うのだが。
自分を年相応に扱って、無条件の優しさをくれた存在……父も、従兄ももう喪ってしまったから。
彼女の温かさが心地よくて仕方ない。だからついつい、伸ばされた手に甘えてしまう。
……いやいや。私だって九代目詩天と呼ばれている身。しっかりしなくては……!
手元の布をキッと見つめる真美。一針一針、丁寧に縫い進めて……気がつけばころんとした可愛らしいお手玉が出来上がっていた。
「……できた!」
「とっても上手に出来ましたわね。初めてとは思えないですわ。真美さんは筋が良いんですのね」
お姉さんに褒められて、頬を染める真美。
縫い上げたばかりの鮮やかな朱色の花模様のお手玉を、そっと金鹿の手に乗せる。
「これ、金鹿さんに差し上げます。お裁縫を教えて戴いたお礼です」
「あら。私が戴いてしまっていいんですの?」
「はい! 元々、金鹿さんに差し上げようと思って作ったんです。大好きなお姉さんに受け取って貰えたら嬉しいです」
にっこりと、花のように微笑む真美。金鹿はお手玉を握りしめたまま顔を覆う。
あああ、可愛い。なんて健気で可愛いんでしょう……!!!
精霊様。こんな可愛い妹を与えてくださってありがとうございます……!
「……金鹿さん?」
「ああ、ごめんなさいね。あまりの嬉しさに感動してしまったんですの。ありがとうございます。大事にしますわね。そうですわ。戴いてばかりは申し訳ないですもの。私も何か作らせてくださいな」
「え。でも……」
「……そうだ。折角ですし、髪飾りでも作って差し上げようかしら。何色の布にしましょう。真美さんは何でも似合うから悩んでしまいますわね……。真美さんはどの布がお好きかしら?」
満面の笑みで布を並べる金鹿。
こうなってしまうと、お姉さんは止まらない。
真美はくすりと笑うと、一緒に布を選び始めた。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ka5959/金鹿/女/18/綺麗で優しいお姉ちゃん
kz0198/三条 真美/女/10/甘えたい盛りの妹(NPC)
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お世話になっております。猫又です。
金鹿ちゃんのノベル、いかがでしたでしょうか。あまり依頼で描くことが出来ない、真美がおねえさんに対してどう思っているか……という部分を認めてみました。
少しでもお楽しみ戴けましたら幸いです。
好き勝手色々書いてしまいましたが、話し方、内容等気になる点がございましたらお気軽にリテイクをお申し付け下さい。
ご依頼戴きありがとうございました。