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「遺跡防衛戦」 イニシャライザー展開A(北東) リプレイ

 
 

作戦1:イニシャライザー展開A(北東) リプレイ



サトコ・ロロブリジー
サトコ・ロロブリジーダ
ka2475
Holmes
Holmes
ka3813
龍崎・カズマ
龍崎・カズマ
ka0178
テンシ・アガート
テンシ・アガート
ka0589
ティリル
ティリル
ka5672
央崎 遥華
央崎 遥華
ka5644
ショウコ=ヒナタ
ショウコ=ヒナタ
ka4653
パトリシア=K=ポラリス
パトリシア=K=ポラリス
ka5996
藤堂研司
藤堂研司
ka0569
ミリア・コーネリウス
ミリア・コーネリウス
ka1287
アルマ・アニム
アルマ・アニムス
ka4901
夢路 まよい
夢路 まよい
ka1328
八雲 奏
八雲 奏
ka4074
佐藤 絢音
佐藤 絢音
ka0552
浅黄 小夜
浅黄 小夜
ka3062
キーリ
キーリ
ka4642
レベッカ・アマデーオ
レベッカ・アマデーオ
ka1963
和泉 澪
和泉 澪
ka4070
J

ka3142
ミルベルト・アーヴィング
ミルベルト・アーヴィング
ka3401
ヒース・R・ウォーカー
ヒース・R・ウォーカー
ka0145
白藤
白藤
ka3768
扼城
扼城
ka2836
●戦いの始まり
 戦域となる雪原は水晶の森などもなく、とても見晴らしがいい地形だった。故に敵が迫ってきている事なら一目瞭然で、視界に捉える事が出来るだろう。
「うっわ、すごい敵の数だね」
 サトコ・ロロブリジーダ(ka2475)がある意味関心しながら目を見開く。
 そしてHolmes(ka3813)も、遠方の敵を眺めながら一言零す。
「リザードマン、ワイバーンにアースワーム……大盤振る舞いとはこの事だね」
 一方、龍崎・カズマ(ka0178)は軍用双眼鏡を用いて、更なる索敵を行っていた。
「増援が次から次へと……キリがねぇな」
 迫りくる敵軍はワイバーンやアースワームの姿も確認できるが、おおよそがリザードマンで構成されている。
 リザードマンはさほど手強い敵という訳ではない。――しかし。
 テンシ・アガート(ka0589)はカラスを空に飛ばしファミリアズアイで視覚を共有すると、リザードマンの数の多さに思わず息を飲むだろう。
「あの数じゃあ敵の挟撃は避けられそうにないね」
「あれではバリケードを作成する隙も無さそうですね……」
 ティリル(ka5672)も敵軍の圧倒的な数を眺めながら、呟いた。
「でも付け入る隙があるとすれば、敵に専任指揮官がいないってことかな。それに知性の高い種がいないところも、だね」
 サトコの言うとおり、敵は我武者羅に襲い掛かる事しか能がない。
 央崎 遥華(ka5644)もサトコと同じく敵の知性の低さが敵の弱みであると指摘して、
「強欲らしく本能で攻め込んできている感があります。勝機は必ずありますよ!」
 仲間を励ましながら、聖女のように優しく微笑む。
 ショウコ=ヒナタ(ka4653)は、魔導バイクに跨ぎながら手に持つ符へと視線を落としていた。
「頼まれ事ぐらい、きっちりやっておくか……」
 この符は、イニシャライザーの設置場所や有力な情報を伝達する為に巨竜迎撃戦の仲間から預かった物である。
 口伝符は一度使用してしまえば消えてしまうものだ。ならば使用するタイミングは、設置が確定した際が最適であるだろう。あの大群の中を切り抜け、無事に報告する任務を全うできるよう気を引き締めていた。
 パトリシア=K =ポラリス(ka5996)は、周りを見渡す。こんなに沢山のハンターが集まる作戦は初めてで、新鮮だった。
 そんな刹那、ふと、背後から声を掛けられる。
「よう。研司、パティ。また会ったな」
 つい先日に仲良くなったダウンタウン勢力のジャンルカと精鋭達だ。
「皆、ジャンルカさん、また会えて嬉しいぜ!」
 パトリシアの隣に居た藤堂研司(ka0569)が明るく笑った。
 するとジャンルカ達も笑む。研司とパトリシアとの再会が、とても嬉しかったようだ。
 顔馴染みが居るのは安心するもの。
 ――しかし大迎撃戦が始まる前は、ぴりぴりした独特の空気も……そこはかとなく漂うものである。
(誰一人欠けることなく帰れますように……)
 皆が笑顔で勝利を掴めるよう、パトリシアはそっと心の中で祈っていた。
 ――そうして大軍勢との開戦は、気付くともう間近に迫っていただろう。
「行くぞ、アルマ」
「行きましょう、ミリア!」
 ミリア・コーネリウス(ka1287)がアルマ・アニムス(ka4901)に顔を向けると、アルマは懐く子犬のように微笑んだ。
 頼れる相棒であり、今は婚約者。生きるも死ぬも一緒、一緒なら最前線も怖くないと共に駆け出していく。
「うふふ、本当に敵がいっぱい♪ ね、これ全部壊しちゃっていいんだよね?」
 夢路 まよい(ka1328)は双眸をキラキラ――強い輝きを放ちながら、わくわくして訊ねた。
 沢山の敵を倒す事……それは彼女にとってすなわち、積み木を崩して遊ぶ事。
 まだ敵軍の攻撃が届かぬ内に前へ出たまよいは、射程距離が延びる様にマテリアルを調節すると――燃える火球を思いっきり投げつける。
 するとワイバーンへと命中し、その瞬間、凄まじい爆発音と共に弾け、周囲のリザードマンを巻き込んだ。
 無邪気に爆撃されたワイバーン達。
 純粋な少女の楽しそうな笑い声を皮切りに、交戦は幕を開けた。

●飛龍の護衛
 遺跡から1km離れた地点を目指すハンター達が担う重要任務は、『特殊なイニシャライザーを設置する事』だった。
 しかしその前に『イニシャライザーを無事に運搬』しなければならない。
 護衛班はイニシャライザーを吊るし運搬する飛龍を、全力で堅守していた。
「鋒矢陣形で参りましょう! 先頭は前衛職の方、その後ろに後衛職の方、更に後方に飛龍と飛龍の護衛役の方と続いていく突破力重視の突撃陣形です!」
 八雲 奏(ka4074)は皆に提案する。
 そして陣形をまとめた後、飛龍の護衛へと回りながら警護と敵の牽制に徹していた。
「ふふふーパティが守ってあげマス♪」
 パトリシアは護衛する飛龍に、にこっと微笑みかける。
 大きな翼を見て、夢が広がる翡翠色の眸。
 背中に乗ってみたいと抱く、そんなパトリシアの気持ちを知ってか知らずか、飛龍は大翼を逞しく羽ばたかせながら飛行を続ける。
 ――ハンター達の進軍は常に敵に囲まれ、待ち受けているような状況だった。
 迎撃班が突破口を開く為アースワームを優先的に撃破しつつ、敵を排撃しながら設置地点を目指す。
 そして飛龍を守る護衛班にも、休む間は存在しなかった。
「させるかぁ!!」
 研司が飛龍へ接近を図るワイバーンに目掛け、弓矢を射る。
 佐藤 絢音(ka0552)も魔法陣を展開させ12条の光を放ち、ワイバーンを狙ってリザードマンごと貫いた。
「敵のわいばーんが厄介なの」
 高い戦闘力と飛行能力を持ち、飛龍の元まで一気に飛んでくる可能性のある敵である。
 浅黄 小夜(ka3062)も飛行能力を持つワイバーンを優先的に狙っていた。
「吹雪……吹かせますね……」
 戦場は乱戦状態となりやすい事を見越し、範囲魔法を唱える際は、巻き込まない様周囲に呼びかけると共にセイレーンエコーによる歌声を響かせる。――更に足止めが成功すれば仲間にも知らせ、その隙に集中砲火しワイバーンを撃破。
 イニシャライザー護衛を主眼とする上で、仲間との連携を重視し討ち漏らす事がなく、具体的に且つ綿密に練られた策は功を奏する。
「遠距離は任せて」
 キーリ(ka4642)は今にも突進してくる勢いで向かってくる負傷していたワイバーンを発見すると、氷の矢を放った。
 ワイバーンが冷気によって凍り付くと、
「トドメは任せるわ」
「了解よ!」
 キーリはレベッカ・アマデーオ(ka1963)にトドメを託す。
 レベッカは攻撃力を高めながら吼天の矢で射抜き、見事撃砕。
 戦力はハンター達が圧倒的に格段上だった。
 しかし敵軍の数だけは驚異的であり、全てを防ぐ事は難しい。
「――っ!」
 突破してきたワイバーンの炎が飛龍へ及ばぬよう、和泉 澪(ka4070)は攻撃を見極めつつ庇うように受けた。
(飛龍には絶対に攻撃を通させません――!)
 周囲に発生する風は吹き荒れ、双眸が鮮やかな蒼色となって見据えている。
 パトリシアも飛龍を庇って炎を喰らっていた。
 とても痛い。けれど、意志は揺るがない。
「絶対に傷付けさせマセン。一緒に戦う事を選んでくれタ、大事なオトモダチだカラ……!」
 後悔なんてさせないように頑張りたい。
 そんなふうに心から自身を奮い立たせ、桜吹雪の幻影でワイバーンの眼を覆い、必死に護ろうとしていた。
 その時、飛龍の眼球はパトリシアを見つめていて――。
 ――そして。
「そこまでです」
 J(ka3142)が澪やパトリシアへ攻撃するワイバーンを銃撃し、引きはがす。
 彼女は戦況を把握する為に周囲をよく見ていた。よって、救援も迅速に行える。
「私達の行く手を阻む事は許しません」
 ティリルも飛龍達が運搬に専念できるよう、不可視の結界を展開。
 周辺のリザードマンの足元を積極的に泥状に固めて行動を阻害しつつ、進軍の貢献をした。
「この戦い、必ず勝利を掴んでみせます」
 ――ミルベルト・アーヴィング(ka3401)は母のように強い眼差しで、声には強い意思が窺える。
 そして光の波動の衝撃でワイバーンを排撃。
 その後、飛龍達を柔らかな光で包み込み、癒していく。
 こうして敵軍の増援の猛威にさらされながらも機動力を重視して突破していくハンター達。
「あそこだ!!」
 研司が皆に知らせた。
 すると奏は頷き、指揮を取る。
「設置場所まであともう僅かです! 此処からは三手に分かれましょう!」

●迎撃の盾
 イニシャライザーは横並びに、2?1?2の比率で並べることとなっていた。
「行くわよ、ついて来て」
 レベッカは、左方面へと2騎の飛龍を誘導する。
「エスコートしよう」
 Holmesも同様に、飛龍を率いながら左方面の突破口を開いていった。
「私達も行きましょうか」
 澪も右方面へと2騎の飛龍を誘導する。
 ハンター達は臨機応変に左右へと分かれつつ、中央は予め担当を希望していた者達で編成する事となった。
「皆にも中央の護衛、お願いできるかな……?」
 研司はこの機にジャンルカ達ダウンタウン勢力にも協力を求めると、
「ああ。お供するぜ」
 勿論快諾されるだろう。研司達も飛龍を1騎引き連れながら誘導を開始する。
 そんなさなかテンシは左方面へと進軍する前に、ファミリアズアイで眺める光景を見つめながら一抹の不安を感じていた。
「後方にアースワームの姿を6体確認したよ。それも固まってやって来てるみたいだから、ほぼ同時に襲来するんじゃないかな」
「なら設置は猶更急いだほうが良いですね。そうしないと飛龍もイニシャライザーも危険に晒してしまいかねません」
 Jはテンシから聴いた情報を念頭に置きつつ、トランシーバー(無線)を使って情報共有の為に発信した。
 中央ではJ、左方面ではヒース・R・ウォーカー(ka0145)とサトコ、右方面ではHolmes、計4名が無線を所有している。
 ――戦場は、大軍との大乱戦。
 切れ目無く交戦する状況でも、Jはやや距離を置く他方面とも円滑に情報共有ができるように無線を使用していた。
 そして重要な情報は各方面で伝達されていく。
「アースワームが纏めて6体か。ま、そりゃとっとと設置して飛龍も帰しちまった状態で迎えられた方が、色々と安全だわな」
 中央に進むカズマは銃を構え、金眼が敵を正確に捉えて狙撃した。
 イニシャライザーを設置する護衛班の邪魔をさせないよう敵を引き受け、ダウンタウン勢力と手を組みながら蹴散らし一掃。排撃した道を通り、護衛班は設置を急ぐ。
 ――攻撃こそ最大の防御。
 左方面では絢音とレベッカが飛龍を率いてイニシャライザー設置の為に走る中、先頭に立つヒースは行く手を阻むリザードマン達を駆け抜ける折に斬り倒した。
「盾と鎧を持たずとも刃を持って守る事ができるか。証明するには丁度いい戦場かなぁ」
 そしてリザードマンが振り下ろす剣を躱して、その勢いのまま反撃し瞬時に撃砕する。
「護りに徹すれば勝てる状況でもないから、ねぇ。敵の数を減らす為に斬るのも必要、と」
 ヒースは護衛班と連携を取りつつ、挟み撃ちにしながら確実に仕留めた。
「嗤え」
 そしてワイバーンには攻撃をいなしつつ、迎撃する。
「こっちを無視してると痛い目に遭うよ」
 サトコも飛龍やイニシャライザーを狙う敵を迎撃するべく、雷撃を呼び出して一直線に放った。
 ショウコも後方から追走する敵を、ライフルで射撃。
 テンシは負傷したワイバーンが飛龍に飛び込んでいくのを発見すると、パルムに魔力を纏わせ翼を狙って突撃させた。
「協力してくれる飛龍の期待を裏切るわけにはいかないよね!」
 脅威を討ち漏らしはしない。確りとトドメを刺していく。
 アルマは幻影の黒衣を纏いまるで吸血鬼のような風貌となって目先に溜まっていた敵軍を焼き払っていた。彼は覚醒すると思考が過激になり、性格が裏返る――
「当たれば熱いじゃ済まないですよォ? アハハハッ!!」
 鋭い牙を覗かせ、高笑い。
 ミリアもアルマと連携しながら、設置の妨害を行いそうな敵を優先的に狙って斬り掛かる。
「設置の邪魔はさせないぞ」
 設置の援護を最優先にしながら剣で薙ぎ払い、リザードマンを瞬殺していく。
 右方面でも澪とキーリが設置の為に走りつつ、迎撃班は彼女達と飛龍を守っていた。
 Holmesは目を細めつつ大鎌を握る。味方との間合いを確認しそして――、
「露払いなら任せてくれたまえ。生憎それしか能がないのでね」
 力を<込>めた<廻>で一掃する!
 勢いよく横に払われた敵軍。Holmes達によって確保された安全な道を通りながら、護衛班は速やかに飛龍を誘導していく。
「さってと……お仕事せんとな」
 白藤(ka3768)は敵を見据え、
(うちはうちにできることを……やな)
 立ちはだかるリザードマンの目を潰すように銃撃した。
 扼城(ka2836)も白藤と連携しながら、接近する敵を中心に、強く踏み込んで一気に距離を詰め軌道上にある全てを刺し貫いていく。
 鮮やかに一掃する扼城の頼もしい背中を見つめた白藤は、ふと笑みを浮かべる。
 そして敵に囲まれた扼城が離脱できるようにと冷気の弾丸を撃ちながら、
「しつこいんは嫌われてまうで……っと! ――という訳で、うちのナイト様、気ぃよう頼むで?」
 なんて軽口を叩くと、扼城の口角がほんの僅かに上がっていたかもしれない。
 まよいは突き進む護衛班と飛龍の傍から、今にも襲撃してきそうな敵集団を中心にファイアーボールをぶち込んでいた。
「こんなに沢山の敵を相手にするのって楽しいわね?」
 手も足も出させない完全に一方的な爆撃。にこにこしながら敵を殲滅する。
 遥華も群がるリザードマン達が突進してくる様子を眺め、双眸を細めた。
 敵を見据える緑の眸は白き魔女の如く――
「ふふっ、待ってました♪ いけっ!」
 稲妻の幻影を纏わせながら、飛龍と護衛班を守る激しい雷が一直線に排撃するように駆け抜けていく。
 そして彼らの防衛により守られた護衛班は左方面、中央、右方面の設置ポイントに無事到達。
「此処よ、設置して!」
 レベッカは飛龍に指示を飛ばすとハンター達の意思が通じた飛龍達は、龍鉱石を大地に降ろして設置した。
 ――するとカム・ラディ遺跡の結界に呼応して、設置したイニシャライザーは歪虚を弱体化させる結界を展開していく!

●設置完了
 龍鱗イニシャライザーは結界内に居る歪虚にだけ効果を発揮し、移動力、全身の防御力、回避力を下げる事が出来るというものだ。――そしてこの結界は、巨竜を迎え撃つ同志達の助けともなる。
 サトコは遺跡防衛中の仲間達に無線を使って、敵軍全体の動きを観察した結果を報告。
 ショウコも巨竜迎撃戦の仲間に情報を届ける為、符を握りしめながら念じていた。
「……」
 イニシャライザーの設置場所――それからアースワームの刃が通りやすい所を探したが、どの部位もとても頑丈であったことを。
「いつでもどこでも、情報は値千金だろうからね」
 ショウコはそっと、遺跡防衛戦……そして巨竜迎撃戦双方の成功を祈っていた。
 目標はひとまず達成された。しかし喜びを分かちあう間もなく、疲労困憊の中、ハンター達は次の一手を考えねばならなかった。
『アースワームが6体、ほぼ同時に襲来する可能性があるから』だ。
 ――それにリザードマン達の大軍の勢いも収まっている訳ではなかった。彼らはそれらの脅威から、イニシャライザーを死守できなければ成功とはいえない。
 だからこそ、研司は飛び去ろうとする飛龍を呼び止めた。
「飛龍、背中を貸してくれ! 上空から戦況を視たいんだ!」
 その頃、レベッカも飛龍にお願いをしていた。
「船上育ちだからね。高い所からもの見つけるのは得意なの。だから敵の様子を探る為に乗せて欲しいのよ!」
 すると飛龍は咆哮を上げる。
 そして意思が通じたのか彼らが背中に乗りやすいよう、微かに屈むだろう。
「乗せてくれるのかっ! ありがとう!!」
「ありがとね、飛龍!」
 ――その刹那、パトリシアの傍にも別方面から飛んできた飛龍が降りたつ。
「……!」
 吃驚したパトリシアだったが、顔を上げると一目で分かった。
 この子は自分が護衛していた飛龍だと。
「乗せてくれマスカ?」
 パトリシアは嬉しそうに微笑んだ。
 飛龍は言葉を通じ合わせる事は出来なくても――温かい友情の絆で確かに結ばれている。

●アースワームの襲来
 リザードマンの増援の勢いはとどまる事を知らない。
 しかしそれ以上に厄介であるのがアースワームだった。
「アースワームが左方面に2、中央に2、右方面に2! 接近中なの!」
 絢音はイニシャライザーの上に昇り、高い所から双眼鏡を使ってアースワームの動きを確認しつつ大声で叫ぶ。
 アースワームはハンター達に目も暮れず、イニシャライザーへ一直線に狙う要注意の敵だ。
(なんとかしないとな)
 そう考えて結界の最前線で迎えるように立っていたミリアは、ソウルトーチを使用する。
 ――すると、
「釣れたか、狙い通りだぜ」
 ミリアは笑みを深めた。ソウルトーチはアースワームに対して非常に効果的だった。そしてアースワームが接近してくると勇猛果敢に力強く剣で薙ぎ払う。
 しかし、
「くっ……!」
 標的となったからには無傷で居る事は難しく、吐き出す火炎に当てられ怪我を負った。
 が、事前にソウルトーチを使用する事は仲間に知らせていた為、大事には至らない。
 透かさずヒースが手裏剣を投げ、Holmesが薙ぎ払い、サトコが雷撃を呼び出し、援護する。
 ――何より、背中を預ける彼がミリアを傷付けたアースワームを赦すだろうか?
「ミリアを傷付けておいてタダで済むと思ってませんよねェ!!??」
 アルマは激しい憎悪を声に乗せ、美しい蒼炎は業火のように荒々しくアースワームへ噴射。自身の眼前に立ちはだかる敵を許さないとばかりに睨みつけ、死を与えるまで灼熱を与え続けるだろう。
 ――そして。
「アルマ!!」
 振り返ったミリアの紅く輝く眸にはリザードマンの攻撃を受けていても尚、ミリアを護ろうとするアルマの姿が映っていた。

 ハンター達は、テンシが索敵しJが情報を回したおかげで事前にアースワームが襲来する心構えが出来ていた。
 よって警戒も十分に行え、更に無線を駆使して救援の迅速化に繋げたJの貢献と、パトリシアの生命感知で得た「地中にアースワームは潜まない」という情報の貢献、そしてアースワームの対応に備えたハンター達の貢献があり、混乱することなく戦局を迎えていただろう。

「行かせはしないわ」
 キーリが土壁を形成し、アースワームの足止めに尽力。
 その隙に絢音がロングレンジ、澪が全速力で駆け抜けて斬り倒していく。
 一方の研司も、地響きを伴わせながらイニシャライザーへと進行していたアースワームの前に立ちはだかった。
「でかい図体なら多く刺さるってなぁ!」
 ズドドドドド!!
 ――と、相手が止まるまで撃ち続ける制圧射撃。
 そして激しい弾幕を受け足止めを喰らっているアースワームを、ティリルが集中砲火する。
「とくと御覧あれ」
 複数の符が結界を作り光で焼きながら、積極的に使用を。
「ね、私ともっと遊びましょう?」
 まよいが冷たい氷の矢を放ちながら、アースワームを引き止める。
 そして遥華が、
「氷の世界にようこそ♪」
 イニシャライザーを狙うアースワームを中心に冷気の嵐を吹き荒れさせ、対象を凍り付かせる。
 ミルベルトも光の波動を周囲に広げた。
 アースワームに衝撃とダメージを与え、
「―――!」
 断固たる意思を示し、圧力を加えた。
 イニシャライザーの傍でディヴァインウィルの境界を作り上げつつ、長く守る事に奮闘する。
「なに、何事も経験が大切さ。老いてなお楽しみたいのならね」
 そしてHolmesが皆が足止めをする内に、渾身の力で薙ぎ払う。
 皆が協力してアースワームを喰い止める事に奮闘しつつ、
「……皆の、邪魔は……させません……」
 小夜も土壁の生成も行い、しかし皆がアースワームを対応するからこそ、皆を狙うワイバーンを始めリザードマンに爆撃。
 周囲と足並みを揃えつつ、魔法の範囲には気を配りながら、燃える火球が皆を助ける。
「ざこは潰すの」
 絢音も小夜と共にデルタレイ・ロングレンジで敵を蹴散らしていた。
 ーーその頃、奏はソウルトーチを使用していた。
「イニシャライザーには触れさせません」
 すると効力は絶大に発揮され、イニシャライザーへの注目を逸らす事に成功する。――が。同時にそれは奏が2体のアースワームに囲まれる事となった。
 果敢に薙刀を振り回し立ち向かう奏の勇姿。しかし、集中攻撃はやむを得ない。
「……っ!」
 そしてアースワームが火炎を吐いたその刹那――、カズマがその炎を割って飛び込んだ。そのままアースワームの巨体を駆けあがり斬龍刀を構え、頭部に狙いをすまして連撃で切りつけていく。
 カズマの指示に従って行動していたダウンタウン勢力も、奏へ攻撃が集中しすぎないようにと助力した。
 そうして奏はカズマ達と共に、アースワームを撃破する。

●希望の勝利
 皆が深い傷を負う事もなくアースワームを撃退し、襲来を乗り越えたハンター達。だがそれでも尚、次々と襲い掛かる敵の圧倒的な数に苦しむ頃だろうか。
 終わりが見えない戦場に居る彼らは疲労していた。
「こんなの……どうすりゃいいってんだ」
 戦場の何処かで、挫折する誰かの声。
 それは絶望に満ちた声だった。
 ――いつか自分達の方が力尽きてしまうのではないか、と。
 しかし……、
 そんな不安を取っ払うように、鼓舞したのがカズマだった。
「くよくよ考えてたってしょうがねぇ」
 敵はどんどんと増援を呼んでいる。
 それでも、
「生きてさえいりゃ何とかなんだろ。だから全員、今を生き抜く事を考えろ!」
 カズマは全員が生きて戻る為に戦っていた。
 そんな彼の言葉をきっかけに、周囲の空気に少し変化が現れるだろう――此処で諦める訳にはいかない、と!
 士気が熱く高まり始める!
「ここを守りきればグランドワームを弱らせられます!
 厳しいですが、ここを死守して希望を未来に繋げましょう!」
 ティリルが盛り立てるように味方を鼓舞した。
 小さな光輝く小鳥の幻影は、まるで希望を象徴するかのように。
 そして彼女が符を取り出せば一層美しく輝き渡る。
「青龍様に認めさせるには、私達が勝利しなくてはなりません。
 全ては子らの未来のために……今――!」
 ミルベルトも全てを懸け、立ち向かう。
 翼の輝きは、慈愛の光。
 護るべき人達が居る眼差しで敵を見据える。
「龍と人を繋ぐため……推していざ参ります!」
 奏も、赤みの強い桜の花びらを舞わせた。
 そして大軍に臆することなく、凛々しく、華やかに。
 表情には決意が表れている。
「俺達は、絶対に任務を達成してみせるよ」
 テンシも奏の言葉に深く頷きつつ、烏とパルムと共に今を踏ん張ることを心に誓う。
「さて、ここが正念場……と言った所か……まだやれるな……?」
 扼城が振り返り確認を取ると、白藤は不敵に微笑む。
 そして頷く代わりに、
「扼城、ちょーっと長いデートにでもご一緒してもらおか?」
 飄々と冗談の言葉を選んだ。
 扼城は静かに目を伏せて、
「戦場だがな……射線のエスコートで構わんか……」
 二人は軽口を叩きあいながら、力を合わせて乗り切っていく。
 ――ハンター達は諦めなかった。
 キーリも燃える炎の矢で敵を射貫きながら、
「雑兵は大人しく墜とされなさい。私たちはこんなところで倒れるわけにはいかないの」
 眸に金色の炎を堪えて、揺らめく。
 ――どんなに過酷で、辛い道のりだったとしても。
「東方みたいに……帰りたい人が、おるんやったら……」
 小夜は、頑張れる。
 そして自分達も全員で帰還を果たせるように。
 パトリシアもその為に、頑張ろうと思いながら。
 ――だから、
「防衛の要、崩させるかぁっ!!!」
 限界を超えた研司は、迫りくる敵を片っ端から撃ちまくった。
 額に汗を流しながら只管。
 全力で此処を、皆を、守り抜きたいと思いながら怒涛の弾丸を浴びせた。

 ハンターと敵軍の激しい攻防戦は長く続き、敵は容赦なく何度も襲い掛かってきた。
 が、その度に押し返し、イニシャライザーを守りぬく。
 果敢に戦う一人一人の思いは一つとなり、力を合わせて耐えた。
 ――そして彼らは果たすのだった。栄光の勝利を。

担当:瑞木雫
監修:高石英務
文責:フロンティアワークス

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