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【蒼乱】「崑崙基地防衛戦A 崑崙突入」 リプレイ

作戦1:崑崙突入 リプレイ

ステラ=ライムライト
ステラ=ライムライト(ka5122
葛音 水月
葛音 水月(ka1895
水城もなか
水城もなか(ka3532
クローディオ・シャール
クローディオ・シャール(ka0030
デスドクロ・ザ・ブラックホール
デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013
誠堂 匠
誠堂 匠(ka2876
御酒部 千鳥
御酒部 千鳥(ka6405
エスカルラータ
エスカルラータ(ka0220
シャーリーン・クリオール
シャーリーン・クリオール(ka0184
アシェ?ル
アシェ?ル(ka2983
鞍馬 真
鞍馬 真(ka5819
ジャック・エルギン
ジャック・エルギン(ka1522
リンカ・エルネージュ
リンカ・エルネージュ(ka1840
ジャック・J・グリーヴ
ジャック・J・グリーヴ(ka1305
シガレット=ウナギパイ
シガレット=ウナギパイ(ka2884
無限 馨
無限 馨(ka0544
レイオス・アクアウォーカー
レイオス・アクアウォーカー(ka1990
玉兎 小夜
玉兎 小夜(ka6009
・J・
・J・(ka3142
パトリシア=K=ポラリス
パトリシア=K=ポラリス(ka5996
ユーロス・フォルケ
ユーロス・フォルケ(ka3862
神楽
神楽(ka2032
シェラリンデ
シェラリンデ(ka3332
セリス・アルマーズ
セリス・アルマーズ(ka1079
冬樹 文太
冬樹 文太(ka0124
アメリア・フォーサイス
アメリア・フォーサイス(ka4111
フェイル・シャーデンフロイデ
フェイル・シャーデンフロイデ(ka4808
ラン・ヴィンダールヴ
ラン・ヴィンダールヴ(ka0109
リカルド=イージス=バルデラマ
リカルド=イージス=バルデラマ(ka0356
エヴァンス・カルヴィ
エヴァンス・カルヴィ(ka0639
央崎 枢
央崎 枢(ka5153
小宮・千秋
小宮・千秋(ka6272
バルバロス
バルバロス(ka2119

「やっと戻って来れた! ……けど、何これ……」
 月面に降下したサルヴァトーレ・ロッソ。しかしそこから見た光景はその目を疑うものだった。リアルブルー出身者の反応は、ステラ=ライムライト(ka5122)の様に喜びよりも先に驚愕が来るものだった。
「いつぶりのリアルブルーでしょうか……それじゃあステラ、いきますよー」
 しかしやるべきことははっきりしていた。ステラも葛音 水月(ka1895)にそう導かれ、やるべきことのために動く。
「せっかく元の世界に戻ってこれたというのに戦闘の真っただ中ですか……詳しく戦況を知りたかったのですが、思ったより劣勢なのでしょうか?」
 水城もなか(ka3532)の言うとおり、状況は実際に見てみないとわからないが少なくとも楽勝と言えるような状況でないのは感じ取れた。その気持ちは自然とハンター達の足を早め、次々と揚陸艇に乗り込んでいく。ここには二つの世界のどちらの出身者も居るが、皆が皆統率された動きで準備を進めていた。
「かの蒼き世界へと降り立つため、道を共にする皆を、ここで巡り会った彼等を、そして……友を守り通してみせよう」
 例えばクローディオ・シャール(ka0030)のように、クリムゾンウェスト出身者も思いは同じだった。彼らクリムゾンウェストの者にはここは完全に縁もゆかりもない異世界である。それでも同じ思いになる理由。
 それは、二つの世界の出会いだった。出会い、違う文化の中で摩擦があったかもしれないが理解を深め、そして共に歩む。リアルブルーの者たちが転移してからの時間がもたらした結果。それがこれだった。
 そして人がつめ込まれた揚陸艇は宇宙空間へと飛び出していく。
「仕方ねぇ、今回もこのデスドクロ様が正解へ至るルートへと導いてやるぜ」
 揚陸艇の狭い空間の中で、デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013)はPDAを操作していた。崑崙一帯のマップデータを引き出し、突入ルートを探るための準備を進めていた。
 一方彼が乗る揚陸艇の船体には、十 音子 (ka0537) が張り付いていた。彼女は何も好き好んでこういった格好をしているわけではない。ここからでも肉眼で見える、基地周辺に集まっている歪虚達。ドームに突入する前にこれらの襲撃を受けることは自明の理だ。ならばいち早く展開するため、彼女のようにドームの外で戦おうと言う者達は船体に掴まって宇宙空間を進んでいた。
 その頃誠堂 匠(ka2876)は揚陸艇に乗り込む前に何やら操作をしていた。彼の手にもPDA。それを巧みに操りデータを並べていく。そこには彼がこれまでクリムゾンウェストでどの様な事を行っていたのかが簡単にまとめられていた。思い出に浸っている時間は無いはずだが、彼はやっと操作を終えると揚陸艇に乗り込み、宇宙空間へと飛び出していった。


「おぉ、『この世の果て』と言った絶景じゃな」
 ドームに近づくに連れ変わりゆく風景、それを見て御酒部 千鳥(ka6405)がそう漏らす。無理も無いことだった。そこにあったのはおびただしい数の狂気の歪虚。その歪虚達がこちらへ向かって中を浮かび接近してきた。それはこちらに気づいたのか、それとも本能故か、狂気の真意を推し量ることなどできるはずがない。
「おっといかん、作戦開始のようじゃ」
 そう、今行うことはこの歪虚を排除することだった。人が命あるものであるかぎり、歪虚はそれを消し去らんと襲いかかる。ならばこちらはそれに抵抗せねばならない。
 うようよと迫ってくる歪虚の群れの中心で、突如として爆発が起きる。巨大な火球が膨れ上がり歪虚達を飲み込んでいく。
 それはエスカルラータ(ka0220)によって放たれたファイアーボールだった。酸素の無い宇宙空間では火など起きないのが道理だが、この火球は正のマテリアルにより形作られたものだ。それが対たる負のマテリアルである歪虚を飲み込み、消し払う。
 しかし、その炎が晴れたと思うやいなや、他の歪虚が集まり埋め尽くしていた。無尽蔵とも言える数を力として襲い来る。
 そこにピンク色の光弾が飛んだ。その光はほうき星の様に軌跡を空中に描きながら進み、今度は冷気の爆発を巻き起こした。
 その刹那、冷気がそこに存在するもの全てを凍りつかせたその一帯に銃弾の雨が降り注いだ。冷気の渦から辛くも免れた歪虚にも、おまけとばかりに銃弾が放たれ貫く。
 武者鎧を身にまとい傘を手にした者、アシェ?ル(ka2983)がその冷気の主だった。彼女が冷気で歪虚達を凍りつかせ、そこに一帯まとめてシャーリーン・クリオール(ka0184)が銃弾を降らせる。巧みな連携の前に歪虚達は次々と消え去っていく。
 一方別の場所では鞍馬 真(ka5819)がその手のハルバートを上下左右、縦横自在に振り払っていた。彼の背後にはハンター達が居る。彼の前彼方先には、この歪虚を生み出している親玉が居る。背後に居るハンター達は、その親玉を撃ちぬくための矢だった。その矢を折らせるわけにはいかない。彼は次々と歪虚を斬り払い迎撃していく。
 その様子を見ていたデスドクロは敵の量を見極め、多いところへ火力を集中させようと動く。しかし、強烈なノイズ混じりの通信に連絡は思うように行かない。そのノイズを聞いているだけで気を狂わされそうな強烈な負のマテリアルを感じる。これでは先へ進めない。
「美女の歓迎どころか鉄火場に突入とはな! 最高じゃねーか!」
 その時ジャック・エルギン(ka1522)が前へ進み出ていた。そして彼は、恐らくその言葉の意味など理解していないであろう歪虚に向かってこう叫ぶ。
「お前らの相手が俺達がしてやんぜ。こっち向きやがれ!」
 同時に彼の体から炎のオーラが立ち昇る。そのマテリアルの輝きを見たのか感じ取ったのか、歪虚達は突如として一斉に向きを変えジャックの元へと殺到する。押し寄せる歪虚の波。
 しかしこれで好機が来た。狂気の歪虚に策も思考も存在していなかった。これらはただ正のマテリアルを埋め尽くし、消し去るため動く。それ故ジャックが引き寄せてしまえば、ドームの入り口にもぽっかりと大きな穴が産まれていた。
 通信がまともに行かなくても状況は分かる。ハンター達は彼が作ってくれたこの穴に飛び込み、ドームへと雪崩れ込んでいく。それを送り込みながら、ジャックもまた中に入ろうとしていた。


 中に入るとそこは静かなものだった。外を埋め尽くしていた歪虚も存在しない。しかしこれは居ないのではなく、単に凪の様な物であることをハンター達は皆、その一帯を埋め尽くす負のマテリアルの感覚で感じ取っていた。
 歪虚は居ないが、代わりにそこには疲弊した連合宙軍の兵士たちが居た。指揮系統が絶たれ、混乱の極みに居た彼らだがハンター達を見て銃を構える。訓練された兵士である彼らは安直にこの者たちが味方だとは信じない様になっていた。その練度がこの場に緊張をもたらしていた。
 そこに誠堂が歩み出る。そして彼は軍人たちを手で制し、PDAを見せる。そこにはロッソが異世界に転移したこと、助けるために帰還したこと、そして自分たちが異世界の力の恩恵を受けていること……そういったことが手短に説明されていた。最後に彼は自分のIDカードとともに、PDAの画面の一部を示す。
 そこに記されていたものはクリストファー・マーティンのサインだった。そしてそれがハンター達が味方であることを示す何よりの証拠となった。
 一瞬生まれる温和な空気。この悪夢の中に突然もたらされた希望。しかしそれが絶望へと変わるのもまたすぐの話だった。再び押し寄せ始める狂気の歪虚達。分かり合えたはずの両者はこれにより、再び混乱の中へと押し戻されていった。
 狂気の歪虚達が襲い来る。連合宙軍が対応する。そしてハンター達は共に歪虚達と戦う。
 しかしそれは人智を超えた力だった。身の丈を超える剣を軽々と振り回し、ほんの少し念じるだけで炎を巻き起こす。常識の壁を超えたその力に畏怖の念が巻き起こる。今もまさに兵士たちの前に立ったハンターが炎の渦を巻き起こし、歪虚達を一瞬の内に焼き払ったところだった。
 だが、そのハンターは己の思いを声に乗せ兵士達に語り始めた。
「戦闘の最中ゆえ背中を向けたままで失礼する! 勇敢なる同胞達よ!」
 背中を見せたままその男はIDカードを示した。そこに記された名は久我・御言(ka4137)。それはまさに今人の限界を超えた力を振るったものが、彼らと同じ人間であることを示していた。
「私の名前は久我・御言! 地球の人間だ! サルヴァトーレ・ロッソより救援にきた! まずはよくぞ生き延びてくれたと感謝する!!」
 久我は別方向から襲いかかってきた歪虚達をまとめて焼き払い、言葉を続ける。
「疑念はあるだろう、当然だ。だが今は信じてほしい。私達は決して敵ではない。同じ人間として、共闘できると信じている」
 その声が戦場に響く。そこにその声とは違うハイトーンの声が響いた。
「左右に展開して! そこを開けて!」
 その声に慌てて左右に別れると、間を光の尾を引いて何かが飛び、その後突如として火花が飛び散った。放射状に飛び散ったそれは歪虚を次々と焼き落としていく。
 驚愕する彼らに、それを生み出したリンカ・エルネージュ(ka1840)は言葉を続けた。
「大切なものを守るための力だからね!」
 その言葉通り、爆発の残響が残るドームの中でハンター達は人を守るため戦っていた。
「異世界だか何だか知らねえが俺様のやる事は変わんねえ」
 歪虚が一体、転倒した兵士に向かって突っ込んで来る。そこにジャック・J・グリーヴ(ka1305)は何のためらいもなく己の身を投げ出す。果たして、歪虚が伸ばしてきた触手はその黄金に輝く盾に弾き飛ばされる。
「その場にいる奴等全員に魅せ付けてやるぜ。俺様の魂、その輝きってヤツをよ!」
 弾き飛ばした歪虚にジャックは銃弾を数発打ち込み動きを止める。
「気張れよ兵士共! ぽっと出の俺様らに負けてたら嘲笑ってやっからな!」
 ジャックの元へと歪虚達が殺到してくる。だが、歪虚達が次々と放った光線はその輝く盾の前に見事に弾かれていた。
 そこにやってきたクローディオもまた、盾を掲げ歪虚の光線を、触手を弾き飛ばしていく。
 そして歪虚達が弾かれ集まったところで、シガレット=ウナギパイ(ka2884)は銀に輝く銃を抜き放つ。そこから放たれた銃弾は、容易く歪虚を次々と撃ち抜いていった。
 続けてウナギパイは叫ぶ。
「俺たちの背中にはリアルブルーがある。同じものを護る同志だ!」
 そこに居たエスカルラータは負傷者達を後ろに下げ、歪虚達を焼き払っていく。そして彼女はウナギパイの言葉に続ける。
「あなたたちの星を守る為に私達はここに立っているのです」
 それらの盾は彼らの魂を表すかのように、燦々と輝いていた。
 一方別の場所では兵士たちが歪虚に立ち向かっていた。しかし、マテリアルの力を持たぬ弾丸などでは歪虚にまともな傷を与えることなど出来ない。
「帰って来たっすよ! そして俺達が来た以上、LH044の時みたいな事にはさせないっすよ!!」
 そこに文字通り、目にも留まらぬ速度で駆け込んできた者が居た。彼は走りこんでくるやいないや、その手に持っていたトランプのカードらしきものを投げる。それは一瞬の内に扇状に広がっていき歪虚達を斬り裂いていく。いともたやすく強化樹脂で作られた壁にそのカードは刺さる。そこには悪魔の様にデフォルメされた無限 馨(ka0544)のイラストが描かれていた。
 文字通り手品のようなその技に呆然とする兵士たち。それを見越したかのように無限は叫ぶ。
「俺らは味方っす!」
 そしてカードで次々と歪虚達を斬り裂きながら言葉を続けた。
「ここは引き受けるんで一端引いて、小型を吐き出すVOIDを排除する手伝いをお願いしたいっす!」
 その言葉に、まだ戸惑いを隠せない兵士達。
 そんな彼らに、横で歪虚を狙撃していた男が語りかけた。
「確かに俺たちハンターは超人的な能力を持っている」
 その男、レイオス・アクアウォーカー(ka1990)はライフルをしまい、IDカードと日本刀を取り出す。
「だがアイツらと違って共に生きることのできる人間だ」
「我々はVOIDの殲滅を目的とし育成された傭兵組織だ」
 そして逆サイドに居た玉兎 小夜(ka6009)も刀を抜きながら、レイオスの言葉に続ける。
 二人が兵士に言葉を投げかけた後、同時にその刀を振るうと、歪虚は野菜でも切るかのようにいともたやすく真っ二つになった。
 それで兵士たちも落ち着いた。畏怖の思いも少なくとも敵では無いという事実が覆い隠してくれた。
「貴官の連絡可能である上官と話しがしたい。取次を」
 そこで小夜が言葉を続ける。兵士達はそれを聞き、一旦引き連絡と後方支援のために動き出す。
「妾達はさるばとーれろっそからの援軍じゃ。細かい事は先ずは生き残ってからじゃ」
 一方別の場所では、混乱の中に居る兵士たちを千鳥がその声で一喝していた。そして他の者も動く。
 鞍馬はIDカードを見せる。一瞬戸惑う兵士達。だが、彼は襲ってきた歪虚をそのハルバードで真っ二つにしてから、兵士たちの目を見てこう語りかけた。
「今は時間が無い故説明できないが、どうか信じて欲しい」
 そして再び戦いへと戻る。
 一方葛音とステラは二人で動いていた。葛音が前に出て歪虚達を引き寄せる囮となり、攻撃は交わした所でステラが斬り捨てる。このコンビネーションで次々と歪虚達を排除していく二人。
 そして二人はそこに居た、つまり彼らに助けられたばかりの兵士にIDカードを見せ、案内と後方支援を依頼していた。
 年端も行かぬ少年少女達が見せる驚異的な力。しかしIDカードと彼らの態度が、少なくとも敵ではないことを兵士たちに示していた。
 その頃シャーリーンはアサルトライフルで歪虚達を次々と撃ち抜きながら、兵士たちにIDカードを示し自分の正体を明かす。
「アタシはシャーリーン・クリオール。LH044駐留軍所属CAM部隊の少尉で、ついでに言えば今は義勇軍!」
 カードに示されていない情報も続けたところで、彼女は兵士達の中に入り共に行動することを希望した。信頼できる身分の前に断る道理もなく、彼女は兵士たちと共に後方支援のため動き始める。
 その頃ドーム入り口付近では、・J・(ka3142)が兵士達に依頼をしていた。
「私はサルヴァトーレ・ロッソ所属の義勇兵です。共闘を要請します」
 戸惑う兵士たちに彼女は言葉を続ける。
「あのVOIDは見ているだけで精神を狂化されます。幸い我々はその影響から免れます。ですから我々が前に出ます。皆さんは後方支援をお願いします」
 理路整然と語った彼女の言葉に戸惑いが広がる。そこに、もう一人の女性がIDカードを見せてきた。
「パティもスケダチするんダヨ♪」
 そしてパトリシア=K=ポラリス(ka5996)は、兵士たちの戸惑いを見透かしたかのように言葉を続けた。
「困ってるヒトをお助けするノニ、理由ハいらないんダヨ♪」
 その人懐っこい笑顔が、兵士達の心を解きほぐしていた。
 一方その頃、ドーム内の廊下をユーロス・フォルケ(ka3862)がもなかと共に走っていた。彼らの前には兵士が先導するように走っている。そして彼らは程なく、ドーム内のある一室に滑り込んだ。
 そこには大小おびただしい数のモニターが並び、ドーム内の刻々と変わる様子を示し続けていた。二人はモニターをチェックし続け、敵を探していた。この状況を食い止めるため、歪虚を生み出している根源を叩くべく、ドーム内を探っていた。


 その頃、そのモニターに映っていたドーム外では、そこに残っていたハンター達が戦っていた。
「到着まで射撃できる人は接近する狂気を迎撃するっす!」
 ハンター達を乗せた揚陸艇を操縦しながら、神楽(ka2032)はそう叫んでいた。そしてその言葉通りハンター達は動く。
「ここが、リアルブルー……っと、感傷に浸っている場合じゃなさそうだね、この状況を何とかしないと」
 揚陸艇に押し寄せる歪虚達。それをまさしく鎧袖一触で斬り捨てていきながら、シェラリンデ(ka3332)はそうつぶやいていた。そして彼女はもう一度刀を握り直す。マテリアルを巡らせ、精密かつ俊敏な斬撃の前に歪虚達は為すすべなく斬り払われていく。
 しかし何分歪虚達の量が尋常ではなかった。斬っても斬っても補給や損傷やといった一般的な戦術の概念を飛び越して次々と現れる歪虚達の前に、限界が近づいていた。そこで神楽が叫んだ。
「これ以上近づけねーっすから高度と速度を落とすんで飛び降りるっす!」
 その言葉に、ハンター達は次々と飛び降りていく。そこに殺到する歪虚達。
「ここがリアルブルー!? すごい動きにくいわねー。でも、目の前に歪虚がいるなら浄化しないとね」
 セリス・アルマーズ(ka1079)が降り立ち、構えを取ろうとするその前に歪虚はもう目前まで迫っていた。その目から次々と光線を発射しようとした時だった。次々と銃弾が飛び、その前に撃ち抜いていく。
 銃弾が発射された方向を見れば、そこには冬樹 文太(ka0124)が居た。
「こっちは任せとき」  にっと笑う冬樹に、セリスの心にも火がつく。
「私の装甲はCAMみたいに脆くないわよ?」
 巨大な盾を構え、歪虚達の攻撃を次々と跳ね返し、逆に歪虚をもう片方の手に持ったライフルで撃ち抜いていく。
 そしてセリスは前に進み始めた。狙うはこのおびただしい量の歪虚達を生み出している根源、巻き貝の様な形の歪虚。
 それに対しそうはさせまいと、いや、この歪虚達の思考は人には理解できないが、小型歪虚達が押し寄せてくる。
 そこにセリスの背後から再び銃弾が飛ぶ。その弾丸は正確に歪虚の目を撃ち抜き、その攻撃を止める。しかしそれは冬樹の物ではなかった。
「これで攻撃に多少の隙間が出来れば……!!」
 セリスの居る位置から実に50メートル近く離れた場所、そこにアメリア・フォーサイス(ka4111)が居た。彼女は施設を遮蔽代わりにして銃をしっかりと構え、呼吸を整え反動を受け止めるように銃弾を撃ちこんでいく。
 そしてセリスの元へとフェイル・シャーデンフロイデ(ka4808)が走りこんできた。彼は近づくやいなや持っていた苦無をばら撒く。一気にばら撒いたそれだが、その一発一発は正確に歪虚達を斬り裂いていった。
 その結果を確認する前に、彼は地に降りたかと思ったらすぐに走り始める。狙う場所へのタッチダウンを目指し、じわりじわりと前線を押し上げていくハンター達。

 一方、ハンター達を下ろした神楽は揚陸艇を再び進めていた。そして彼の視界に目当てのものが入ってきた。
「ロッソ所属の義勇兵の神楽っす。現在強襲型を駆逐する作戦中なんすけどコイツを守る戦力が足りないんで協力願うっす」
 目当ての軍人達に出会うとすぐにIDカードを示し、味方であることをアピールする神楽。しかしその必要は無かった。
 ドームの入り口からJとパティが出てくる。彼女の協力要請に従った軍人たちがここに居たのであった。ならば何も言う必要はない。
 パティは符を投げ上げる。するとこの月面の大地からマテリアルが神楽の、Jの体に流れ込んでくる。
 その力の試運転とばかりにJが手を振れば、目の前に光の三角形が現れその頂点から発射された光線が次々と歪虚を撃ちぬいていく。
 そしてハンター達は軍人とともに進む。


「いやー。リアルブルーってどんな感じかなーって参加してみたけど、ずいぶんと変わってるんだねー? あはは」
 一方ドーム内ではラン・ヴィンダールヴ(ka0109)がそう独りごちていた。気になった方へ進んでいった結果がこれだった。目の前には人の理解の範疇を超えた敵達に狂乱している兵士たち。そんな彼らにはもはや敵味方の区別は付かなかった。容赦なく撒き散らされた銃弾が容赦なく彼の体も削っていく。
「あぁ、うん。じゃ、とりあえず仕事をしよっか」
 が、彼らは敵ではない。ランは素早くロープを取り出すと銃弾をかわしながら駆け寄り、それで兵士たちの体を拘束していく。
「たぶん後で誰かが何とかしてくれると思うから、しばらくおとなしくしててねー?」
 そして彼は懐から何やら注射器を取り出し、それを兵士の体に刺す。するとあれだけ抵抗し暴れていた兵士の体はおとなしくなった。
 彼が投与したのは連合軍製の精神安定剤だった。人の常識を超える的に、人はあくまで人の力で立ち向かう。
「殺したほうが楽なんだけどねえ」
 その頃別の場所ではリカルド=イージス=バルデラマ(ka0356)が狂乱した者達に向かいながら愚痴っていた。彼我の判断が付かなくなり襲いかかる兵士を巧みに裁くと、掌に力を込めて固め、かわしざまに顎先にそれを叩き込む。脳が譲れ膝から崩れ落ちる兵士の頭を掴むとそのまま投げ倒して拘束した。
「おお、見事なもんじゃ。……死んでおらんかのう」
「万一の時は医療班に任せるかねコレは」
 リカルドの技量に千鳥も舌を巻く。そんな所に襲い来る別の狂人。
 しかし千鳥はそれを舞い踊るようにひらりとかわすと首筋に手刀を一閃。これでそのままうつ伏せに倒れて動かなくなった。千鳥もまたこう見えても格闘士であった。

「突入は傭兵の本分だ、任せときな!」
 一方ドーム奥深く、歪虚とハンター達との最前線にエヴァンス・カルヴィ(ka0639)が居た。
「リアルブルー! 歓迎パーティーとは嬉しいよね!」
 そんな彼とチームで央崎 枢(ka5153)が動いていた。
「ほいほーい、ついにリアルなブルーとやらに戻って来られたのですねー」
 さらにエヴァンスに付き従う様に小宮・千秋(ka6272)が出る。クリムゾンウェストの者が2人にリアルブルーの者が1人。彼らが転移してからこれまでしてきたことの結晶の様なスリーマンセルが歪虚とぶつかり合うその場所に踊り出る。
 大剣を手にしたエヴァンスはその太く分厚い剣を振り回していく。それで出来た小さなひびに央崎が飛び込む。
「流れ弾は怖くねぇ。思い切り援護してくれ!」
 兵士たちは戸惑いながらも前にいる歪虚に向け弾幕を張るが、これでは央崎にも巻き込まれてしまう。
 しかし彼は持ち前の高速機動でかわし、銃弾との共演を見せる。
 それに対しあくまで物量で押し切ろうとする歪虚達。
「私御主人様のためでしたら例え火の中水の中ー」
 しかしエヴァンス達へ放たれた攻撃は千秋がその体を張って食い止めていた。

「ぶるあぁぁぁあ!!」
 その頃別の場所、造船ブロック近くでは叫び声と剣風の嵐が巻き起こっていた。その中心にいるものの姿は赤褐色の岩の如し。
(場所は変われど、やることは変わらぬ。ただ、戦い抜くのみ)
 そこに立つバルバロス(ka2119)の考えはシンプルだった。巨大な斧を振り回し、一つでも多くの歪虚達を叩き潰す。
 そこに来た誠堂もその隣に立ち、歪虚に立ち向かう。
 その斧と刀が次々と歪虚達を切り払っていく。しかし無尽蔵とも思える数の前に二人も無傷では済まない。
 だがそこにウナギパイが来た。集まってきた歪虚を撃ちぬくと盾を構えて前に出て引き受ける。
 それで攻撃が少し和らいだ。二人は体内にマテリアルを回す。すると傷が塞がっていく。これで戦い続ける力を取り戻した二人は再び歪虚に立ち向かう。
 その時だった。彼らの後ろから、銃を持った兵士が近づいてきた。しかしその目は虚ろである。そのまま銃を構え、敵味方構わず乱射する。
 それをウナギパイは食い止め抑えると、その体に触れマテリアルを送り込む。すると錯乱していた兵士はおとなしくなっていった。マテリアルが起こした奇跡。
 そして一帯が柔らかい光に包まれる。すると兵士も、バルバロスも、誠堂も、受けた傷が消えていった。

 無限は突入して依頼ずっとドーム内を文字通り駆けずり回っていた。戦況が悪いところをその足で探しだし、そこに人を呼ぶ。今全ての通信機器はジャミングがかかっている。かなり接近しないと戦況を伝えることが出来ない。この状況で頼りになるのはその足だった。
 それを受けてシャーリーンは兵士たちに行動をハンドサインで指示する。こういうことは同業者であるだけあってお手のものである。そして彼女自身は別の敵に向かっていった。歪虚達が集まり、人型を取っている。
 彼女が射撃し、人型歪虚が反撃を行う、その前に光の矢が飛び腕を吹き飛ばした。魔力の力による光の矢が正確に敵に誘導され撃ちぬいていく。
「たまにはカッコいい私がいたっていいじゃないですか。ねえ?」
 その魔法の主はエスカルラータだった。彼女は連携で先手を取った後、そう一人つぶやいていた。

 葛音は先へ進む。廊下を走る彼にまとわりつくように触手を伸ばし襲いかかる歪虚達。しかしその触手はことごとく空を切り、その隙にステラが斬撃を叩き込む。連携は完璧だった。
「あぁもう、数だけは多いんだから……っ!」
 しかし彼女が思わずそう言ってしまう程、敵の量にはきりが無かった。少しずつ、少しずつだがハンター達の間に焦燥の空気が漂い始めていた。


 狂乱した兵士達が見境なしに襲いかかる。しかし理性も技もなく、本能のままに行われる攻撃など小夜の刀の前では恐れるに足らぬ物だった。最小限の動きで受け止め、弾き返す。
 そして彼女がほんの少し体をずらした所に青白いガスが広がる。それで兵士は糸の切れた人形のように倒れ伏した。穏やかな寝息を立てて眠っている。再び目を覚ました時には精神は元に戻っているだろう。
 別の兵士はクローディオがその精神を治癒し落ち着かせていた。これで再び狂気に陥る事は無いだろう。
 小夜に取って敵は与し易い相手だった。数は多いが今のところかすり傷を受けた程度。その光線も彼女を捉えることは無かった。しかしいつまでもこの状態を続けているわけにも行かない。そこで叫ぶ。
「私も死にたくない、みんなも死にたくない! 生き延びるために固まって殺せ!」
 兵士が狂乱にとらわれることが無いよう、その声で鼓舞する。だが何より彼女の戦いそのものが兵士達の心を鼓舞していた。
 そして彼女は強力な敵個体へと向かっていく。この状況を打破するためには大将首を取るしか無い。だから兵士を信じ言葉を続ける。
「援護よろしく! 私たちはこいつらを殺せる!」
 その言葉に兵士達は一斉に射撃する。それで出来た細い細い穴を駆け抜け、彼女は向かっていった。
 ドーム入口近く、今まさに光線を放とうとしていた歪虚のその目を一筋の矢が貫いたところだった。続けて襲いかかった歪虚をかわすとすかさず太刀を抜き斬り捨てる。ジャックはこの位置で歪虚と戦い続けていた。
 そこに歪虚達が押し寄せる。しかし、風が吹き抜けるとそれは刃と化し、歪虚達を斬り裂いていった。
「ジャックさん、その背中の言葉は何なの?」
 その風の刃を作り出したリンカがジャックに声をかける。それに対し彼はこう答えた。
「この背中の文字を見て、敵意を持つヤツは居ないって話だぜ」
 そのジャックの背中には、大きな文字で「LOVE&PEACE」と書かれていた。

「僕の手が届く距離で、誰にも手は出させませんっ」
 葛音は前線で歪虚を翻弄していた。その高速起動を前になかなか攻撃は当たらない。しかし何分物量が半端ではなかった。
 葛音とステラの二人は疲労の色を隠せない。二人は、特に葛音は既にそれなりのダメージを受けていた。いつまで続くのか……。そんな時だった。
「こっちへ来てくれ!」
 男の声に引かれ向かってみるとそこには兵士達と共にレイオスが居た。そして彼は二人に簡単に作戦を伝える。
 次の時には、レイオスが一人で飛び出していった。彼は炎のようなオーラを身にまとう。それに惹かれ集まってくる有象無象の歪虚達。だがそれが殺到する直前、代わりに銃弾の雨と剣戟の嵐が降り注いだ。
 作戦はこうだった。レイオスが囮として惹きつけ、そこに待ち伏せしていた兵士達と葛音、ステラが攻撃を仕掛ける。
 レイオスが惹きつけてくれている相手を斬ることなど、ここまで傷ついていても葛音には容易いことだった。そしてそんな彼をステラも的確に後方からの射撃でサポートしていく。
 そして敵の波が引いていったところで、レイオスが飛び出した。敵の中央に飛び込むとそこで手にした刀を振るう。薙ぎ払われた一撃の前に次々と歪虚達は消滅していった。


 ドーム中央ではリカルドがひときわ大きな、人型の歪虚に立ち向かっていた。拳銃で牽制した後、巨大なマチェットナイフを抜いてまず関節に当たる部位に斬りつけ、返す刀で本命の一撃を大上段から振りかぶる。
 しかしそれは人の理とは別の存在、それを難なくかわすと戯れるかのようにリカルドの体を突き飛ばす。それだけで彼は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
「VOIDを爆発させます! 音を目印に一斉射撃を!」
 その時アシェールが協力を要請した兵士達にそう指示をしていた。彼らは歪虚を目視すると狂気に陥る危険性がある。ならば見ずにやってもらうしか無い。
 そして彼女は傘を構え、一歩前に出る。続けて放たれた桃色の光弾はひときわ大きな歪虚に直撃したかと思うと、耳をつんざく音とともに爆発する。それに続いて発射音が鳴り続け始めていた。それをまともに受ければさしもの歪虚もその姿を保っていることは出来ない。
 作戦が上手く行ったところで、兵士達はアシェールの姿をジロジロ見ていた。彼女はそれに気づき
「傘を持った武者鎧姿って、この世界では珍しいのかな?」
 そう感想をつぶやいていた。


 その頃、ドームの外側でも戦いは続いていた。
 小型の歪虚に冬樹が弾幕を張って押しとどめる。しかし戦況は一向に変わらないままだった。
「こんな中途半端な所で終わって、堪るかよ……!」
 素早くドームの影に隠れ、マガジンをチェンジしながら冬樹は忌々しげにそう吐き捨てた。
「よし、ちょっとした賭けだが俺が行く」
 その時、フェイルがそれだけ伝えると突如として飛び出していった。当然それに引き寄せられるように歪虚達が集まってくる。しかしフェイルはそのスピードを緩めること無く、一直線に向かっていく。明らかな自殺行為。
 しかしその時だった。一帯が光に包まれた。そしてそれが晴れた時、あれだけ居た歪虚は消え失せ、代わりにセリスがそこに立っていた。彼女の起こした奇跡がまとめて薙ぎ払っていた。
 そしてそれにフェイルは言葉を送ること無く走り続ける。感謝の気持ちはあるが、今はそれを示している時ではない。速度を落とさずドームの壁に脚をかけると、そのまま地面と水平になるまで体を倒して壁を駆け上り始める!
 その視線の先に居たのは巻き貝の様なそれ。今ドーム内にその身を突き刺し、あちこちに歪虚を打ち出し続けている元凶。
 そしてフェイルは飛ぶ。ドームの壁を蹴って高々と飛び上がり、空中で体勢を変えて手にした刃を歪虚に叩きつけた。
 宙に舞ったフェイルの体が少ない重力に引かれゆっくりと地面に向かって舞い落ちてくる。その時、彼に刃を突き立てられた歪虚はゆっくりと崩れ、その身が剥がれ落ちていった。
 その様子を音子が見ていた。彼女は場所をメモするとすぐさま支援に戻る。彼女は戦いが終わった後のことを見据え、補修を一秒でも早く行うためにこのことをしていた。
 一方別の方向では、J達が銃で支援しながら火力を集中していた。兵士達は張り付いている歪虚に銃弾を集める。
 しかしその場所はドームの頂上近く。なかなか上手く届かない。
 J達自身は兵士達を守るように、そこに襲い掛かってくる歪虚やその狙っている歪虚自身からの攻撃を受け止めていた。
「パティも行くんダヨ」
 歪虚達が集まってきたその時、パティは符を3枚まとめて投げ上げた。するとそれは空中で稲妻と化し降り注ぐ。その電撃が次々と歪虚達をまとめて焼き払った。
 その時だった。歪虚から放たれた光線が彼女の体を貫く。痛撃を受け、たたらを踏む。顔には苦痛が浮かぶが、それを笑顔で隠して戦いを続けようとする。
 しかしその次の瞬間、続けざまに放たれた光線が彼女の体を通り抜けた。空中を飛び、今ドームに突き刺さろうとしていた歪虚が行きがけの駄賃とばかりにパティを焼く。その衝撃に彼女の体はダンスを踊るように宙を舞い、そして地上の1/6の重力に惹かれてゆっくりと地面に落ちた。
 Jは思わず声にならない叫びを上げてしまう。しかし今は止まっている時ではなかった。彼女は銃弾と、光線で歪虚達を払っていく。
 そしてシェラリンデが飛び出した。少ない重力で滑るように接近し、その刀を歪虚の目、パティを倒した光線を放ったそこへと突き立てる。一つだけではない、何度も何度も突き立てる。そして触手を斬り払い、その歪虚を自壊させていった。
 アメリアは呼吸を整えていた。その小さなターゲットに照準を合わせトリガーを引く。一発撃つだけでも膨大な集中力を要し消耗も激しい狙撃だが、彼女はずっとこれを繰り返していた。
 彼女が狙うのは高い位置に張り付いていた、つまりJ達と兵士が狙っていた歪虚だったのだが、その中でも彼女はそれがドームに張り付くために使っている触手一本一本に狙いを合わせていた。一つづつ切り離されていく触手、その事に歪虚自身は気づいていただろうか。
 そして運命の一発が飛んだ、それがまたも触手を貫いた時、とうとう重みに耐えられなくなったのか、歪虚の体はゆっくりとドーム壁面から外れ、そして落ちていった。
 細い糸をたぐるようにハンター達は好機を引き寄せ、戦いは少しずつ人類側に傾いていた。


 エヴァンス達は廊下を駆け抜けていた。彼はそのトレードマークでもある大剣を納め、代わりに刀を抜いて歪虚達を斬り捨てていった。
 そして突き進んでいくのを急にブレーキをかける。角を曲がる瞬間に止まり、今度は央崎が前に出る。ゴーグルを掛け直し、飛び出す前に一言。
「メデューサの話は知ってるかい?」
 疑問を聞き直す前に彼は反対側の壁を蹴る。
「ソイツ、こーやって位置を頼りに倒されたんだってさ」
 ゴーグルの内側には死角に居るはずの敵の情報が映っていた。そこに向かって正確無比に飛び、剣を一閃。それで斬り捨てられた。
 しかしその時だった、後ろ側、通気口から飛び出してきた歪虚がエヴァンスの背後を奇襲する。
 だが、エヴァンスの体は傷を受けなかった。なぜなら。
「御主人様の身、守れましたよ……」
 そこには千秋が居た。歪虚の攻撃をその身でまともに受け、そして彼の体は沈んでいった。
「死ぬんじゃねぇぞ!」
 怒りを爆発させ、エヴァンスは刀を振るう。文字通り歪虚達を一網打尽にしながら、彼は戦いを終わらせるためにその刀を振るい続けていた。

 ジャックは獅子が如き雄叫びを上げる。それに引き寄せられるように歪虚達が集まってくる。
 しかしおびただしい数の光線と触手を浴びせても、彼が倒れることはなかった。その盾一枚で彼は防ぎきっていた。背面から襲ってくるものがいればクローディオが声をかけ、そして二人は銃で歪虚に立ち向かう。
 そこに突然飛び出してくる影があった。ユーロスだった。利き手に刀、逆手に拳銃。その二つで歪虚を払っていく。そして叫ぶ
「あそこだ!」
 彼が指差した先にはドームの壁を突き破った歪虚の姿があった。今まさに歪虚を生み出そうとしている。
 兵士達はすぐさま反応して銃弾を浴びせる。そしてその雨の中、小夜が飛んだ。
 一足で壁までの距離を飛び、その刀を構える。そして歪虚達を掻い潜り、その刃を飛び出しているそこに突き立てた。
 急所に受けたのか、その一発で歪虚の体は再び宇宙空間へと飛ばされていった。


 もなかはまだモニター室に居た。あれほど居た歪虚達も、元凶が絶たれたことによって数を減らしていき、今は実に静かなものだ。少なくともこのドームの制圧は完了したと言っていいだろう。
 その時、彼女の目の片隅に月面を歩く女性の姿が写った。見た目だけなら美しい女性だ。だが、美しい女性であることが分かることがまず異常だった。彼女は宇宙空間を、生身に布一枚だけを纏った姿で歩いていたのだから。
「戦うための知識も持たぬ者との戦いなど不公平かと思ったが、なるほど、これでフェアになった」
 彼女のその機械のように感情のこもらない言葉はもなかには聞こえない。
「マクスウェルには悪いが、これで公平な戦いになる」
 そして彼女は手に持っていた天秤を揺らした。その時、彼女の姿は黒い光りに包まれ、そして消え失せた。

担当:cr
監修:神宮寺飛鳥高石英務
文責:フロンティアワークス

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