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【蒼乱】「崑崙基地防衛戦B 月面戦闘」 リプレイ

作戦1:月面戦闘 リプレイ

リュミア・ルクス
リュミア・ルクス(ka5783
雨月彩萌
雨月彩萌(ka3925
フォークス
フォークス(ka0570
魔導型デュミナス
魔導型デュミナス(ka0570unit001
和泉 澪
和泉 澪(ka4070
Centurion
Centurion(ka4070unit001
セレン・コウヅキ
セレン・コウヅキ(ka0153
クラーク・バレンスタイン
クラーク・バレンスタイン(ka0111
シン・コウガ
シン・コウガ(ka0344
アニス・テスタロッサ
アニス・テスタロッサ(ka0141
魔導型デュミナス
魔導型デュミナス(ka0141unit001
ミグ・ロマイヤー
ミグ・ロマイヤー(ka0665
岩井崎 メル
岩井崎 メル(ka0520
メトロノーム・ソングライト
メトロノーム・ソングライト(ka1267
Astarte
Astarte(ka1267unit001
レホス・エテルノ・リベルター
レホス・エテルノ・リベルター(ka0498
天央 観智
天央 観智(ka0896
チョココ
チョココ(ka2449
キアーラ
キアーラ(ka5327
OFCAM-BLACKBEAR
OFCAM-BLACKBEAR(ka5327unit002
グレイブ
グレイブ(ka3719
アースフィア ケイネグ
アースフィア ケイネグ(ka3487
ティリル
ティリル(ka5672
アリア ウィンスレッド
アリア ウィンスレッド(ka4531
榊 兵庫
榊 兵庫(ka0010
アーシュラ・クリオール
アーシュラ・クリオール(ka0226
●艦隊再編
 月面基地崑崙の艦隊は絶体絶命の危機に陥っていた。
 テレーザ級が2隻、アガタ級が5隻沈み、周囲に残っているのはテレーザ級1隻とアガタ級3隻。
 対する敵は母艦級がまだ3体以上いる上、内1体がこちらに接近してきている。
 CAM部隊が応戦してくれているが、足止めすらできていない様子だ。
 ここまで戦況が悪化したのは強力なジャミングで各艦及びCAMとの連携がとれないためである。
「このままでは崑崙が蹂躙されるのも時間の問題だ……」
 テレーザ級の艦長が絶望的な面持ちでモニターを睨みつける。
 だが、どこからか多数のCAMが飛来し、次々と歪虚を葬り始めた。
「な、なんだあの部隊は?」
『ザザッ、ザザザ……』
『ブブッ、ザッ……』
 そのCAM部隊から通信もきたが、ジャミングでノイズしか聞こえない。
 外観がオリジナルなディティールの機体もあり、正規軍とは思えない。
 だが恐ろしく強い。
 全員がベテランパイロット以上の動きをしている。
 モニターに注目していると、不意にデュミナスが大写しになった。
「うぉ!」
 クルーが驚く中、そのデュミナスが持っている盾を指差す。
 そこには。
『CAM型 ヒキウケル』
『カンタイ シュウゴウ』
 という文字がデカデカとペイントされていた。
 続いてデュミナスが別の方向を指す。
 おそらくそこに集合しろという事なのだろう。
「……どうやら敵ではないらしいな」
 艦長は迷ったものの艦隊集結は理にかなっているため、未知の味方に従う事にした。

「あ、動いてくれた」
 リュミア・ルクス(ka5783)はテレーザ級が自分の指示した方に動いてくれて安心し、続いてアガタ級にも盾のペイントを見せて指示をする。
 するとアガタ級も指示通りに動いてくれた。
「思った通り! 通信が使えないなら、文字で伝えればいいんだよ!」
 物凄く単純な理屈だが、それを思いつき、且つ実行したのはリュミアだけで、しかもそれが実に効果的だった。

 雨月彩萌(ka3925)はちらりと地球を見た。
「地球に帰ってきたんですね。ですが故郷に帰ってきた、というのにあまり感慨がないのは不思議です。やはり歪虚という異常が存在しているからでしょうか?」
 月の周りには異形の歪虚が幾つも見える。
「行きますよ、ドミニオン。ちゃんと帰ってきたと安心する為に。わたしの正常を証明する為に。敵を殲滅しましょう」
 彩萌はスナイパーライフルを構えると擬人型を狙ってトリガーを引く。
 105mm弾は胴体を直撃したが、敵はまだ健在だ。
 更にもう1発放ったが、敵は被弾しても構わず接近してきた。
「異常は今すぐ消えてください」
 『アクティブスラスター』で距離を取りつつマシンガンで弾幕を張って敵の足を止める。
 そして動きの鈍ったところで再びスナイパーライフルで狙撃。
 頭を撃ち抜かれた擬人型は塵となって消滅した。
「これでまた1つ私の正常が証明されました」
 彩萌は正常でない事を呟きながらリロードすると、次の標的に狙いを定めた。

(軍隊風情が、あたいの時は助けなかったクセに……)
 フォークス(ka0570)は心の中で毒づきながらもその軍隊を助けるために戦っていた。
 友軍のCAMを圧倒している擬人型にスナイパーライフルで狙撃。
 直撃を受けた擬人型の動きを鈍り、対していた友軍機が近距離からライフルを乱射する。
 だが仕留め切れず、反撃の剣で斬り裂かれた。
「なにやってんだ!」
 フォークスは『アクティブスラスター』で擬人型を強襲してCAMソードを突き立てた。
 その一撃で擬人型は霧散する。
「大丈夫か?」
 友軍機の様子を見る。傷は深いがコクピットには達していないようだ。
「もう戦えないなら伝令を頼む」
 フォークスは接触回線で、残存艦を崑崙へ集結させて一時的に艦隊を作るよう伝えた。
 友軍機は素直に従い、テレーザ級の方へ向かう。
「軍隊風情が……」
 フォークスはもう一度毒づくとスナイパーライフイルを構え、再び友軍機の支援狙撃を行った。

 和泉 澪(ka4070)は月面に降下するとクレーターの稜線でデュミナスを伏せ、眼前にシールドを突き立ててスナイパーライフルの銃身を乗せる。
 これで機体前面をほぼ隠したまま攻撃ができる。
 澪はアガタ級に迫る小型の浮遊型に照準を合わせてトリガーを引く。
 105mmで撃ち抜かれた浮遊型は一撃で四散して消滅。
 消滅を確認するとすぐに次の標的を捉えて狙い撃つ。
 そうして艦隊に迫る敵を端から狙撃し続ける。
「戦う場所が変わっても、私は私に出来る事を実行するだけです!」

「久し振りの帰郷にゆっくりさせてくれる時間もくれませんか……」
 郷愁に浸る間もなく出撃させられたセレン・コウヅキ(ka0153)は友軍のCAMでは対処が厳しい思った擬人型を狙ってアサルトライフルを放つ。
 銃弾を受けた擬人型は体液を噴出しながらもビームで反撃。
 セレンは回避しつつも照準は擬人型から外さず、トリガーを引き続ける。
 幾つもの弾痕を穿たれた擬人型はやがて消滅した。
「まず1体」
 デュミナスの頭を廻らせて索敵すると、友軍機と格闘戦中の擬人型を発見。
 すぐにライフルで頭を狙い、ヘッドショット。
 頭部を損壊した隙に友軍機が胴を薙ぎ、擬人型を消滅させる。
「友軍の被害が多ければ、それだけ新たな擬人型を増やす材料にされかねません。それにやっと戻ってきたこの世界。私の前でもう誰も死なせたくはない……!」
 セレンは次の擬人型を見つけてライフルを正射。
 すると先ほど援護した友軍機も同じ擬人型を攻撃し始める。
 どうやら共闘してくれるらしく、セレンは思わず微笑を浮かべた。
「機体はともかく、私自身はそこまで強くはありません。ですのでリアルブルーの先輩方、頼りにしていますよ」

「転移は成功っぽいがやっぱり即戦闘か……状況も芳しくないしな……」
「だからこそ急がなければいけません。2人だけですが、コウガさん。【CdL】隊、いきますよ? アニスさんも、今回はよろしくお願いしますね」
 クラーク・バレンスタイン(ka0111)は愚痴るシン・コウガ(ka0344)を窘めながらアニス・テスタロッサ(ka0141)にも声を掛ける。
「そうだな。ここからいつも逆転してきたのも俺たちハンターだ」
「任せな。このうっとおしいジャミング晴らしてやるぜ」
 コウガがアニス前衛として先行し、クラークはデュミナスと127mm対空砲を専用アームで固定すると、支援砲撃体勢に入った。
 そして2人が狙いを定めた擬人型を砲撃。
 127mm砲弾を喰らった擬人型は半身が吹っ飛んだ。
「おや、一撃では倒せませんか?」
「いや、十分さ」
「こいつも一緒に喰らいな!」
 コウガがアサルトライフルで、アニスがマシンガンで銃弾を浴びせ、残る半身までボロボロにされた擬人型が塵となって消滅する。
「連携すればいけそうですね。とはいえ厄介な状況には変わりありません。油断せずに行きましょうか」
 3人はクラークの砲撃を主軸とした戦術で次々と敵を倒して進み、戦場の真ん中あたりまでやって来た。
「しばらく動けねぇからカバー頼む!」
 そこでアニスが足を止め、レーダーに注目する。
 今から事前に頼んでおいたロッソの強力なレーダー探知が始まるのだ。
 アニスはそのレーダー波とジャミング波のぶつかった歪みの見てジャミングの発生源を探ろうとしていた。
 本当は光信号を合図にやってもらうつもりだったが、戦闘光が多数ある中では識別が難しいため、時間指定にされたのだ。
「正直ベアトリクス自体も怪しいが外れの場合もあるからな。用心するに越した事はないか……」
 コウガが呟きながら索敵していると、足を止めれば格好の的なためか敵が次々と迫ってくる。
 クラークは先頭の浮遊型を砲撃して一撃粉砕。
 コウガもライフルで弾幕を張る。
 だが数が多いため、弾幕を掻い潜った擬人型が剣を振りかぶってコウガに迫る。
「ちぃ!」
 コウガはCAMブレードで辛くも受け止めた。
「コウガさん!」
 クラークは動きの止まった擬人型にマシンガンを連射。
 背中に銃弾を受けて怯んだ隙にコウガがブレードで両断する。
 だがその間に浮遊型がクラークの対空砲に取り付いた。
「ここまで大きいと取り付かれやすいですか?」
 クラークはデュミナスの腕に展開させたプラズマカッターで浮遊型を切り裂いて引き剥がす。
 しかし敵はまだまだいる上、かなり接近されている。
 クラークはマシンガンで弾幕を張り、弾幕を抜けてくる敵はコウガがブレードで斬ってゆく。
「今までは射撃戦主流だったが……近接戦も行けるんじゃないか俺?」
 そんな風に酔いしれるぐらい斬った時、ようやくロッソからレーダー波が飛んだ。
「きた!」
 アニスが食い入るようにレーダーを見つめる。
 だが、レーダーの波は大きな変化を起こす事なく宙域を流れた。
「これは……どういう事だ?」

 一方、ミグ・ロマイヤー(ka0665) もジャミングの発生源の特定を行っていた。
「恐らくはこの辺にいるんじゃなかろうかの」
 ミグは適当な場所まで来ると『電波増幅』『連結通話』を魔導短伝話に使用し、ロッソにいる間に指定しておいた他の伝話に通信を送った。
 ミグはジャミング専門の歪虚が複数体いると推察した。
 複数体いればジャミング帯域には濃淡が現れるため、通話の感度の差から発生源の位置を探り出せると考えていたのだ。
 しかし結果はどの通話も同じような感度だった。
「どういう事じゃ……?」
 結果を鑑みれば発生源は複数ではない。極少数である。
 そしてそれができそうな個体は1つしか思い当たらない。
 しかしジャミングの範囲は何十キロにも及んでいる。
 仮にこのジャミングをたった1体の歪虚が起こしているとすれば。
「とんでもない存在じゃのう……」
 ミグは敵の力の強大さに戦慄を覚えるのだった。

 ジャミングの発生源の特定はできなかったが、リュミアがペイントシールドを持って飛び回り、ハンターと友軍機が防戦したお陰で艦隊の再編成は速やかに完了した。
 だがジャミングで通信ができないため組織的反攻はまだ難しい状況だ。
 テレーザ級の艦長もそれは分かっており、他艦との連携をとる方法を模索していた。
「艦長さーん、いらっしゃいますか?」
 そんな折、1機のドミニオンが接触回線で通信を送ってくる。
「テレーザ級は崑崙防衛の旗艦をお願いします。そして脱出する皆さんの進路を確保する為、艦隊は少しづつ前線へ移動してください。これでよければ他の艦にもこの事をお伝えしますけど」
 どうやらこのドミニオンは連絡機役をしてくれるらしい。
 まさに渡りに船である。
「頼む!」
 艦長は快諾すると他の細かい指示も伝えた。
「承りました」
 テレーザ級の艦長から指示を受けた岩井崎 メル(ka0520)はアガタ級へ飛び、艦橋に取り付いた。
「お疲れ様です、テレーザの艦長さんからお手紙です」
「手紙?」
 アガタ級の艦長は何の事か分からず最初戸惑ったが、内容を聞いてすぐに指令書だと理解する。
「了解した、こちらは右翼を……危ない!」
 艦長は返答している最中、メルのドミニオンの背後に強襲型が迫っているのに気づいて叫ぶ。
 メルは機体を回頭させて盾で突進を防ぐ。
 衝撃で両機は弾かれたが、メルはすぐに体勢を立て直してアガタ級の船体に着地。
 まだ体勢を崩している強襲型にガトリングガンを放つ。
 アガタ級も対空機銃を放ち、無数の弾丸を浴びせられた強襲型はミンチになって霧散した。
「大丈夫か?」
「はい、ご安心ください。これくらい、妻ですから」
「妻?」
 意味が分からない。
 だが、このおっとりした声音のパイロットが凄腕なのは確かだ。

 メルはその後も連絡機として艦の間を飛び回った。
 みんなで大成功をもぎ取るために。
 だから出会った友軍機にも通達と協力をお願いする。
 自分一人の力では絶対に出来ないから。
「協力は私たちのちからですから」

 その頃、リュミアも盾のペイントと身振り手振りで情報伝達に勤しんでいた。
「君は向こう。アナタはあっちー!」
 後に友軍パイロットが『盾を看板のように掲げて指示する姿は水先案内人のようだった』と語っている。

 メルとリュミアの働きで艦隊の再編と伝達がスムーズに進んだのは間違いない。
 この戦域を裏から支えた陰の功労者と言えるだろう。

●人命救助
 こうして再編された艦隊は反攻を開始。
 ロッソのCAM隊の協力もあってジリジリと敵を追い返し始める。
 それでようやく救助隊が月面に降下できるようになった。
 しかし友軍のCAMは攻撃に手一杯なのか、救助艇しか出ていない。
 メトロノーム・ソングライト(ka1267) は救助隊の援護のために月面に降り立った。
「ここがリアルブルー? なんと寂しい……このような地で人が生きているというのですか?」
 慣れ親しんだ自然とはかけ離れた月面に荒涼とした風景と、戦乱の只中でありながら静寂が支配する戦場に対して強い戸惑いと違和感を感じた。
「この不毛の地にも精霊の加護は存在するのでしょうか? とても……とても不安です」
 だがどんなに心細くとも守らなければならない存在が自分の後ろにいる。
「これ以上誰も傷つけさせません」
 周囲を索敵すると小型しか見つからない。
 メトロノームはデュミナスにスナイパーライフルを構えさせると周囲を飛び回っている浮遊型を狙撃していった。

 レホス・エテルノ・リベルター(ka0498)も月面に降下し、救助隊の支援を行う。
「あの時は守れなかった。守れなかったものが、たくさんあったんだ……」
 こうしてCAMのシートに座っているとLH044で失ったかつての愛機の事が脳裏に浮かぶ。
「今の私なら、あの頃よりもやれるはず。やってみせる。待ってて。もうすぐ、もう一度、会いに行くから……!」
 だが今は目の前の事に集中。
 メトロノーム機の死角の位置でマシンガンを放って浮遊型を落としてゆく。

 2人が周囲の敵を掃討してくれている間に天央 観智(ka0896)とチョココ(ka2449)が救助隊と共に救助を行う。
「低重力状態……ですか。理屈としては判りますけれど、ずっと地上暮らしとしては……やはり不慣れ、ですね」
 観智は6分の1の重力下での操縦に苦労しながらも墜落したアガタ級まで辿り着き、ひしゃげたハッチをこじ開けて救助隊を中に誘導する。
 更に傍で大破していたCAMからパイロットを救い、救助艇まで運んだ。

「わたくしも友軍を救助しますわ。不慣れだけど……頑張りますのっ」
 チョココもパイロットを救おうと破損したCAMに向かう。
 だがそのCAMが不意に発砲。
 デュミナスの胸部に被弾し、コクピットが衝撃で揺さぶられる。
「キャー!」
 それでも続く攻撃を『アクティブスラスター』で回避したのは覚醒者の反射神経の成せる業か。
 破損CAMはギコチナイ動きで立ち上がると武器を構える。
 その動きは明らかに人に操縦されてのものではない。
「うわわっ!」
 チョココは嫌悪感を感じて反射的にスナイパーライフルを構えた。
 だが距離が近すぎてすぐ懐に入られ、剣で斬りかかられる。
「危ない!」
 咄嗟に観智が割って入って魔導鈎で受け止める。
 そこでレホスとメトロノームも異変に気づいた。
「寄生体!?」
「倒すしかありませんね」
 2人は擬人型となったCAMに発砲。
 観智もアサルトライフルの銃口を胸部に押し当て、0距離で撃ち込んだ。
 3方から銃弾を撃ち込まれた擬人型は塵と化し、消滅した後にパイロットの姿はなかった。
 初めから乗っていなかったのか、それともCAMと共に歪虚と化していたのか。
(ごめんなさい……)
 どちらか分からなかったが、観智は心の中で謝罪した。
「他の機も寄生されるかもしれません。救助を急ぎましょう」

 それから救助が急ピッチで行われたが、しばらくすると再び周囲のCAMが寄生された。
 しかも1体や2体ではなく、次々と起き上がってくる。
「これ以上は救助艇が危険です。後退しましょう」
 メトロノームが苦渋の提案する。
 まだアガタ級1隻分しか救助できていないが、元々全員救助できるだけの人員はいない。
 今は救えた人の命を守るのが大事だ。
 皆もそれは分かっているため異論を唱える者はおらず、CAMで救助艇を護衛しながら後退した。
(もっとこの子を上手く使えるようになりたい。そうすれば、もっと出来る事が増えるはずだから……)
 遠ざかる他の撃沈艦を眼下に見ながらレホスは強く思った。

 撃沈艦から数キロ離れた場所。そこに動力を破壊されて航行不能になっている脱出艇があった。
「ダメです。全く動きません」
「仕方ない。歩いて崑崙まで行くぞ」
「ダメよ。空気は後20分しか持たない。とても辿り着けないわ」
「救援は?」
「来ないよ。あの戦況で救援部隊を出す余裕があると思うか?」
「そんな……」
「せっかく命辛々逃げ延びたっていうのに……」
 クルーが生き残る術はなく、艇内に絶望感が蔓延する。
「こちらロッソ所属、キアーラ。救助にきた」
 不意に接触回線らしい通信が艇内に響いた。
「救助?」
「味方か!」
「やった! 助かったぁ!!」
 殺伐としていた雰囲気が一気に色めき立ち、クルーが艇の外に飛び出す。
 そこには大きな3本爪を装備した黒いドミニオンが立っていた。
「乗って」
 キアーラ(ka5327)は脚部のカーゴスペースを開くとトランシーバーでクルーに呼びかけた。
 クルー達が嬉々とした足取りでドミニオンに群がる。
 カーゴスペースはすぐに一杯になったので、腕や頭や胴体の突起など、乗れる所全てに乗った。
 もし重力が6分の1でなかったら動けなくなっていただろう。
「ありがとう!」
「助かったわ」
「命の恩人だ!」
 クルー達が口々に感謝を述べる。
「いっぱい……褒めて、もらえた」
 『沢山褒めてもらいたい』という動機で救助に来たキアーラは思わず笑みを浮かべた。
 しかし喜ぶのはまだ早い。
「敵だ!」
 クルーの1人が叫び、擬人型が1体接近してくるのが見えた。
 キアーラがマシンガンを向けて撃つ。
「うわぁ!」
 するとその振動でクルーが落ちそうになった。
 派手に動くとクルーが落ちる。
 だが動かなければやられてしまう。
 キアーラが判断に迷ったその時。不意に飛来したライフル弾が擬人型を貫いた。
 見ると、1体のデュミナスがこちらに向かって来ている。

 クレーターで狙撃を続けていた澪は偶然クルーを搬送中のキアーラと擬人型を発見し、支援に来たのだ。
「あなたの相手は私です!」
 一撃当てた擬人型は注意をこちらに向け、キアーラはその隙に逃げてくれている。
 思惑通りだ。
 擬人型はビームを放ちながら接近してくる。
 澪は身を屈めながら盾を翳して受けるとライフルで反撃し、足を吹き飛ばす。
 だが擬人型は片足で跳躍して斬りかかってきた。
 反射的に『アクティブスラスター』を起動。
 機体が急加速し、数瞬前デュミナスがいた場所を剣が穿った。
 澪は急加速のGに耐えながら照準を合わせてトリガーを引く。
 放たれた弾丸は擬人型を頭を射抜き、消滅させた。
 擬人型を倒し終えた澪はキアーラと合流する。
「あの……ありが、とう」
「いえ、皆さんを救えてよかったです」
 そして2人でクルーを全員ロッソまで運んだのだった。

●反攻開始
 その頃、再編を終えた艦隊はこちらに進行中の敵母艦を迎え撃とうとしていた。
 敵母艦は次々と歪虚を排出し全面展開している。
 総戦力で一気に攻勢を掛けてくるものと思われた。

「こちらロッソ所属機、コールサイン・グラム1。厄介なのはこっちが倒すから、貴艦は敵母艦を主砲でぶっ飛ばしてくれ」
 グレイブ(ka3719)がテレーザ級に接触通信を送る。
「久しぶりに戻ってきたけど、宇宙の景色も悪く無いわね……。異物である狂気さえいなかったら、もっと素敵なのに」
 グラム2のアースフィア ケイネグ(ka3487)が遠方の歪虚を不愉快そうに見据えた。
「とにかく中型を落とさないとですね。艦の防御兵器の隙間を埋めましょう!」
「ティリル、今回は強欲王の時とはちょっと勝手が違うよ。数が多いし……ちゃんと分担しないとカバーしきれないからね」
 張り切るグラム4のティリル(ka5672)をグラム3のアリア ウィンスレッド(ka4531)が嗜める。
「おしゃべりはそこまでだ。【ROF】行くぞ!」
「行きましょう…グリンドル。無粋なものを壊しにね」
 グレイブがアースフィアを連れて前に出る。
 アリアはテレーザ級の艦上で狙撃体勢を取る。
 ティリルも『口伝符』を使った連絡役のため艦上に残り、支援攻撃態勢を取った。

 やがて両軍の距離が縮まり、艦隊の対空砲とクラークの127mm対空砲が敵前衛に向けて放たれた。
「伊達や酔狂でこんな127mm砲を担いできてる訳じゃないですからね」
 そして砲撃を抜け敵をスナイパーライフルを持つ者達が狙撃する。
「ロッソ所属、ハンターの雨月彩萌です。貴方がたに当てるつもりはありませんが、わたしの射線上に入った場合は自己責任としてください」
 彩萌はジャミングで通じない可能性が高いが一応警告すると、近くに味方がいようと躊躇なく狙撃してゆく。
「今度はテメェ等が踊る番だ。鉛弾でな!」
 アニスはクラークの隣で苛烈な攻撃を放つ。
「ハンター機は個体能力の高そうな擬人型を優先で。友軍機にはその他を任せる」
 フォークスは狙撃しつつ戦況も見て周りに指示を出していた。
「あーもう、数多すぎ! 擬人型は当て辛いし、小型は邪魔だし、ちょっとは休ませなさいよ! もう!」
「アリアさん、接触回線で聞こえるんですから泣き言言わないで下さい」
 ティリルは甲板を通じて聞こえてきたアリアの声に苦笑する。
「分かってるわよ。でも、楽天家のあたしだって泣き言くらい言うの!」
「気持ちは分かります。でも、私達の弾丸が誰かを救うかもなんですから」
「それも分かってる。だから言った分だけスッキリして敵をぶっ飛ばすわ!」
 アリアは不敵に笑うとライフルをリロードし、次の標的を狙った。

 ここまでの攻防での味方の損害は、ビームを喰らった者が何人かいる程度で撃墜された者はいない。
 対して敵は小型の浮遊型をほぼ駆逐された。
 しかし耐久力の高い強襲型や擬人型は傷を負いながらもまだ多く残っていた。
 そしてここからは敵味方入り混じっての中近距離戦になる。

 榊 兵庫(ka0010)は友軍機と共にアサルトライフルで弾幕を張っていたが、敵が間近まで迫るとCAMソードを構えて飛び出した。
「邪魔だ。墜ちて貰おう!」
 被弾していた擬人型の胴を薙いで断ち、更に機体を捻って隣の擬人型の首も刎ね飛ばす。
 別の擬人型が剣で斬りかかってきたが、ソードで受けると相手の胴を蹴り飛ばして体勢を崩し、袈裟斬りにする。
 だが敵を倒し終えて動きが止まった瞬間、周囲に展開している敵からビーム攻撃を受けた。
「くっ!」
 咄嗟にソードを翳して防いだが機体にも命中する。
 榊はビーム攻撃を続く最中を回避機動で駆けた。
 だが不意にビーム攻撃が止む。
 友軍機とチームを組んだアーシュラ・クリオール(ka0226)が周囲に展開していた敵の更に外側に回り込んで攻撃を仕掛けたからだ。
「初の実戦だけど、よく動いてくれるね、グレン。LH044は護りきれなかったけれど、崑崙は必ず!」
 アーシェラは愛機に語りかけながらアサルトライフルを撃ち放った。
 こちらに気づいた敵が戦力を送り込んでくるが、アーシェラは友軍機に弾幕を張って足止めさせ、その隙に自分は側面に回りこんで攻撃。
 敵がアーシェラに気をとられれば友軍機が攻勢をかける。
 そうして敵を囲い込んで倒していった。
 一方、コウガもクラークとアニスの支援攻撃を受けながら突貫した。
「逆転の機甲兵団参上!」
 コウガは試作CAMブレード「KOJI-LAW」を大上段に構えて跳躍、擬人型の頭上に振り下ろす。
 擬人型は剣を頭上に掲げて防いだが、超音波振動した刃は剣を両断し、そのまま頭部も斬り裂いた。
 しかし一撃では仕留めきれず、擬人型はコウガのデュミナスを殴打して吹っ飛ばす。
「くそっ!」
 機体制御して何とか足から着地するとライフルを放って擬人型にトドメを刺した。
 だがその隙に背後から別の擬人型が剣を振り下ろしてくる。
 振り向きざまに辛くも刀で受けた。
「墳っ!」
 榊が擬人型の背後から剣で刺し貫く。
 コウガも前から刀で貫き、擬人型が消滅する。
「支援感謝する」
「おぅ! 全部駆逐してやろうぜ」
 榊とコウガは接触回線で一瞬言葉を交わすと、互いに次の獲物に斬りかかった。
「ミグもおるぞー!」
 そこにミグも飛び込んできて試作CAMブレードで敵に斬りかかる。
「役立たずのまま終わる訳にはいかんからの」

 こうして擬人型の多くはロッソのCAMに倒されていった。
 だがその分、強襲型の相手はほぼ友軍に任されていた。
 それは友軍機では擬人型の対処は難しいだろうという判断からだ。
 しかし強襲型は中型故に耐久力が高く、なにより高速移動ができた。
 そのため友軍機が倒しきる前に防衛線を突破する個体も多くいたのだった。
 突破した強襲型が目指すのは、崑崙だ。
「アリアさん、強襲型が崑崙に!」
「ちょっと! なんで抜かれてるのよ!?」
 その事に気づいたティリスとアリアがスナイパーライフルで狙い撃つが、落とせたのは2、3体。
 残りが文字通り崑崙を強襲する。
 だがそこにアガタ級が猛スピードで割り込み、その身で強襲型を受け止めた。
 その衝撃でアガタ級の船体が軋み、炎と煙をを噴きだしたが、崑崙は無事だ。
「隊長! アガタ級が崑崙の盾となって多数の強襲型に激突されました!!」
 ティリルが『口伝符』を通じてグレイブに状況を伝える。
「無茶しやがって!! 救援に行くぞ!」
「了解です。行きますよアリアさん」
「もう行ってるわよ!」
 アリアとティリアは『アクティブスラスター』を使って全速で飛びつつ、アガタ級の船体に刺さった強襲型を狙撃する。
 そして船体に辿り着いた後もライフルで潰していったが、別の強襲型が更に突進してきた。
「どれだけ来るのよ!」
 アリアが思わず叫ぶ。
「お前達は後続をやれ!」
 やや遅れて到着したグレイブが刺さった強襲型を斬龍刀で斬り裂きながら指示する。
 アースフィアも甲板に降り立つとナックル「ブレイクフィスト」で強襲型を叩き潰していった。
「ここは任せて退がれ、これ以上は艦が持たんぞ」
「いや、我々はここで崑崙を死守する」
 グレイブがアガタ級に接触回線で警告すると、そんな返事が返ってきた。
「頑固者め」
 そう言いつつもグレイブの口元には笑みが浮かんでいる。
 そこにメルがやって来た。
「テレーザの艦長さんからお手紙です。後3分で主砲を放つ。それまで耐えろ。決して沈むな。です」
 メルはガトリングガンで銃弾を敵にばら撒きながら伝えた。

 長くて短い3分が始まった。
 開戦時は優位だったものの、数では圧倒的に劣るため徐々に押され、被弾する機体も増えていた。
 他のアガタ級もテレーザ級を守るために盾となって傷ついてゆく。
 もちろんテレーザ級も無傷ではない。
 だが、皆3分耐え切った。
 テレーザ級の主砲にエネルギーが満ち、照準が敵母艦に合わさる。
「発射!」
 艦長の号令で白色のマテリアル光が宇宙の闇を切り裂いて進み、敵母艦を貫いた。
 中心部に大穴を開けた敵母艦はその姿を徐々に塵に変えて崩れてゆく。
 やがて最初から何もなかったかのように消え去っていった。
「うおぉぉーー!!」
「やったぞーー!!」
 友軍兵達は沸き立った。
 絶体絶命の状態からまさかの逆転で生還したのだ。
 沸き立たない訳がない。
 そして逃げ始めた歪虚を追撃し始める。
 しかしロッソのハンター達は兵達ほど浮き足立っておらず、冷静に兵達の深追いを制した。
 なぜなら最大の敵であるベアトリクスはまだ健在なのだから……。

担当:真太郎
監修:神宮寺飛鳥高石英務
文責:フロンティアワークス

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