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【反影】

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あいたたた……。大精霊のせいで身体のあちこちが痛い……。
今回も皆には助けられたな。お陰様でなんとかこうして無事生還できたのじゃ。
ダモクレスが消滅し、クリムゾンウェスト大精霊が解放されたものの……。
さて、これからどうなるものか。一休みしたら、また考えなければならぬな。

ハンターズ・ソサエティ総長:ナディア・ドラゴネッティ(kz0207)

更新情報(5月31日更新)

5月31日、【反影】大規模作戦の連動ピンナップが公開!
邪神に対抗する力を得る為の戦い【反影】を、豪華イラストで振り返りましょう!

▼【反影】大規模連動ピンナップ完成!▼

また、これにて【界冥】終了につき、スタッフページも公開致しました。
こちらもご覧ください。
 
 

【反影】これまでの足跡

【反影】ストーリーノベル「反影作戦 ?終末エンドロール?」(4月25日公開)

ナディア・ドラゴネッティ

ベアトリクス

 反影作戦は、ハンターズ・ソサエティ史上最大規模の戦いとなった。
 なにせこの世界から生物が一掃されるかされないかという戦いだったのだ。
 負傷者の数も多く、身体への負担からすぐに転移門を使用できない者のため、サルヴァトーレ・ロッソは臨時の野戦病院として機能していた。
 無論、その設備は下手をするとリゼリオよりも整っていたりするので、皆安心して治療に専念できた。
「全身が負傷や筋肉痛でバッキバキなんじゃが……」
「大精霊を降霊させるってことは、そういうことだって最初からわかってたでしょう? 文句言わないで養生しなさいな」
 病室のベッドに横たわるナディア・ドラゴネッティ(kz0207)の傍で、ベアトリクス・アルキミアが診察を続ける。
「やはり回復力はハンター以上ね。あなた以外に降霊してたら助からなかったんじゃない?」
「じゃからわらわが危険を承知でだな……。ああ、いや。そういえばベアトリクスには助けられたのう。今回は世話になりっぱなしじゃ」
 ニコニコと笑みを返すベアトリクス。
 彼女はそれと望まずとも一時は狂気王として君臨していたので、大精霊というのはそういうものなのかもしれないが……。
「同じ大精霊でどうしてこうも違うのやら……」
『……それはもしや、私と彼女を比較しての発言ですか?』
 ナディアの頭の中には大精霊クリムゾンウェストの声が未だに聞こえていた。
 先の降霊により大精霊と契約状態になったナディアは、“覚醒”することで神の力を行使できるようになった。
 その代償として、常に大精霊クリムゾンウェストと思考がつながりっぱなしになってしまったのだ。
『ベアトリクス、でしたか。私にも自由に動ける機械仕掛けの身体を頂けると助かるのですが』
「彼女、何か言ってるの?」
「自由になりたいと言っておる。わらわもこいつと同居生活は嫌なので、早い所ボディを用意してほしいです」
「トマーゾおじいちゃんに相談はしておくわ。でもそれまでは、二人とも大精霊の力の使い方を覚える練習をしないとねぇ」
「『練習……』」
 頭の中で声が重なる。
 確かに今のままでは大精霊の力を使いこなせない。
 大精霊が力を使おうとすればナディアの身体が破壊される。そして身体がなくなれば大精霊の意識は再び霧散してしまうだろう。
 世界そのものの命とも言える、圧倒的な存在規模の大精霊が、そうであるのに歪虚を駆逐できない理由がここにある。
 大精霊は巨大すぎて、正確に歪虚だけを取り除くようなコントロールはできない。何かを消そうとすると全部消してしまうので、それはなんというか、困る。
「不便じゃな……」
『確かに、今の私に出来るのは星の中核とパスを結び、新たな仇花の騎士を生み出すくらいでしょうか。今のあなたも、仇花の騎士のようなものですが』

カレンデュラ

「守護者というやつか。おぬしは誰でも守護者化できるのか?」
『肉体的、精神的に著しく健全な者しか不可能です。例えば……そう、カレンデュラのような』
 基本的に淡々と乾いた口調で語る大精霊が、その名前を呟く瞬間だけ躊躇いに沈んでいた。
「……のう、ベアトリクス? わらわはしばらく気絶しておったが、あれからカレンデュラはどうなったのじゃ?」
「さあ? 例の戦いの後、私は関知していないわ。ダモクレスという発生源を失った以上、彼女の消滅は確定しているけれど」
 訊くまでもない事だった。
 カレンデュラはもうこの世界にいないだろう。
 まだ消えずに残っていたとしても、いずれは必ず消える運命だ。
「異界とその住人が消滅するペースには個体差があるみたいだから、まだどこかにいるかもね。探してみる?」
『いえ……私は……』
「……別れはもう済ませた、か?」
 ナディアの問いかけに大精霊は応えなかった。
「先の戦い……カレンデュラには本当に世話になってしまった。正直、最初から信じてやれなかった事を悔やんでおる。あやつにはもっと何か、してやれたことがあったかもしれん」
「かもね。でも、彼女は彼女の役割を果たした。私もヒトの感傷に詳しいわけじゃないけれど、大事なのは彼女が満足しているかどうかではないかしら?」
 ベアトリクスはナディアの頭をポンポンと二度軽く撫で、診察鞄を持って席を立つ。
「私はトマーゾおじいちゃんに状況の報告をしてくるわ。また情勢は大きく動くだろうけど、今はお大事にね」
「すまぬな。わらわも流石に……今回はちと疲れた」
 ベアトリクスが部屋の明かりを絞ると同時、ナディアはすっと瞼を閉じた。

トマーゾ・アルキミア

ドナテロ・バガニーニ

南雲 芙蓉

 クリムゾンウェスト大精霊の解放は、すぐにリアルブルーにも伝えられた。
 リアルブルー人にとってはあまりピンとこない話だが、その重要性をトマーゾ・アルキミア(kz0214)や一部の関係者は理解している。
『……えぇと、つまり、世界の神と呼ばれる存在と対話を果たし、その助けを受けられるようになったのであるな?』
 リアルブルーの月面基地崑崙から、トマーゾ教授が通信を送ったのはドナテロ・バガニーニ(kz0213)議長だ。
 モニターの中のドナテロは、かなり使い込んだボロボロのメモ帳を開きながらたどたどしく応じる。
「その通りじゃ。マイナスをゼロにしただけとはいえ、邪神に対する初勝利と言ってよいじゃろう」
『大精霊は、えー……リアルブルー人をクリムゾンウェストから逃がさぬようにしている原因であるな? ということは、もしや……?』
「ああ。転移者がようやく真の意味でリアルブルーへ帰還できるようになるじゃろう」
『おお?! それは素晴らしいであるな! 異世界の英雄たちが帰還するとなれば、皆歓迎して……歓迎……ううむ』
 徐々にドナテロの表情は歓喜から困惑へと変わっていく。
『……トマーゾ教授は、イギリスで発生した強化人間の暴走事件をご存知であるか?』
「報告を聞いてはいる」
『今、強化人間に対する風向きが少し怪しい所である。ひいては統一地球連合軍の信用問題にも発展している。政府はこの問題を可能な限り内内に処理しようとするであろう』
「成程。強化人間よりも優秀でクリーンなイメージの英雄が帰還するのは政府として不都合か」
『我輩も彼らには命を救われた。彼らは大切な友であるからして、無論、そのような論調は払拭し帰還の手続きを進めたいと思う。しかし、今少し時間が必要である』
「案ずるな。どうせクリムゾンウェストの方も、リアルブルー人への呪縛を解除するまでまだ幾ばくか時間がかかるじゃろう」
 フンと鼻で笑いつつも、トマーゾは感心していた。
 なんだかんだと無能も晒したドナテロだが、彼の言動は誠実かつ紳士的だ。
 異世界だの魔法だのとわけのわからない理屈を持ち出されても、それについていこうと必死に勉強しているし、状況を良い方向にもっていこうと努力している。
「存外、傑物かもしれんな……」
『んむぅ? 何か言ったであるか? ああ、そういえばナディア総長が負傷されたとか。我輩からもお見舞いの品をクリムゾンウェストに送っていただきたい!』
「次の補給時までに詳細を決めておけ。月からの補給物資転送時に紛れ込ませてやるわい」
 トマーゾの通信が終わるのを待って、南雲 芙蓉が声をかける。
「大精霊を説き伏せるとは、やはりクリムゾンウェストの覚醒者はただ者ではありませんね」
「ああ。最早奴らはこの手のプロフェッショナルと言ってよいじゃろう。そも、覚醒者の歴史がリアルブルーとは違いすぎる」
「ナディア総長とはお話しをしてみたいですね。その……同じ大精霊様と契約する者として」
 少しだけ申し訳なさそうに声のトーンを落とす芙蓉。
「あやつの相手に難儀しているのはわかる。じゃが、貴様はよくやっている。勝手に他人と自分を比較して卑下するのは愚者のやる事じゃ。貴様は貴様に出来る事をやればよい」
「……はい。その、例の機体――“マスティマ”の件ですが。大精霊様による調整も間もなく終了します。しかし……」
 歯切れ悪くなるのも無理はない。
 この計画は一度は大精霊の拒否により頓挫したものだ。それがここにきて急に態度を変えた大精霊により、順調すぎる程順調に再起している。
「大精霊様には、何か私達とは別のお考えがあるのでは?」
「かもしれんな。わしも星読みというわけではない。未来の事はわからん」
 ある程度予想をして先手を打つことはできるが、結局そのブレ幅を埋めてきたのはハンターの努力だ。
「それでも、マスティマは必要になる……必ずな」
 徐々に邪神ファナティックブラッドに対抗するための戦力は揃いつつある。
 だがそれを歪虚側も黙って見逃しはしないだろう。
「次はこのリアルブルーが戦場になるかもしれんな」
 小さく呟いたトマーゾの背中を、芙蓉は不安げに見つめていた。

(執筆:神宮寺飛鳥
(文責:フロンティアワークス)

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