ゲスト
(ka0000)
【陶曲】同盟動乱
これでウチの先祖も浮かばれるだろう。
……明日からは何をするのかって?
そうだな……同盟の精霊たちを見ていて、宝石とマテリアルの関係に関して少し論じる余地があると常々考えていたところだ。
そもそも鉱物マテリアルというものが存在しながら、宝石もまた魔術の伝導物質として古来から重宝されている点に関しては――おい、まて、どこに行く。
魔術協会の変人魔術師:ユージィン・モア(kz0221)
更新情報(4月11日更新)
▼【陶曲】グランドシナリオ「終幕のチェックメイト」(3/22?4/11)▼
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【陶曲】エピローグノベル「生命は息づく」(4月11日公開)
●永遠のリザインを君に
結果として煮え湯を飲まされていたこの300年。
ラルヴァの狡猾さを思えば、果たして本当に決着がついたのだろうか。
そう、疑いの余地が生まれてしまうことは仕方がない。
だが彼を模っていたマテリアルが消滅していく様子は感じとっており、それは確かに、ラルヴァがもう己の存在を保つことができない状態であることを告げていた。
『クフ……クフフ……負けてしまったんだね。君からも、僕自身のルールからも』
消えていく粒子に乗って、ラルヴァの声が遺跡内にこだまする。
「私が戦場に立った瞬間、すでにこの戦いは私とあなたとのゲームではなかった。なぜなら私も、あなたも、盤面に配置された駒のひとつにすぎないのですから」
『では、いったい指し手は誰だったというのかな……?』
「それは……」
言葉が濁る。
そもそもがゲームではないのだ。
互いに面と向かい、その存在をかけて、戦った。
古臭い貴族の流儀にのっとれば「決闘」だ。
同盟が王国から離脱した時、都市を国にすると決めた時から、とっくに廃れてしまった言葉。
だがこの戦いをあえてそう呼ぶならば、決闘に指し手――盤面を覗き込む神の視点などはじめから存在はしないのだ。
「あえて言うのなら、それは世界の意志」
代わりにアリア・セリウス(ka6424)が、雪解け水のように澄んだ声で答えた。
「船というものはね、全員の目的意識が一緒になったとき、はじめて目的地にたどり着けるの」
『船……』
「そうだ……俺たちの誰もが……同盟の地に住む多くの人がお前を拒み、勝利を望んだ……その世界の意志に、お前は負けたんだ」
「誠一、無理するなって!」
せき込みながら口にした神代 誠一(ka2086)を、肩を貸すラスティ(ka1400)が労わるように支える。
ひしゃげたコックピットから何とか引っ張り出したその姿は、とても見ていられないほどの傷。
それでも彼の瞳に宿った輝きだけは、潰えることがない。
瓦礫の下敷きになった仲間たちも、何とか無事だったハンターや同盟軍兵士らの手によって、1人も欠けることなく救出されている。
『意志……意志か……』
ラルヴァはその言葉を吟味するように何度も反芻する。
『なるほど……意志の力になら、抗えないのも無理はない。僕も……そう、いずれ君たちも……ね……』
「それは――」
ふとアメンスィが顔を上げたのと、ラルヴァの気配が完全に消滅したのとは同じこと。
「ったく……最後の最後まで思わせぶりなヤツだ」
ラスティは苦い表情で天井を見上げる。
その頬に、天井から零れた水滴が1つ、ぽたりと滴った。
●秘術の代償
「結界が……消えた?」
手ごたえの無くなった結界術に、ユージィン・モア(kz0221)は眉をひそめる。
「戦いが終わったのか……? 一体どっちが……アメンスィは……?」
思わず自らの魔術も停止し、遺跡の入り口から奥へと続く暗がりを覗き込む。
「あら……そんな急に接続を切ったら――」
「えっ――」
不意に投げかけられたジルダ・アマート(kz0006)の言葉に、ユージィンが振り返る。
ジルダの体表に浮き出ていた秘術の刻印がすーっと消えていき、完全に消えた直後、彼女の身体がふらりと崩れた。
「会長……!?」
その異変に、すぐさまユージィンと護衛の魔術師たちが駆け寄る。
楽な姿勢で仰向けに寝かされたジルダは、額に大粒の汗をうかべながら、虚ろな表情で熱っぽい息を吐いた。
「大丈夫、疲れただけよ……寝れば治るわ。たぶんね」
「そう……ですか? なら良いんですが」
「そうね、だいたい数ヶ月か……長ければ1、2年は」
「……は?」
さらりと口にした言葉に、ユージィンは固まった。
「それじゃ、おやすみなさい――」
「ちょっ、長くて1、2年って――その間、協会はどうするんですか!?」
「……大丈夫。ドメニコが事情を察してるだろうから、なんとかしてくれるでしょう」
「あっ、まだ聞こえてたんですね……じゃなくって!」
一度は口だけで答えたジルダだったが、もうそれ以上は何も言わず、安らかな寝息だけが零れる。
その様子を見下ろしながら、ユージィンは頭を掻きむしった。
「どうするんだよ……担架も何も持ってきちゃいないぞ」
●生命は息づく
やがて遺跡の奥からハンター達が戻ってくると、魔術師協会の面々は安心した様子でそれを出迎える。
彼らが戻ってきたということは、人類は勝利したということなのだ。
「クラーレに止めを刺したとこ、実際に見てみたかったぜ。聞いた話じゃ、トランペットの音色が聴こえてきそうな闘い振りらしいな」
ジャック・エルギン(ka1522)が、カーミン・S・フィールズ(ka1559)の肩を軽く叩いた。
「それって、どういう例え? 確かに、クラーレの瞳に刀を突き刺してやったけど」
カーミンには、分かっていた。
ジャックが命懸けで闘ってくれたことを。仲間たちが一丸となって、クラーレに立ち向かってくれたことを。
だからこそ、カーミンは最後の一撃だけは、絶対に無駄にはしたくなかったのだ。
「私一人じゃ、勝てなかったわ。ジャックのこと、期待してたんだから」
「ん? あー、俺は途中で戦線離脱しちまったからなあ。倒れた後のことは、ほとんど覚えてねーんだ」
申し訳なさそうに言うジャックに、カーミンが彼の背中をバシっと叩く。
「ジャックがクラーレの注意を引いてくれたから、みんなも全力で戦えたのよ。もっと誇りを持っても良いのよ」
「誇りか……そう言われても、ピンとこないな」
ジャックは照れ笑いを浮かべた。
「――あっ」
そんな時、渓谷の片隅でパトリシア=K=ポラリス(ka5996)が声をあげた。
何事かと思って人が集まると、彼女がしゃがみ込んで見つめるその先に、小さな草の芽が、青々とした葉を開いていた。
「不毛の地のハズなのニ……これっテ、ラルヴァを倒したカラ?」
言われてふと考え込んだユージィンが、それほど間を置かずにブルブルと首を横に振る。
「いや、流石に早すぎ――まてよ。ということは、とっくの前から根を張り、発芽していたということか。つまりそれって……」
不毛の土地なんかじゃなかったかということなのか?
いや、だがそれではこの禿げた大地の説明がつかない。
実際に怖いもの知らずの植物学者が、外れに種を植えて、結果、全く発芽しなかったなんて話を聞いたこともある。
「じゃあ、たまたまってことか……?」
この状況において、全ての過程に結論をつけられるだけの確証はない。
だが事実として、緑は芽吹いているのだ。
「お前は強いやつだネ?♪ たくましく生きるんだゾ」
パトリシアはニコニコ笑いながら、小さな目を優しくつつく。
命はたくましい。
嫉妬王ラルヴァ
アメンスィ
アリア・セリウス
神代 誠一
ラスティ
ユージィン・モア
ジルダ・アマート
ラルヴァの狡猾さを思えば、果たして本当に決着がついたのだろうか。
そう、疑いの余地が生まれてしまうことは仕方がない。
だが彼を模っていたマテリアルが消滅していく様子は感じとっており、それは確かに、ラルヴァがもう己の存在を保つことができない状態であることを告げていた。
『クフ……クフフ……負けてしまったんだね。君からも、僕自身のルールからも』
消えていく粒子に乗って、ラルヴァの声が遺跡内にこだまする。
「私が戦場に立った瞬間、すでにこの戦いは私とあなたとのゲームではなかった。なぜなら私も、あなたも、盤面に配置された駒のひとつにすぎないのですから」
『では、いったい指し手は誰だったというのかな……?』
「それは……」
言葉が濁る。
そもそもがゲームではないのだ。
互いに面と向かい、その存在をかけて、戦った。
古臭い貴族の流儀にのっとれば「決闘」だ。
同盟が王国から離脱した時、都市を国にすると決めた時から、とっくに廃れてしまった言葉。
だがこの戦いをあえてそう呼ぶならば、決闘に指し手――盤面を覗き込む神の視点などはじめから存在はしないのだ。
「あえて言うのなら、それは世界の意志」
代わりにアリア・セリウス(ka6424)が、雪解け水のように澄んだ声で答えた。
「船というものはね、全員の目的意識が一緒になったとき、はじめて目的地にたどり着けるの」
『船……』
「そうだ……俺たちの誰もが……同盟の地に住む多くの人がお前を拒み、勝利を望んだ……その世界の意志に、お前は負けたんだ」
「誠一、無理するなって!」
せき込みながら口にした神代 誠一(ka2086)を、肩を貸すラスティ(ka1400)が労わるように支える。
ひしゃげたコックピットから何とか引っ張り出したその姿は、とても見ていられないほどの傷。
それでも彼の瞳に宿った輝きだけは、潰えることがない。
瓦礫の下敷きになった仲間たちも、何とか無事だったハンターや同盟軍兵士らの手によって、1人も欠けることなく救出されている。
『意志……意志か……』
ラルヴァはその言葉を吟味するように何度も反芻する。
『なるほど……意志の力になら、抗えないのも無理はない。僕も……そう、いずれ君たちも……ね……』
「それは――」
ふとアメンスィが顔を上げたのと、ラルヴァの気配が完全に消滅したのとは同じこと。
「ったく……最後の最後まで思わせぶりなヤツだ」
ラスティは苦い表情で天井を見上げる。
その頬に、天井から零れた水滴が1つ、ぽたりと滴った。
●秘術の代償
「結界が……消えた?」
手ごたえの無くなった結界術に、ユージィン・モア(kz0221)は眉をひそめる。
「戦いが終わったのか……? 一体どっちが……アメンスィは……?」
思わず自らの魔術も停止し、遺跡の入り口から奥へと続く暗がりを覗き込む。
「あら……そんな急に接続を切ったら――」
「えっ――」
不意に投げかけられたジルダ・アマート(kz0006)の言葉に、ユージィンが振り返る。
ジルダの体表に浮き出ていた秘術の刻印がすーっと消えていき、完全に消えた直後、彼女の身体がふらりと崩れた。
「会長……!?」
その異変に、すぐさまユージィンと護衛の魔術師たちが駆け寄る。
楽な姿勢で仰向けに寝かされたジルダは、額に大粒の汗をうかべながら、虚ろな表情で熱っぽい息を吐いた。
「大丈夫、疲れただけよ……寝れば治るわ。たぶんね」
「そう……ですか? なら良いんですが」
「そうね、だいたい数ヶ月か……長ければ1、2年は」
「……は?」
さらりと口にした言葉に、ユージィンは固まった。
「それじゃ、おやすみなさい――」
「ちょっ、長くて1、2年って――その間、協会はどうするんですか!?」
「……大丈夫。ドメニコが事情を察してるだろうから、なんとかしてくれるでしょう」
「あっ、まだ聞こえてたんですね……じゃなくって!」
一度は口だけで答えたジルダだったが、もうそれ以上は何も言わず、安らかな寝息だけが零れる。
その様子を見下ろしながら、ユージィンは頭を掻きむしった。
「どうするんだよ……担架も何も持ってきちゃいないぞ」
●生命は息づく
ジャック・エルギン
カーミン・S・フィールズ
パトリシア=K=ポラリス
彼らが戻ってきたということは、人類は勝利したということなのだ。
「クラーレに止めを刺したとこ、実際に見てみたかったぜ。聞いた話じゃ、トランペットの音色が聴こえてきそうな闘い振りらしいな」
ジャック・エルギン(ka1522)が、カーミン・S・フィールズ(ka1559)の肩を軽く叩いた。
「それって、どういう例え? 確かに、クラーレの瞳に刀を突き刺してやったけど」
カーミンには、分かっていた。
ジャックが命懸けで闘ってくれたことを。仲間たちが一丸となって、クラーレに立ち向かってくれたことを。
だからこそ、カーミンは最後の一撃だけは、絶対に無駄にはしたくなかったのだ。
「私一人じゃ、勝てなかったわ。ジャックのこと、期待してたんだから」
「ん? あー、俺は途中で戦線離脱しちまったからなあ。倒れた後のことは、ほとんど覚えてねーんだ」
申し訳なさそうに言うジャックに、カーミンが彼の背中をバシっと叩く。
「ジャックがクラーレの注意を引いてくれたから、みんなも全力で戦えたのよ。もっと誇りを持っても良いのよ」
「誇りか……そう言われても、ピンとこないな」
ジャックは照れ笑いを浮かべた。
「――あっ」
そんな時、渓谷の片隅でパトリシア=K=ポラリス(ka5996)が声をあげた。
何事かと思って人が集まると、彼女がしゃがみ込んで見つめるその先に、小さな草の芽が、青々とした葉を開いていた。
「不毛の地のハズなのニ……これっテ、ラルヴァを倒したカラ?」
言われてふと考え込んだユージィンが、それほど間を置かずにブルブルと首を横に振る。
「いや、流石に早すぎ――まてよ。ということは、とっくの前から根を張り、発芽していたということか。つまりそれって……」
不毛の土地なんかじゃなかったかということなのか?
いや、だがそれではこの禿げた大地の説明がつかない。
実際に怖いもの知らずの植物学者が、外れに種を植えて、結果、全く発芽しなかったなんて話を聞いたこともある。
「じゃあ、たまたまってことか……?」
この状況において、全ての過程に結論をつけられるだけの確証はない。
だが事実として、緑は芽吹いているのだ。
「お前は強いやつだネ?♪ たくましく生きるんだゾ」
パトリシアはニコニコ笑いながら、小さな目を優しくつつく。
命はたくましい。