ゲスト
(ka0000)
ライブラリ
ここはライブラリ。キノコが集めてきた皆の姿や声、
音楽なんかを見たり聞いたりできるよ。
新しい姿を頼んだりもできるから、試してみてね!
竹村 早苗(kz0014)
※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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はふはふ、ほふっ。
件のカフェを訪れたサフィーア(ka6909)は、図書館で借りた本を傍らに積み、膝にはブーケをちょこんと乗せて、オーダーした品を待っていた。
腰を落ち着けてすぐ本に手を伸ばそうとしたけれど思いとどまり、店内の様子を眺めてみる。
(人気のメニューがメニューなだけに、女性客が多いわね。窓が大きくて明るい店内。店員の方も……入店した時は、この本の量に驚かれてしまったけれど……愛想も良いし、とても雰囲気の良いお店だと"感じる"わ)
何より、店の外まで漂っていた甘い香り。これにはなかなか抗えるものではない。
(人気が出るのも納得ね。お味の方はどうかしら)
そんなことを考えていると、サフィーアの前に皿が運ばれてきた。白い皿の上に乗っていたのは、ふっくら厚い三段重ねパンケーキ。
「思ったより大きいのね……」
ボリュームに圧倒されるサフィーアをよそに、店員が目の前でたっぷりとシロップを回しかけてくれた。食欲をそそるきつね色の生地のふちから、蜜がとろりと滴り落ちる。それを見て知らず喉がこくりと鳴った。
「いただきます」
意を決して分厚い生地にフォークを差し込むと、抵抗もなくスッと入った。ナイフの登場を待つまでもなくフォークに収まった生地は、まるで雲のような柔らかさ。断面からはカスタードに似た濃厚なたまごの匂いと湯気とが立ち上る。口へ運ぼうとすると、生地がふわふわと頼りなく揺れた。
頬張ろうとした途端、サフィーアの脳裏にちょっぴり恥ずかしい記憶が過ぎる。
(これは……)
祭の出店で供されたアツアツのキッシュ。チーズが溢れてしまいそうで思わず食みついてしまい、店主の前で子供っぽい所作をしてしまった。
今もまだ店員がすぐそばにいる。
(ああ、でも)
サフィーアは手を止めずそのまま口に含んだ。だってあの時ああして食べたキッシュは、それまでに食べたものより格段に美味しく感じられたから。
「はふ……っ」
案の定焼きたての生地はとても熱く、堪らず口をぱくぱく。恥ずかしいけれど、口に流れ込む空気と一緒に甘さが口内と言わず喉と言わず広がって、一層美味しさを感じられているような気がする。
懲りずにめげずに、もう一口。
「ほふっ」
幸福を感じるほど好みの味なのか、それとも半ばむきになるようにして熱さと格闘している自分が可笑しくなったのか――また新たな一切れを迎え入れようとするサフィーアの唇は、ほんのり笑みを刻んでいた。
━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
【登場人物】
サフィーア(ka6909)/その歩みは、ココロと共に