ゲスト
(ka0000)
もしもし亀よ
マスター:cr
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
- 1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/11/20 07:30
- 完成日
- 2014/11/29 00:54
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●世界の内でお前ほど
港湾都市、ポルトワールの港近く。そこに多くの人々が集まっていた。
人々は手に弓矢や銃を持っている。そして人々の視線の先には亀が二匹。
ただの亀ではない。恐るべき大きさ。体長は4mを超えているだろうか。醸しだされる負のオーラ。雑魔化した亀であろう。それが海辺に出現した。
ポルトワールはその名の通り海運で持っている都市である。先日の狂気の歪虚が現れた時のダメージが思い出される。そこで自慢の海軍、海兵隊が亀退治に向かっていた。
●歩みの遅いものは無い
幸い、今回の雑魔は亀である。見た目通り、実にその動きは緩慢だ。兵士たちは亀達を取り囲むように立ち、弓矢で、銃で亀を狙う。
彼我の距離がこれだけある状況で、一斉射撃をすればたとえ雑魔であろうと簡単に殲滅できるだろう。そう思いながら、号令と共に一斉に発射される。
ズドドドドッ! という音とともに土煙が上がる。
「やったか?」
兵士の声が上がる。
だが、土煙が晴れた時、そこに居たのは甲羅で銃弾と弓矢を弾ききった亀の姿だった。
●どうしてそんなに……?
兵士たちは一旦間合いを放つ。倒すことは叶わなかったが、あの動きの緩慢さなら亀に襲われることは無いだろう。しかし、その次に見たのは悪夢としか言えない光景だった。
一体の亀が身体を持ち上げ、首を出す。まるで二足歩行でもするように立ち上がると、兵士たちの方をひと睨みして口を大きく開ける。
そして次の瞬間、亀の口から火球が発射された。兵士たちの中心に着弾、起こる爆発、かき消される兵士たちの悲鳴。
一方もう一体の亀はその場で体をスピンさせ始める。まるで独楽の様に高速で回転させるとそのまま空中に舞い上がった!
その姿はまるで手裏剣。地上での緩慢な動きからは想像できない高速飛行をすると、そのまま兵士たちの上から蓋をするように落下した。一体どれだけの兵士がやられたのか。
雑魔亀二体の退治という依頼がハンターオフィスに持ち込まれるのはすぐの話である。
港湾都市、ポルトワールの港近く。そこに多くの人々が集まっていた。
人々は手に弓矢や銃を持っている。そして人々の視線の先には亀が二匹。
ただの亀ではない。恐るべき大きさ。体長は4mを超えているだろうか。醸しだされる負のオーラ。雑魔化した亀であろう。それが海辺に出現した。
ポルトワールはその名の通り海運で持っている都市である。先日の狂気の歪虚が現れた時のダメージが思い出される。そこで自慢の海軍、海兵隊が亀退治に向かっていた。
●歩みの遅いものは無い
幸い、今回の雑魔は亀である。見た目通り、実にその動きは緩慢だ。兵士たちは亀達を取り囲むように立ち、弓矢で、銃で亀を狙う。
彼我の距離がこれだけある状況で、一斉射撃をすればたとえ雑魔であろうと簡単に殲滅できるだろう。そう思いながら、号令と共に一斉に発射される。
ズドドドドッ! という音とともに土煙が上がる。
「やったか?」
兵士の声が上がる。
だが、土煙が晴れた時、そこに居たのは甲羅で銃弾と弓矢を弾ききった亀の姿だった。
●どうしてそんなに……?
兵士たちは一旦間合いを放つ。倒すことは叶わなかったが、あの動きの緩慢さなら亀に襲われることは無いだろう。しかし、その次に見たのは悪夢としか言えない光景だった。
一体の亀が身体を持ち上げ、首を出す。まるで二足歩行でもするように立ち上がると、兵士たちの方をひと睨みして口を大きく開ける。
そして次の瞬間、亀の口から火球が発射された。兵士たちの中心に着弾、起こる爆発、かき消される兵士たちの悲鳴。
一方もう一体の亀はその場で体をスピンさせ始める。まるで独楽の様に高速で回転させるとそのまま空中に舞い上がった!
その姿はまるで手裏剣。地上での緩慢な動きからは想像できない高速飛行をすると、そのまま兵士たちの上から蓋をするように落下した。一体どれだけの兵士がやられたのか。
雑魔亀二体の退治という依頼がハンターオフィスに持ち込まれるのはすぐの話である。
リプレイ本文
●
「あれが今回倒すべき雑魔だな」
遠方に見える雑魔を目にし、ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)は確認する。雑魔は情報通りその動きはとても緩慢だ。だから、こちらから認知できる、すなわち敵からも認知される可能性がある場所でも、こうやって確認できる時間が有る。
「うおっ、でけー爬虫類ってインパクトあるな。ま、せいぜい楽しませてくれよッ!」
岩井崎 旭(ka0234)も敵を確認してやる気満々だ。今回、岩井崎は愛馬・サラダと共に戦おうと考えている。人馬一体、信頼しあって戦うため、目を合わせて安心させると人参を食べさせ、自分の位置取りをディアドラと確認する。
「ほう、亀か。しかも大きいのう」
「亀か……まあ、防御は硬そうな相手だな」
そう会話しているのはガイウス=フォン=フェルニアス(ka2612)とバルバロス(ka2119)。二人共ドワーフであり、年も二人とも老齢と言っていい。似たもの同士で気が合うのか、気楽に会話を交わす。
しかし二人の見た目は大きく違う。小柄でずんぐりとした体躯のガイウスはドワーフのイメージ通りの見た目だ。ローブに包まれ、錫杖を手にするその見た目からしていかにも聖導士といえよう。
一方のバルバロスはあの大亀にもひけを取らない大柄な体格であり、筋骨隆々の赤岩のごとき肉体を持っている。さらに強敵を前に興奮し、その赤褐色の肌はさらに赤くなっている。
「あれほどの亀となると、甲羅も丈夫じゃろうのう」
そんなバルバロスの様子を知ってか知らずか、ガイウスはそう返す。どうもガイウスは甲羅に目をつけ、ただ戦うだけでなく何か別のことを考えているようだ。
「……こいつ、本当に何処から来たんだろう、ていうか、また面倒くさい形状してるなぁ。カメかぁ」
と、やれやれといった感じでつぶやいたのは、キヅカ・リク(ka0038)。そんなリクの言葉に対し、
「これは本当にカメなのですか? 火を吐いたり身体を回転させて飛んだり……」
と同じく呆れながら言葉を返したのは、ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)。彼女は依頼書の内容を思い出す。ブリーフィングであの亀の行動を聞かされた時の感覚はよく覚えている。
「まあ、雑魔だから何でもあり……なのかもでしょうが、流石にやりすぎというか滅茶苦茶過ぎるといいますか……」
そんなユーリの言葉にリクも呆れながら、
「それにしてもこいつ見てると危ない臭いを感じざるを得ないんだよな。お前、お姫様さらったりとかネトゲで暴れてたりしないよな、大丈夫だよな」
などと言っている。だが、二人共決意は固い。雑魔が現れたとなれば、やることは一つだ。
「何にせよ、このまま放置しておく訳にもいきませんし、きっちり倒すしかなさそうですね」
「狙う所が限られてくるしチャンスは少ないし……我慢比べかなぁ」
とこれからの戦いについて言葉を交わし、頷く二人。
そんな二人の言葉に黙って頷く扼城(ka2836)。扼城は言葉少なく集中して目の前の敵を倒すことのみを考えている。だが、そんな中でもたげる別の思いがあった。
「事前情報では海兵隊が被害を受けたと聞いている」
とは、ディアドラの言葉。彼の言葉通り、先に戦った海兵隊は敗走している。扼城の心のなかで別のモチベーションが盛り上がる。すなわち弔い合戦という思いだ。
そして全員が亀の方を向く。戦闘の口火を切るべく武器を構えたところで、
「よし、決めた。あの甲羅は、ワシがもらうのじゃ。片方はワシ専用の風呂釜にして、もう片方は鍛冶道具入れじゃ」
と自分の目標を決めるガイウス。その言葉を聞いて、思わずズッコケそうになった者もいるとかいないとか。
気を取り直して、改めて戦いを始めようとしたところでガーディアンズ・ストーン(ka3032)が慌てた様子でやって来た。これで依頼参加者が全員揃う。この時、ストーンは自分が周りの指示を受けて動くことを伝えた。ニ、三言言葉を交わしてあらためて敵に向くハンター達。そして戦いが始まった。
●
ハンター達は大きく二つのチームに分けて雑魔と相対することにした。緑亀に対応するチームが一直線に向かっていく。
「ぶるあぁぁあ!!」
その中でも真っ先に踏み出したのはバルバロス。マテリアルを全身に巡らせるとただでさえ大きな筋肉が、さらに一回り盛り上がる。そのまま手にした得物を振り上げ、緑亀に振り下ろす。ただの得物では無い。ハンター達の中で最も大柄なバルバロスの体躯を超える長さ。柄の先には巨大な鉄塊が暴力的な見た目でついている。それを軽々と持ち上げ、何度も振り下ろす。うなりをあげて「ガツン、ガツン!」と巨大な音が鳴る。
「どんなに装甲が厚くても、絶縁体でないのなら……!」
続いてリクが前に出る。前進しながら覚醒したリクの体に電流がまとわりつく。そのまま両手を突き出すリク。手から放たれた雷撃が緑亀を包み込む。バチバチと音を立てて放たれた雷撃が緑亀の体を穿ち――雷撃が晴れたとき、傷一つない雑魔の姿がそこにあった。
これでよく分かった。事前の情報通り、恐るべき硬さの甲羅。あれだけの攻撃を繰り出しても、それを跳ね返してしまうのなら、別の手段で立ち向かう必要がある。
その考えをすると同時に、ユーリは身を低く落として駆けた。覚醒の影響でユーリの髪は伸び、全身に黒い雷のオーラをまとっている。彼女は腰の刀に手をかけ、踏み込みと同時に抜き放つ。狙うは甲羅に包まれていない頭部。巨大な亀といえども、頭部一点を狙うとなると途端に的は小さくなる。集中し、鋭い一撃を叩きこむ。
「デカイ的だ、良く狙わせて貰う……」
同時に、扼城がシルバーマグを手に照準を合わせる。狙うは亀の頭部、それも眼だ。息を整え、トリガーを引く。空気を切って一直線に向かう銃弾。ユーリの刃と扼城の弾丸が同時に緑亀の頭を襲った。
だが、その二撃が当たる刹那、亀は頭部を甲羅の中に引っ込める。刃が、そして銃弾が甲羅に跳ね返された。だがハンター達が諦めることは無い。次のチャンスを狙い、四人はもう一度攻撃の態勢に入った。
●
「全員、油断せずに行くぞ! ではボクに続けッ!」
一方、赤亀に真っ先に向かったのはディアドラだ。大王は真正面から両手に持った太刀を振り下ろすが、敵の甲羅は刃を弾く。
しかしこれは織り込み済み。正面から攻撃して注意を引き、他の者たちの攻撃をアシストするのが狙いだ。
「え、なんじゃと? ワシも前衛なのか?」
ガイウスはぶつくさ言いながら、赤亀に立ち向かう。
その頃ストーンは意識を集中し、ウサギの精霊の力を借りる。指示に従って位置を立ち位置を動かし、赤亀と緑亀の間に入る。
そして岩井崎は愛馬を後退させ、赤亀から5メートルほど離れた位置に構える。槍を赤亀に向け、正面に立つ岩井崎。
赤亀チームは緑亀チームとは対照的に、静かに戦いを進めた。
●
緑亀を囲んだ者達が次の一撃を放とうとした、その時だ。
急速に緑亀が回転しはじめた!
それまでの緩慢な動きからは嘘のような高速回転の後に飛翔する緑亀。
急激に運動エネルギーを与えられた甲羅が、リクとバルバロスの脛をえぐる。
二人の足元が血に染まる。だが、この程度で怯むような者達ではない。
「行ったぞ!」
リクはすかさずユーリに声をかける。
回転したままユーリに襲い掛かる緑亀。ユーリは身をかがめその飛行をかわしつつ、赤亀の近くにいたストーンに声をかける。
「誘導してください!」
ストーンはその声を受けて、緑亀の前にその身をさらす。一直線にストーンに迫る緑亀。
だが、緑亀の甲羅がストーンの体を切り裂こうとしたその瞬間、少年は急加速してその攻撃をかわす。ウサギの精霊の加護がもたらした力だ。
ストーンがかわしたことにより、緑亀が向かう先はもはや一か所しかない。すなわち赤亀の上。
亀と亀が衝突する。港に響き渡る澄んだ高音。緑亀は跳ね返されたように、赤亀とストーンの間に落ちた。
このチャンスを見逃す者はいない。緑亀が飛んでいった軌道と同じ軌道を描いて、黒い星形の物体が空を飛ぶ。
「即効性は無い。けど、こういう消耗戦なら通用するはず……!」
リクの投げた手裏剣だ。手裏剣は緑亀の後を追うように進み、緑亀が伸ばした首筋に突き刺さった。
そしてそこに扼城が駆け込む。手にした剣を振り上げる。踏み込みながら振り下ろすそのとき、扼城の剣が分離した。
分かれ、一つの短剣と化したそれを甲羅から生えた腕の付け根に突き刺す。自慢の甲羅で防げない位置に攻撃を受け、緑亀は例えようのないうめき声を上げていた。
●
その頃、緑亀が衝突した赤亀の方は変わらずその位置にあった。ハンター達を傷つけた亀の手裏剣アタックを受けても、この甲羅は傷つかない。
そして赤亀はその上体を起こす。首を突き出し、口を開き、放たれる火球。飛び出した火球は目の前に居るディアドラを襲う。だが、大王は小さな体をさらにかがめ、火球は頭の上を通過させてやり過ごす。
そしてディアドラはただかわしただけでは無い。身をかがめ、火球をやり過ごしたその瞬間に踏み込み、渾身の力で太刀を振るう。膝を払うように振るわれたその刃は赤亀の柔らかい脚部を傷つけた。
一方、ディアドラにかわされた火球はそのまま真っ直ぐ飛んでいた。向かう先にいるのは愛馬に跨った岩井崎。火球は人馬に着弾し爆発が巻き起こる。火に包まれる岩井崎とサラダ。
否。彼は巻き込まれていなかった。爆発を背にサラダが駆ける。馬上には上半身が羽毛に包まれ、頭部がミミズクの様な姿の人物。背には翼も見える。覚醒した岩井崎の姿がそこにあった。
「行くぜサラダ、港に余計な被害が出る前にぶっ潰すッ!」
そして岩井崎は真っ直ぐ突き進む。腰を落とし、体重を預け、ディアドラの横をすり抜けるように赤亀に向かって一直線。突き出した槍は吸い込まれるように、起こした赤亀の上半身に突き刺さった。そこにあったのは硬い硬い甲羅ではなく、遥かに柔らかい腹部。スピードを乗せた一撃が赤亀の腹に穴を開けた。
●
それに対して、緑亀はリクと扼城の攻撃を受けてもまだまだ健在だ。再びその身を回転させ、飛行を始める。
まるで先ほどの飛行の逆再生のようなルートで飛行する緑亀。
だが、一つ大きな違いがあった。リクと扼城が突き刺した手裏剣と剣。これによる傷が遠心力と合わさり、緑亀の周囲に血煙を巻き起こす。
そして一度受けた攻撃を二度食らう様なハンター達ではない。一番近くにいた扼城に向かい、そのまま高度を上げつつユーリに襲いかかる緑亀。二人は最小限の動きでかわしてみせる。
そのまま緑亀は3メートル程跳び上がり、バルバロスの頭上高くにまでやってきた。だが、バルバロスは今だ避けようとしない。
そんなバルバロスの様子を見て、リクは何をしようとしているのか、すぐに理解した。それならばリクのやるべきことは一つだ。
「ワンチャン見えた……! 暴れるなら今ですよ」
リクは自身のマテリアルをバルバロスに流し込む。同時に上から落下する緑亀。
「うばっしゃぁぁ!!」
その時辺りに裂帛の気合が響き渡った。仁王立ちしたままのバルバロスは一切避けようとせずに、上から降ってくる緑亀の、その土手っ腹目掛け手にしたハンマーを振り上げる!
まるで何かが爆発したかのような激しい衝撃音。その爆発の中心に立っていたのはバルバロスだ。彼が振り上げたハンマーはそのまま緑亀の柔らかい所にジャストミート。一方の緑亀はそれだけのダメージを負ったのか、ただ位置エネルギーだけをもってバルバロスに襲いかかる。そのままバルバロスを押しつぶす緑亀。相打ち覚悟の乾坤一擲の一撃。
そしてバルバロスの見せた捨て身の攻撃。それに応えるためには、一刻も早く緑亀を討つことだ。その思いと共に緑亀に向かっていくハンター達。
だが、赤亀も懸命に妨害する。岩井崎の痛烈な一撃を受けても、再び上半身を起こすと火球を吐き出し、ユーリに牙を剥いた。
火球がユーリの身を焼きつくすその寸前、小さく前に飛び込むようにジャンプし、そのまま一回転。華麗に動く彼女の身を火球がすり抜けた。
ユーリは回転した勢いのまま、再び低い姿勢から太刀を抜き放つ。今度ははずさない。狙うはリクが手裏剣を突き刺した緑亀の頭。足元まで伸びた金髪がなびき、白刃がきらめく。その剣風は緑亀の目を切り裂いた。
「……打ち砕く……硬さが自慢なら張り合って見せろ……!」
剣を収めた扼城が踏み込む。手には金属製の籠手。それを前にして緑亀に向かって体当たり。何の策もなしに体当たりしたのなら何も起こらなかっただろう。だが、扼城がその身を当てたのは緑亀ではなく、緑亀に突き刺した自らの剣だった。
巨大な木にくさびを打ち込み、それを叩くとどうなるか。木は真っ二つに裂けるときの様に、奥の奥まで突き刺ささる扼城の剣、それが緑亀にとっての致命傷となった。
●
そして火球を吐き出すための上半身を起こした赤亀。それは、再び先ほど起こったことが繰り返されるという意味でもある。
「この一撃には自信があるぜ! 一人と一頭の力、受けてみやがれッ!」
岩井崎がサラダと共に駆ける。先ほどの一撃で向こう側まで駆け抜けた岩井崎が馬を返し、もう一度同じように駆け抜ける。狙う場所は先ほど当たった場所より少し上の位置。
一条の風が吹き抜ける。それはそよぐ風などではない。全てを吹き飛ばすような暴風。その風が吹き抜けた時、立ち上がっていた赤亀は見事なまでにひっくり返っていた。
後はハンター達の前にさらけ出しているその腹に、とどめの一撃を入れればいい。ストーンが駆け寄り一撃。そしてディアドラが太刀を振り下ろす。それは戦いの終了を告げる合図となった。
●
戦いが終わっても、ハンター達の仕事はすぐには終わらなかった。緑亀の死体に押しつぶされているバルバロス。彼をいち早く救出しなければならない。
ハンター達が駆け寄り甲羅をよける。傷ついたバルバロスの体を、聖導士であるガイウスがその力でもって癒やす。
「ばっかもん! 若いもんは、無茶ばかりしよる。ワシのように時には老獪に動くのじゃ!」
バルバロスも随分年輪を重ねているが、ガイウスはそれ以上の年月を生きている。思わず説教を一つ垂れるガイウス。
「誰ぞ、ワシと一緒の風呂釜に入らんか? ハヨウ持ち帰ろう」
ガイウスはリクも癒やし終えると、力を込めて緑亀の甲羅を持ち上げようとした。自分の目標通り、甲羅を持ち帰って使うためである。だが一人ではびくともしない。
「……重いのう。誰か運ぶのを手伝わんか……?」
悪戦苦闘するガイウスのぼやきは、むなしく波の音にかき消された。
結局、どちらの甲羅はあまりの重量で、輸送に難があったため、諦めるより他なかったそうな。
「あれが今回倒すべき雑魔だな」
遠方に見える雑魔を目にし、ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)は確認する。雑魔は情報通りその動きはとても緩慢だ。だから、こちらから認知できる、すなわち敵からも認知される可能性がある場所でも、こうやって確認できる時間が有る。
「うおっ、でけー爬虫類ってインパクトあるな。ま、せいぜい楽しませてくれよッ!」
岩井崎 旭(ka0234)も敵を確認してやる気満々だ。今回、岩井崎は愛馬・サラダと共に戦おうと考えている。人馬一体、信頼しあって戦うため、目を合わせて安心させると人参を食べさせ、自分の位置取りをディアドラと確認する。
「ほう、亀か。しかも大きいのう」
「亀か……まあ、防御は硬そうな相手だな」
そう会話しているのはガイウス=フォン=フェルニアス(ka2612)とバルバロス(ka2119)。二人共ドワーフであり、年も二人とも老齢と言っていい。似たもの同士で気が合うのか、気楽に会話を交わす。
しかし二人の見た目は大きく違う。小柄でずんぐりとした体躯のガイウスはドワーフのイメージ通りの見た目だ。ローブに包まれ、錫杖を手にするその見た目からしていかにも聖導士といえよう。
一方のバルバロスはあの大亀にもひけを取らない大柄な体格であり、筋骨隆々の赤岩のごとき肉体を持っている。さらに強敵を前に興奮し、その赤褐色の肌はさらに赤くなっている。
「あれほどの亀となると、甲羅も丈夫じゃろうのう」
そんなバルバロスの様子を知ってか知らずか、ガイウスはそう返す。どうもガイウスは甲羅に目をつけ、ただ戦うだけでなく何か別のことを考えているようだ。
「……こいつ、本当に何処から来たんだろう、ていうか、また面倒くさい形状してるなぁ。カメかぁ」
と、やれやれといった感じでつぶやいたのは、キヅカ・リク(ka0038)。そんなリクの言葉に対し、
「これは本当にカメなのですか? 火を吐いたり身体を回転させて飛んだり……」
と同じく呆れながら言葉を返したのは、ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)。彼女は依頼書の内容を思い出す。ブリーフィングであの亀の行動を聞かされた時の感覚はよく覚えている。
「まあ、雑魔だから何でもあり……なのかもでしょうが、流石にやりすぎというか滅茶苦茶過ぎるといいますか……」
そんなユーリの言葉にリクも呆れながら、
「それにしてもこいつ見てると危ない臭いを感じざるを得ないんだよな。お前、お姫様さらったりとかネトゲで暴れてたりしないよな、大丈夫だよな」
などと言っている。だが、二人共決意は固い。雑魔が現れたとなれば、やることは一つだ。
「何にせよ、このまま放置しておく訳にもいきませんし、きっちり倒すしかなさそうですね」
「狙う所が限られてくるしチャンスは少ないし……我慢比べかなぁ」
とこれからの戦いについて言葉を交わし、頷く二人。
そんな二人の言葉に黙って頷く扼城(ka2836)。扼城は言葉少なく集中して目の前の敵を倒すことのみを考えている。だが、そんな中でもたげる別の思いがあった。
「事前情報では海兵隊が被害を受けたと聞いている」
とは、ディアドラの言葉。彼の言葉通り、先に戦った海兵隊は敗走している。扼城の心のなかで別のモチベーションが盛り上がる。すなわち弔い合戦という思いだ。
そして全員が亀の方を向く。戦闘の口火を切るべく武器を構えたところで、
「よし、決めた。あの甲羅は、ワシがもらうのじゃ。片方はワシ専用の風呂釜にして、もう片方は鍛冶道具入れじゃ」
と自分の目標を決めるガイウス。その言葉を聞いて、思わずズッコケそうになった者もいるとかいないとか。
気を取り直して、改めて戦いを始めようとしたところでガーディアンズ・ストーン(ka3032)が慌てた様子でやって来た。これで依頼参加者が全員揃う。この時、ストーンは自分が周りの指示を受けて動くことを伝えた。ニ、三言言葉を交わしてあらためて敵に向くハンター達。そして戦いが始まった。
●
ハンター達は大きく二つのチームに分けて雑魔と相対することにした。緑亀に対応するチームが一直線に向かっていく。
「ぶるあぁぁあ!!」
その中でも真っ先に踏み出したのはバルバロス。マテリアルを全身に巡らせるとただでさえ大きな筋肉が、さらに一回り盛り上がる。そのまま手にした得物を振り上げ、緑亀に振り下ろす。ただの得物では無い。ハンター達の中で最も大柄なバルバロスの体躯を超える長さ。柄の先には巨大な鉄塊が暴力的な見た目でついている。それを軽々と持ち上げ、何度も振り下ろす。うなりをあげて「ガツン、ガツン!」と巨大な音が鳴る。
「どんなに装甲が厚くても、絶縁体でないのなら……!」
続いてリクが前に出る。前進しながら覚醒したリクの体に電流がまとわりつく。そのまま両手を突き出すリク。手から放たれた雷撃が緑亀を包み込む。バチバチと音を立てて放たれた雷撃が緑亀の体を穿ち――雷撃が晴れたとき、傷一つない雑魔の姿がそこにあった。
これでよく分かった。事前の情報通り、恐るべき硬さの甲羅。あれだけの攻撃を繰り出しても、それを跳ね返してしまうのなら、別の手段で立ち向かう必要がある。
その考えをすると同時に、ユーリは身を低く落として駆けた。覚醒の影響でユーリの髪は伸び、全身に黒い雷のオーラをまとっている。彼女は腰の刀に手をかけ、踏み込みと同時に抜き放つ。狙うは甲羅に包まれていない頭部。巨大な亀といえども、頭部一点を狙うとなると途端に的は小さくなる。集中し、鋭い一撃を叩きこむ。
「デカイ的だ、良く狙わせて貰う……」
同時に、扼城がシルバーマグを手に照準を合わせる。狙うは亀の頭部、それも眼だ。息を整え、トリガーを引く。空気を切って一直線に向かう銃弾。ユーリの刃と扼城の弾丸が同時に緑亀の頭を襲った。
だが、その二撃が当たる刹那、亀は頭部を甲羅の中に引っ込める。刃が、そして銃弾が甲羅に跳ね返された。だがハンター達が諦めることは無い。次のチャンスを狙い、四人はもう一度攻撃の態勢に入った。
●
「全員、油断せずに行くぞ! ではボクに続けッ!」
一方、赤亀に真っ先に向かったのはディアドラだ。大王は真正面から両手に持った太刀を振り下ろすが、敵の甲羅は刃を弾く。
しかしこれは織り込み済み。正面から攻撃して注意を引き、他の者たちの攻撃をアシストするのが狙いだ。
「え、なんじゃと? ワシも前衛なのか?」
ガイウスはぶつくさ言いながら、赤亀に立ち向かう。
その頃ストーンは意識を集中し、ウサギの精霊の力を借りる。指示に従って位置を立ち位置を動かし、赤亀と緑亀の間に入る。
そして岩井崎は愛馬を後退させ、赤亀から5メートルほど離れた位置に構える。槍を赤亀に向け、正面に立つ岩井崎。
赤亀チームは緑亀チームとは対照的に、静かに戦いを進めた。
●
緑亀を囲んだ者達が次の一撃を放とうとした、その時だ。
急速に緑亀が回転しはじめた!
それまでの緩慢な動きからは嘘のような高速回転の後に飛翔する緑亀。
急激に運動エネルギーを与えられた甲羅が、リクとバルバロスの脛をえぐる。
二人の足元が血に染まる。だが、この程度で怯むような者達ではない。
「行ったぞ!」
リクはすかさずユーリに声をかける。
回転したままユーリに襲い掛かる緑亀。ユーリは身をかがめその飛行をかわしつつ、赤亀の近くにいたストーンに声をかける。
「誘導してください!」
ストーンはその声を受けて、緑亀の前にその身をさらす。一直線にストーンに迫る緑亀。
だが、緑亀の甲羅がストーンの体を切り裂こうとしたその瞬間、少年は急加速してその攻撃をかわす。ウサギの精霊の加護がもたらした力だ。
ストーンがかわしたことにより、緑亀が向かう先はもはや一か所しかない。すなわち赤亀の上。
亀と亀が衝突する。港に響き渡る澄んだ高音。緑亀は跳ね返されたように、赤亀とストーンの間に落ちた。
このチャンスを見逃す者はいない。緑亀が飛んでいった軌道と同じ軌道を描いて、黒い星形の物体が空を飛ぶ。
「即効性は無い。けど、こういう消耗戦なら通用するはず……!」
リクの投げた手裏剣だ。手裏剣は緑亀の後を追うように進み、緑亀が伸ばした首筋に突き刺さった。
そしてそこに扼城が駆け込む。手にした剣を振り上げる。踏み込みながら振り下ろすそのとき、扼城の剣が分離した。
分かれ、一つの短剣と化したそれを甲羅から生えた腕の付け根に突き刺す。自慢の甲羅で防げない位置に攻撃を受け、緑亀は例えようのないうめき声を上げていた。
●
その頃、緑亀が衝突した赤亀の方は変わらずその位置にあった。ハンター達を傷つけた亀の手裏剣アタックを受けても、この甲羅は傷つかない。
そして赤亀はその上体を起こす。首を突き出し、口を開き、放たれる火球。飛び出した火球は目の前に居るディアドラを襲う。だが、大王は小さな体をさらにかがめ、火球は頭の上を通過させてやり過ごす。
そしてディアドラはただかわしただけでは無い。身をかがめ、火球をやり過ごしたその瞬間に踏み込み、渾身の力で太刀を振るう。膝を払うように振るわれたその刃は赤亀の柔らかい脚部を傷つけた。
一方、ディアドラにかわされた火球はそのまま真っ直ぐ飛んでいた。向かう先にいるのは愛馬に跨った岩井崎。火球は人馬に着弾し爆発が巻き起こる。火に包まれる岩井崎とサラダ。
否。彼は巻き込まれていなかった。爆発を背にサラダが駆ける。馬上には上半身が羽毛に包まれ、頭部がミミズクの様な姿の人物。背には翼も見える。覚醒した岩井崎の姿がそこにあった。
「行くぜサラダ、港に余計な被害が出る前にぶっ潰すッ!」
そして岩井崎は真っ直ぐ突き進む。腰を落とし、体重を預け、ディアドラの横をすり抜けるように赤亀に向かって一直線。突き出した槍は吸い込まれるように、起こした赤亀の上半身に突き刺さった。そこにあったのは硬い硬い甲羅ではなく、遥かに柔らかい腹部。スピードを乗せた一撃が赤亀の腹に穴を開けた。
●
それに対して、緑亀はリクと扼城の攻撃を受けてもまだまだ健在だ。再びその身を回転させ、飛行を始める。
まるで先ほどの飛行の逆再生のようなルートで飛行する緑亀。
だが、一つ大きな違いがあった。リクと扼城が突き刺した手裏剣と剣。これによる傷が遠心力と合わさり、緑亀の周囲に血煙を巻き起こす。
そして一度受けた攻撃を二度食らう様なハンター達ではない。一番近くにいた扼城に向かい、そのまま高度を上げつつユーリに襲いかかる緑亀。二人は最小限の動きでかわしてみせる。
そのまま緑亀は3メートル程跳び上がり、バルバロスの頭上高くにまでやってきた。だが、バルバロスは今だ避けようとしない。
そんなバルバロスの様子を見て、リクは何をしようとしているのか、すぐに理解した。それならばリクのやるべきことは一つだ。
「ワンチャン見えた……! 暴れるなら今ですよ」
リクは自身のマテリアルをバルバロスに流し込む。同時に上から落下する緑亀。
「うばっしゃぁぁ!!」
その時辺りに裂帛の気合が響き渡った。仁王立ちしたままのバルバロスは一切避けようとせずに、上から降ってくる緑亀の、その土手っ腹目掛け手にしたハンマーを振り上げる!
まるで何かが爆発したかのような激しい衝撃音。その爆発の中心に立っていたのはバルバロスだ。彼が振り上げたハンマーはそのまま緑亀の柔らかい所にジャストミート。一方の緑亀はそれだけのダメージを負ったのか、ただ位置エネルギーだけをもってバルバロスに襲いかかる。そのままバルバロスを押しつぶす緑亀。相打ち覚悟の乾坤一擲の一撃。
そしてバルバロスの見せた捨て身の攻撃。それに応えるためには、一刻も早く緑亀を討つことだ。その思いと共に緑亀に向かっていくハンター達。
だが、赤亀も懸命に妨害する。岩井崎の痛烈な一撃を受けても、再び上半身を起こすと火球を吐き出し、ユーリに牙を剥いた。
火球がユーリの身を焼きつくすその寸前、小さく前に飛び込むようにジャンプし、そのまま一回転。華麗に動く彼女の身を火球がすり抜けた。
ユーリは回転した勢いのまま、再び低い姿勢から太刀を抜き放つ。今度ははずさない。狙うはリクが手裏剣を突き刺した緑亀の頭。足元まで伸びた金髪がなびき、白刃がきらめく。その剣風は緑亀の目を切り裂いた。
「……打ち砕く……硬さが自慢なら張り合って見せろ……!」
剣を収めた扼城が踏み込む。手には金属製の籠手。それを前にして緑亀に向かって体当たり。何の策もなしに体当たりしたのなら何も起こらなかっただろう。だが、扼城がその身を当てたのは緑亀ではなく、緑亀に突き刺した自らの剣だった。
巨大な木にくさびを打ち込み、それを叩くとどうなるか。木は真っ二つに裂けるときの様に、奥の奥まで突き刺ささる扼城の剣、それが緑亀にとっての致命傷となった。
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そして火球を吐き出すための上半身を起こした赤亀。それは、再び先ほど起こったことが繰り返されるという意味でもある。
「この一撃には自信があるぜ! 一人と一頭の力、受けてみやがれッ!」
岩井崎がサラダと共に駆ける。先ほどの一撃で向こう側まで駆け抜けた岩井崎が馬を返し、もう一度同じように駆け抜ける。狙う場所は先ほど当たった場所より少し上の位置。
一条の風が吹き抜ける。それはそよぐ風などではない。全てを吹き飛ばすような暴風。その風が吹き抜けた時、立ち上がっていた赤亀は見事なまでにひっくり返っていた。
後はハンター達の前にさらけ出しているその腹に、とどめの一撃を入れればいい。ストーンが駆け寄り一撃。そしてディアドラが太刀を振り下ろす。それは戦いの終了を告げる合図となった。
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戦いが終わっても、ハンター達の仕事はすぐには終わらなかった。緑亀の死体に押しつぶされているバルバロス。彼をいち早く救出しなければならない。
ハンター達が駆け寄り甲羅をよける。傷ついたバルバロスの体を、聖導士であるガイウスがその力でもって癒やす。
「ばっかもん! 若いもんは、無茶ばかりしよる。ワシのように時には老獪に動くのじゃ!」
バルバロスも随分年輪を重ねているが、ガイウスはそれ以上の年月を生きている。思わず説教を一つ垂れるガイウス。
「誰ぞ、ワシと一緒の風呂釜に入らんか? ハヨウ持ち帰ろう」
ガイウスはリクも癒やし終えると、力を込めて緑亀の甲羅を持ち上げようとした。自分の目標通り、甲羅を持ち帰って使うためである。だが一人ではびくともしない。
「……重いのう。誰か運ぶのを手伝わんか……?」
悪戦苦闘するガイウスのぼやきは、むなしく波の音にかき消された。
結局、どちらの甲羅はあまりの重量で、輸送に難があったため、諦めるより他なかったそうな。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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質問卓 鬼塚 陸(ka0038) 人間(リアルブルー)|22才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/11/17 00:20:56 |
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相談卓 鬼塚 陸(ka0038) 人間(リアルブルー)|22才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/11/20 01:40:49 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/11/15 14:19:26 |