※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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証拠として見せられたのは、かつてのシャーリーン・クリオール(ka0184)が引退が近づく頃にエルフハイムに届けようとしたためていた、レシピ集そのもの。記憶よりも随分と古びてしまったその紙が、確かな時間の経過を感じさせる。
なにせエルフ達は外見的な変化で時間を推し量れない。どれほど書物を丁寧に扱っても劣化を防げなったその原本は今は図書館で大切に保管されていたものだ。
それをこうして実際に手に取ることができるのは、執筆したのがシャーリーンであることは勿論、シャーリーン自身がエルフハイムにおいて尊敬や敬愛を集めていたからだ。
長命な彼らなのだ、シャーリーンと実際に面識がある者が今も多く暮らしている。一人の人間であるシャーリーンを目の前にしただけで十分なほど彼女のマテリアルは多くのエルフに記憶されている。本人確認なんて面倒な手続きが起きるはずがなかった。
本来シャーリーンが生きていた時代は、とうの昔になっていた。
聞けば自分は行方不明になったと。エルフハイム側でも捜索に力を貸したが最期ははっきりとわからないまま打ち切りとなったと言う話だ。
こうして生きているからこそ実感は薄いが、納得して順応していくしかないのだともわかっている。
「曾孫が、手紙だと思って持ち込んだとか……」
レシピ集を見下ろす。
孫達はそれぞれに家庭を持ち幸せになったのだと知れて嬉しい。
「更には玄孫が通い詰めているだって?」
どうもシャーリーンの性質を濃く継いだ子がいるらしく、エルフハイムの面々と交流を深めているらしい。意中の相手でもいるのかと気になるが、それは次に来た時にでも尋ねてみようか。
「……その後は、どうしようかねえ」
滞在期限は伝えられなかったが、同時に頼み事もされなかった。
林檎の女神が永住してくれるなら歓迎するとの空気は感じた。けれどほぼ常に各地を巡っていた身だということを彼らは知ってくれているから好きにするのが一番だと、理解してくれているらしい。
つまり、自由なのはかわらない。
こうして迎え入れてくれた彼らに、まずは今できる最高の手料理を振る舞おう。
玄孫が来たら、その帰還についていって。今生きている子孫達の幸せな笑顔を見ようと思う。
技術も自分の時代より進んでいて、宇宙船の修復も可能だろうから、そうしたらまた各地に旅に出よう。
時代が変わって、きっと新しい料理も生み出されているはずだから。
━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
【シャーリーン・クリオール/女/輝猟撃士/林檎の女神は生涯現役を貫く】