※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
それはまるで喜劇のような

 童女のように無垢な女は願った。愛は知れども恋は知らず、ただ与えることしかしてこなかった己にそれを教えた黒竜と番い花嫁になりたいと、そう願ったのだった。体を蝕んだ彼のマテリアルは常に存在を主張し、心の中までひたひたと染み入って――ハンターになって、手に入れたものは沢山あった。結ぶ絆も一杯あった。けれど強くなると決めたのも、戦いたい訳もいつしか全てが彼を中心に回っていて、最期には満たされない日を過ごしたような――。
 揺蕩う淵に腰を下ろし、黒の夢(ka0187)はやっと自身の姿というものを久方振りに見た。一等黒いが為に大凡、エルフのそれからかけ離れていた肌はむしろ現在は逆に白く染まっている。その代わりでもないだろうが、金色ではなく赤になった紋様は全身に刻み込まれていて、何よりも彼女を驚かせたのはその格好であった。飾り気のない服はそうだ、遠い過去に見たような覚えがある。更にその上からレース地のケープを纏ってヴェールを被った、この姿は己が思い描いた幸せそのものの形。ふと気が付けば傍には黒い花が一輪咲いていてそれを手折り、顔の前まで近付ける。金色が混じるそれは以前の己のようであり、愛しの彼のようでもある。半ば無意識に唇を寄せかけたとき、視界に巨大な陰影が差し、黒の夢は殆ど真上を向く勢いで顔を上げた。
『……何をしている』
 低く唸るような不機嫌だと物語る声。瞳孔が極端に小さい人ならざるものと目が合うと手にした花を放って、手をついて身体の向きを反転させると、ガルドブルム(kz0202)の大きな顔に抱きつく。回り切らずとも腕を回し彼の鼻先にそっと接吻を贈った。
「ダーリンこそ、ふらふらほっついて、我輩を寂しがらせるだなんて狡いのな。……でも我輩と汝は身も心も今は傍に在る。それが分かっているから、もう何も怖いことなんてないのな」
 強い者に焦がれる彼は他のハンターに夢中になることもあった。勿論一人の女として愛を注ぐ対象なのは自分だけだ。だが嫉妬に身を焼かれずにはいられなくて、夢中にさせようと必死だった。
「ここなら誰一人邪魔しないのな。だからダーリン、我輩と戦うのである」
 一度朽ち果てても彼の本質は闘争本能そのものだ。だからそうしたいと解る。挑発的に宣言すれば、彼はくつくつと喉を震わせつつ笑った。肉体を貪り合うことだけが自分たちのあいではない。暗闇の中で二対の金色の瞳がふと怪しい光を放った。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
本編でもちょこっと書いたんですが現在トップページに描かれている
白い肌に赤の紋様で花嫁衣装を着た黒の夢さんの姿がとても印象的で、
ガルドブルムさんが消滅して内側のマテリアルが消えた後の姿かなあ
とも思ったんですが(表情的にも何となく未亡人っぽい雰囲気もあり)
生来の黒い肌が彼女の精神面での強い呪いの象徴であるとしたのなら、
死後そこから解き放たれてもおかしくないのかなと勝手な妄想により
この姿で描写をさせていただきました。解釈違いだったらすみません。
またはじめは二人の世界を作る的な結末にしようかと思ってましたが、
ガルドブルムさんが平穏に暮らすところが想像出来ずまだバチバチに
やり合いそうな感じにしています。
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発注者:キャラクター情報
アイコンイメージ
黒の夢(ka0187)
副発注者(最大10名)
クリエイター:りや
商品:おまけノベル

納品日:2020/08/14 09:55