※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
些細な切欠

 その日は偶々、幼馴染が傍にいない日だった。
 喉が乾いて傍らに手を伸ばしても、右手が空をきる。いつもなら飲みごろの珈琲で満たされたカップを傾けているはずの時間だ。それがないことで、エルティアは少し前に伝えられた不在の話を思い出したのだ。
「……偶には自分で淹れてみるのもいいかもしれないわ」
 いつもより擦れたように聞こえる自身の声に不思議そうに首を傾げてから、キッチンへと足を向ける。
(淹れ方の本だって、読んでいるのだもの)
 知識があるのだから大丈夫……その認識を改めるまでの時間は、そう長くない。

 望む味の珈琲を淹れることができない現実に不満を覚えてからは、己にあった淹れ方を模索するために多数の淹れ方を研究した。その過程で思いついた方法で、古書の中に隠された一文を見出す切欠となったというのは皮肉な事かもしれない。
(完成した物語に手を加えるなんて、普通は思いつかないもの)
 知識を備えているというだけでも素敵だと考えているのだ、そもそも物語を粗雑に扱うという考えがない。
 そんなエルティアが『本、もしくは物語を記述した品に手を加える』という行動を起こすことは奇跡を越えた何かに近い。
 多少手を加えても、丁寧に扱えば元の状態に戻せる可能性があると気付いたことで、エルティアは紙面に対していくつかの実験を行うことを決意したのだ。

 言葉の並びを変えて新しい文章を見出そうとしてみたり、暗号になるような言葉を探し出して謎かけの意味を見出す事はもう、何度も繰り返していた。しかし決定的な答えは見つけられず、なのに諦められず常に目の届くところに置いていたその古書。
 そこに新たな活路が見出されたことで、どこか浮かれていたことも否定はしない。
(もし、全てが徒労に終わるとしても。写しは勿論作るし、修復方法も習っているのだから)
 一度決めてからは早かった。物語としての価値を失わないためにも新しい本へと内容を書き写していく。古書そのものが非常に古いものだったこともあり、新しい本へと知識を受け継がせることは誰も異論を唱えなかった。
 エルティアが、古書だけでなく本を粗雑に扱うことはない。それまでの行動が認められていたから。彼女が写しを終えた後、周囲は皆『気に入りだからこそ古書として愛でるのだろう』そう考えていたのだ。
 幸い、紙面を炙るのも、溶液に浸すのも、何もかも。誰にも気づかれることはなかった。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka0727/エルティア・ホープナー/女/21歳/闘狩猟人/好奇心が本質に抗った数奇な例】
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発注者:キャラクター情報
アイコンイメージ
エルティア・ホープナー(ka0727)
副発注者(最大10名)
クリエイター:石田まきば
商品:おまけノベル

納品日:2019/03/11 11:28