※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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剣士ロザリー誕生秘話?
――少女はずっと夢焦がれていた。
人間の世界に。
冒険の世界に。
読書が好きな彼女にとっては本の中の出来事も、現実に近いリアリティを持って認識される。
……特に世間を知らぬエルフであるのなら、なおのこと。
ロザーリア・アレッサンドリはそんな少女だった。
ある年の十月の頃のことである。
町にはオレンジと黒の色があふれ、どこかおどろおどろしくも愉快な雰囲気が漂う。
そんななかを、ロザーリアはいかにも楽しそうに軽やかに歩いていた。
明るい金色の長い髪に理知的な光の宿る銀の瞳。そして長い耳――彼女は、エルフだった。
元来エルフという存在は人間との干渉を好まざるものも多い。そんななかでロザーリアは人間社会に時々ふらりと迷い出てはいろいろと自分の知らない知識を持ち帰る、そんな少女であった。
……少女と言っても、ロザーリアはエルフであるため外見年齢と実年齢の違いは多少あるけれども。
とにかく、ロザーリアが人間社会を好み、ちょくちょく里を抜け出していたのは事実であった。
と。
ふと、目の前でずいぶんと賑やかな催しをやっていることに気がついた。
ロザーリアには――というか、エルフの里ではあまり縁のない行事だが、ハロウィンのパーティが催されていたのだ。
目にする人々は皆何か奇抜な衣装を身にまとい、更に菓子を口に含んでは楽しそうにはしゃいでいる。
「おねーちゃん、トリックオアトリート!」
そんな風に子どもたちから無邪気に声をかけられることもあり、ロザーリアは驚きを隠せなかった。
(私の知らないイベントが行われているのね……)
賑やかな雰囲気に心奪われ、ロザーリアはそちらへとゆっくり足を進めていった。
と。
「そこのエルフのお嬢さん! 参加者だろう、ほらもっとこちらへ」
若い男性に呼び止められ、声の主の方に引き寄せられていく。
「ずいぶんと綺麗だねぇ。仮装はするんだろう?」
「仮装?」
なるほどそれで皆の衣装がずいぶん奇抜だったのかと妙に納得はしたが、ハロウィンというイベントがまだ飲み込みきれていないため、あいまいに頷くのみ。
今彼女が身につけているのは明るいオレンジのチュニックに町で以前購入したモノクル、そしてレイピアを腰に差している。
そこで声をかけた青年はにこにこと微笑みながら、
「いやあ、なんだかとても朗らかな雰囲気のお嬢さんだねぇ。しかもその出で立ち! まるで昔読んだ『剣士ロザーリア』みたいだな」
「……剣士、ロザーリア?」
ロザーリアは目を丸くする。聞いてみればそれはリアルブルーにある小説の主人公のことで彼女自身のことではないのだが――青年がロザーリアの名前を聞いて驚いたのは言うまでもなかろう。
「へえ、お嬢さんもロザーリアっていうのか! こりゃあ何かのご縁ってやつだ、ちょうどそれに合わせた衣装一式があるんだけど着てみないか?」
そう言いながら青年が差し出したのは羽付帽子と鮮やかなマント。それは見目にも美しく、気品も兼ね備えていて、ロザーリアは一目で気に入った。
「これ……着ても良いの?」
ロザーリアは目の前の美しい衣装に、思わずそう尋ねる。
「せっかくのハロウィンなんだ、大歓迎さ」
青年は大歓迎という風に、にっこり笑った。
貸してもらった羽付帽子とマントを着け、『剣士ロザーリア』のコスプレはすっかりできあがった。
普通の人にとっては少々派手なのかも知れないが、派手好みのロザーリア本人にはしっくりきた。というか、まるで彼女の為にあつらえてあったかのように、その姿が様になっていたのである。
「やっぱりよく似合ってるねぇ」
青年は嬉しそうににこにこ笑う。何でもその人は転移者で、リアルブルーにいた頃からの『剣士ロザーリア』のファンであったのだという。
そんな話を聞くとイメージを壊していないかとおろおろしてしまうのだが、そういうわけでもないらしい。むしろ目の前にイメージぴったりのロザーリアがいることにときめきをおさえられないようだ。
ロザーリア本人もまんざらではないらしい。むしろに合っているといわれて喜ばないひとはなかなかいないだろう。
パーティは初体験であったものの、とても楽しい気分にさせられたのであった。
しかも飛び入り参加ながら、ベストドレッサーに選ばれたりと、良いことづくしの一日なのだった。
宴も終わり、帰る頃。
ロザーリアは被っていた羽付帽子を外し、名残惜しそうに見つめていた。
『よく似合っている』といわれ、実際にずいぶんと気に入った品だ。マントも同様である。
脱ぐのが惜しい。そう思えてしまうのである。
――と。
「ずいぶん気に入ったみたいだな。もしよかったら、これはあくまで仮装用のちゃちなやつだから、しっかりした洋品店を紹介しようか? そこの主もリアルブルー出身でね、『ロザーリア』シリーズを好きなんだ。君を見たらきっと喜んで衣装をあつらえてくれると思うよ」
そう言って、このパーティに引き込んでくれた青年は、にっこり笑った。
それからまもなく、ロザーリアは『剣士ロザーリア』の服装をまねて活動を始める。
モノクルに羽付帽子、マントを身につけ、腰にはレイピア。
これが彼女のトレードマークとなったのは、言うまでもない。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka0969 / ロザーリア・アレッサンドリ / 女 / 21 / 疾影士】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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今回はご発注有り難うございました。
お時間をずいぶんいただいてしまいましたが、お気に召していただけると幸いです。
ソーンとファナティックブラッド、いずれのロザーリアさんを書く機会があってこちらも楽しかったです。
またご縁ありましたら、その際はよろしくお願いいたします。