※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
POKER




 ハロウィンなんていう、元は何処かのお祭りだというそれは町中を賑やかす。
 本来子供達が仮装をしお菓子を貰う風習であったそうなのだが、近年は若者にも人気があるようで、街に繰り出せば仮装をする者達で溢れているだろう。―――そして、街の小さな酒場でも………。


 エヴァンス・カルヴィ(ka0639)が酒場の扉を開けると魔女達がパーティーをしていた。気合の入った仮装で、待ち侘びた今宵の宴を楽しむように。
「いらっしゃい。こちらの席へどうぞ」
 店主はエヴァンスに気付くと早速迎え入れていた。そして酒場内は団体客でほぼ席が埋まっていたが、かろうじて空いていた場所へと案内する。
 此処は本当に小さな店だ。
 ――しかし、隠れ処的な知る人ぞ知る秘かな名店でもある。
 料理は美味いし揃えている酒も良い。
 更に大々的には宣伝せず、店主が良くも悪くもマイペースに営業するスタンスであるらしく、サービスも型に嵌っていない。
 今日ならばハロウィンを楽しみたいという団体のお客様の為に、内装も通常営業通りではなく、照明もやや落としつつハロウィンらしく飾り、メニューも少しアレンジして即興でハロウィン風な料理を提供しているようだ。

 そんな店で、事件(?)は起きた――。

「ここにある酒全部と、とびっきり美味い肉を持ってきてくれ」

 エヴァンスはそう云うなり、笑みを浮かべていた。
 えっと驚く店主は何かの冗談なのかと一瞬感じたが、どうやらそうではないらしい。「金ならある」とエヴァンスが見せたのは、目を疑うような額の金銭が詰め込まれた袋。それは依頼で荒稼ぎした報酬なのだという。
 そう言われてみればなるほどと頷けた。今にも鼻歌を唄い出しそうな上機嫌ぶりが、ひしひしと伝わってくるからだ。
 ――だが。

「本当に全部ですか?」

 ――店主はつい確認をした。
 確かにエヴァンスの金袋を見たところ、酒を買い占める事は容易く出来るだろう。実はと言うと残りのストックが少なかったからだ。
 しかしそれでも実際に注文するとなるととんでもない量になる。
 ……が。
 エヴァンスの答えは、「勿論だ」。
 そんな清々しい回答を述べ、心配無用と頷く彼。
 返事を聴いた店主は……ごくりと生唾を飲んでいた。



 鵤(ka3319)は、店内の様子をふーん……と見つめ、随分賑わってるねぇと他人事のように感じていた。その直後、バリトン(ka5112)も入店する。待つ客は自分を含め二人。―――だったが。
ふらふらしていた所鵤を発見し、「いーかーるーがーちゃーん」と追いかけてやって来たメオ・C・ウィスタリア(ka3988)も並んで三人となる。
 メオは鵤を見つけるとこうしてすぐに近寄っていく癖があった。なぜなら彼に一番懐いているからだ。「とりっくおあとりーとー」。吸血鬼の格好をし、「お菓子をくれなきゃいたずらするよー」と強請り始める。
 だが鵤は「はいはい」、と。
 そんなふうに飄々と流したかと思いきや、一瞬である物を奪った。
 左手の鷹パペット『たかし丸』だ。
「あーーーー。またーーーー」
 メオにとって、たかし丸は大切な相棒である。
 お菓子をくれないなら悪戯する筈が……まさかのまさかで逆に意地悪をされて、拗ねるメオ。
「返してよぉぉーーーーーー」
 囚われのたかし丸。メオは愉快愉快と楽しむ鵤から取り戻そうと、奮闘する。

 一方バリトンはというと、そんなメオを、少しだけ眺めていた。
(ふむ……)
 ――戦士の匂いと、赤い髪。
(孫娘によく似ておるな……)
 色合いを孫娘に重ねつつ、同時にメオが軍人である事を見抜いていた。長年戦いに身を置いてきた者の勘というものが働いたのだろう。
 それに眸を見ればすぐに判った。
 眼に焼き付く十字が、数多もの戦場を駆け抜けてきたことを強く語るから。
「んー?」
 そしてその視線に、メオが気付く。
 奪われたたかし丸を取り戻した後バリトンの方へと向きながら、不思議そうに。
 その時にはもう彼の視線は違う方向を向いていたけれど、(絶対メオさんを見てたよねぇ……)、と。見た所、歴戦の戦士のようだった。巨岩をも砕きそうな豪傑な風貌、面識は……無い筈。そんなふうに少し体を縮めながらバリトンを窺っていると――。

「あ、すみません!」

 忙しそうにしている店主が彼らにようやく気付いた。
 そして彼らに駆け寄り、案内を始める。
 ――が。

「は?」
 鵤は思わず耳を疑った。
『酒は売り切れている』と言われたのだ。
 酒場で酒が売り切れる……なんてことあるのか?

「いやぁ……」
 店主は申し訳無さそうに、事情を話し始めた。
 なんでも今日の酒の分は入れ替わり立ち代わりでハロウィンパーティーをするお客さん達が、普段通りに仕入れていた来客用のストックの殆どを飲んでいってしまったそうな。
 彼らが満足した頃にはもう、酒の残りが僅かとなっていたようで……。
 そしてその次に来店したお客さんは――
「残りの酒を全部買占めて頂いておりまして……」
「残りの酒を買い占めたじゃと?」
 バリトンが思わず聞き返すと、店主はこくりと頷き、申し訳御座いませんと頭を下げる。
「はぁ」
 鵤は溜息交じりに呟く。
 折角飲む気分でやって来ていた鵤とバリトンだったが、どうやら本当に店から提供できる酒というのが残っていないらしい。
 残された選択肢は酒を諦めるか、もしくは別の店を探すしか無いか。
 ―――その筈だった……。

「悪いなお二方、ラストは俺が頂いたぜ~」

 上機嫌な客に声を掛けられ、彼らは振り向いた。
 ラストは頂いたということはつまり、店主から話に聞いた、残りの酒を買い占めた男ということだろう。
(ん……?)
 いや待て。
 どこかで見た事あるような……。
 目を凝らし相手の顔をよく見てみると、
「「……あ」」
 零れた声が被った鵤とバリトンは、思わず顔を見合わせる。
(「もしかして……おたくも知り合い?」)
(「そんなところじゃ。一度戦場で見掛けた程度じゃがな……。という事は、若いのもか」)
 声にせずとも目で通じあい、会話する二人。
 それから、
「あー!」
 彼についてはメオにも見覚えがあった。
 想い出したのは大規模作戦の日。
 当時少しだけ世話になった――
「焼肉の人だー」
 焼肉という印象しかない人だ!

「おや、お知り合いでしたか?」
 三人の反応を窺った店主は首を傾げる。
「あぁ。あの小僧はわしらの知り合いじゃ」
 バリトンが店主の問いに頷き、鵤がへらへらとした様子で続いた。
「このまま帰るってのもなんだしー? 俺ら同席させて貰うことにするわぁー」
「そうなんですね、かしこまりました」
 店主もそれならばとすんなり彼らを通すと、
「待ってよー」
 メオも、鵤とバリトンについていく事に。
 そして鵤とバリトンは悪い笑みを浮かべていた。
 酒を買い占めたのが彼なのだと知ったら、『酒は諦めるor別の店に行く』の選択肢にもう一つ増えるのだ。
 それは――
「トリックオアトリート。随分楽しそうじゃのう、小僧」
「トリックオアトリートぉ。大人しく酒をよこすか悪戯されるか選びな」
 『彼から頂く』という選択肢!

 テーブルには豪勢な肉料理と飲み比べ中の酒瓶が三本。
 恐らく店に借りたのであろう南瓜の冠をかぶりながら、もはや王様気分を味わっている赤髪の青年――エヴァンス。
 エヴァンスは鵤とバリトン、そしてついて来たのであろうメオの顔を改めて見ながら、ごくごくと大ジョッキでビールを飲み干す。
「酒か。そうだなぁ」
 勿論くれと言われてタダであげるつもりはない。
 けれど機嫌が良かったエヴァンスは、彼らにある提案をした。
「じゃ俺にポーカーで勝てたら、酒でも肉でも何でもくれてやるぜ?」
 ポーカー。
 賭け勝負としてもよく用いられるトランプを使ったゲームの事である。
「ほう?」
 バリトンは彼の提案を聴き、鵤へと視線を流した。
(「何でも、ねぇ」)
 鵤はへらへらと笑いつつ「いいぜぇ、乗ってやるよ」と言った。
「わしもそれで構わんぞ」
 バリトンも、鵤も、提案を飲む事にしたようだ。
「なんでもいいなら、メオさんはごはんがいいー」
「おう。俺が負けたら好きなだけ食わしてやるよ」
 メオの交渉もエヴァンスに快くOKされて、わーい、と棒読みで喜びを表す。
「たかし丸ー、エヴァンスちゃんがごはんくれるってー」
 勝負はさておき、もう既にごはん貰う気満々だ!
「だが言っておくが、そう簡単に勝たせてやるつもりは更々ないぜ」
 エヴァンスは強気だった。
 少なくとも自らポーカーを挑むぐらいには、ゲームの強さに自信があったのだ。
 それに今の上機嫌な彼には怖いものなしなのである。
 しかし、だ。
 ゲームに強いのは、この場でエヴァンスだけだった訳ではない……。
「そうかい」
 鵤は飄々と返事をした。
「お手柔らかにのう」
 バリトンも。
「よろしくー」
 メオも。
 エヴァンスが余裕綽綽そうにしている一方で、いつもと変わりない様子だった。だが、しかし。普通の反応に秘められた彼らの実力は決して普通だった訳じゃない。そう、決して……。
 それは戦いの幕が切って落とされた後に、エヴァンスは思い知る事となる。


 彼らは早速、店からトランプを借りてゲームを行った。相変わらず店は賑やかで、夜はまだまだこれからとばかりに浮かれている。

「後で泣いても知らないぜ?」
「こちらのセリフじゃよ」
 なんて言ってエヴァンスが余裕を持てていたのは、最初だけだった……。

「何ィ!?」
 エヴァンスは思わず叫ぶ。
 負けた。
 自分が負けたのか……。
 信じられない様子でじっと硬直していた。
「ハイ、エヴァンス君の負けね。そんじゃコイツはありがたく頂くぜぇ?」
 しかしそんな彼を気にも留めない様子で、鵤はエヴァンスから勝った分の金を巻き上げる。
 エヴァンスの金袋から、目標以上の達成により得たという莫大な依頼の報酬をがっぽり。
「おい、ちょっと待て!」
 エヴァンスは驚きながら思わず声が出た。
 ――が。
 鵤は云った。
「何でもくれてやるって事はよぉ、俺が勝ったらこいつを頂いても構わねぇってことなんじゃないのー?」
 そういう約束でしょ? ――と。
「くっ……仕方ない。いいぜ。男に二言は無いからな」
 エヴァンスは元々気前のいい性格だ。
 だからこそ金をあっさり引き渡す。
「男だねぇ、エヴァンス君」
 鵤はそんなエヴァンスの漢気を称えた。
 しかし心の中では、カモにしやすそうだと思ったらカモどころかカモネギ野郎だったな、なんて思っていたりもする。
 これは良いチャンス。遠慮なく搾れる所まで搾り取ろうと密かに心に誓う辺りも、容赦が無い。
 そして続けてバリトンが勝利を飾ると、エヴァンスの酒を巻き上げていた。
「まさかこんな小さな酒場に置いてあるとはのう」
 バリトンが勝ち取った酒瓶というのはそこそこ珍しい品だ。
 薫りが良く、コクがあり、深い味わいを楽しめる―――
 リアルブルーでは日本酒と呼ばれているもので、中でも絶品の酒なのである。
「それって美味しいのー?」
 眺めていたメオが訊ねてみる。
「うむ。なかなか良い酒じゃよ」
 杯で落ち着いて静かに味わいながら、バリトンはしみじみと浸っていた。
 そして彼の横に居た鵤は、
「どれどれ……」
 断りもなく当然のように杯に注ぐ。
「本当だ」
 鵤も一口で納得した。
「うまいなこりゃ」
 どうやら鵤にとっても気に入った味のようだった。
 そんなバリトンと鵤を、心底羨ましそうに見つめているエヴァンス。
 大の酒好きとして飲んでみたかった酒。
 しかし当然、負けたエヴァンスは一口も飲めないのである。
「残念だったねー」
 と、悔しそうな彼にメオが励ました。
 美味しそうな七面鳥をもぐもぐしながら……。
「ってちょっと待て!!」
 エヴァンスはツッコミを入れる。
 何故だ。
 何故負けたメオが七面鳥を食べているんだ?
 理由を問い掛けてみると………
「お腹すいたから」
 ――なるほど!
 しかしエヴァンスは、次からは勝ってからじゃないとやらないと強く断言。
「えー」
 エヴァンスの目が厳しくなってしまい、ガッカリなメオさん。
「鵤ちゃんー、手っ取り早く勝つ方法教えてよー」
 とりあえず次が始まる前に、そんなふうにお願いしてみる。
 メオもポーカーは弱くはないのだが、流石に自信があっただけにエヴァンスは強い。
「しょうがないねぇ」
 どうやら教えてくれるらしい。
 ってことでコソコソ。アドバイスタイム。
「なるほどー」
 そしてメオは、鵤から確り『手っ取り早く勝つ方法』を伝授されたようだ。

(「いやいや……アドバイス貰ったからってこんな短時間で強くなるもんでもないだろ」)
 なんて、エヴァンスは内心抱いていたが…………
 始まった次回戦では――

「何!?」

 メオが勝利を飾った。

「やったー」

「もう一戦だ、もう一戦!」

 きっとまぐれだと信じて勝負を挑む。
 次こそ自分が勝つだろう。
 ――しかし。
 何度やっても、

「もう一戦!」

 何度やっても、

「もう一戦……!」

 何度やっても、絶対に三人に負けてしまう。

「なんでなんだよぉぉ!!」

 つまりエヴァンスは絶対に負けるループから抜け出せなくなっていた。
 エヴァンスは畜生、と項垂れだす。無理もない。
 嘗ての富があっという間に流れていってしまったのだから。

「頂きまーす」
 メオは早速頼んだ料理をぺろりと完食。
 バリトンも、気持ちのいい豪快な飲みっぷりで酒を味わっている。
「それにしても……。
 若いのやりおるな、『負けないだけ』で精一杯じゃよ」
 そう鵤に話し掛けながら――。
「そりゃどーも?」
 鵤はその言葉の裏に込められた意味を瞬時に理解していた。
(「バリトン君にはお見通しってわけね」)
 ……と言うのは、実はというと。
 鵤はずっと自慢のイカサマを使っていた。
 因みに先程メオに伝授したのも、初歩的な『イカサマ』。
 エヴァンスは術中に嵌っていたというわけである。
 これはギャンブルの世界ではよくある話。
 見破られれば敗北。見破られなければ誰が何と言おうと勝利なのだ。
 ――そしてエヴァンスは今、イカサマが行われているのではと勘付き始めているところだった。しかし、何か確信があった訳では無い。所謂、直感だ。自分ばかりが負け続けている事に疑念を抱いていたし、ゲームの最中のなんとも言えない違和感がイカサマによるものであるなら、色々と辻褄が合う。
 ……だからこそ。
「もしかして……イカサマしてるんじゃないのか?」
 エヴァンスは思い切って、発言する。
 それも直感で、鵤に向けて。
(「おぉ。小僧もようやく気付きおったか)」
 バリトンはちらりとエヴァンスを見る。鵤のイカサマについては一足先に気付いていたのだが、敢えてどちらにも加勢はしなかった。酒を飲みつつ静観の構え、だ。
「……」
 メオも静かにエヴァンスへと視線を遣る。
「……ふぅん」
 そして鵤は、ようやく気付いたかと内心思っていた。しかし、だからと言って自らネタバラシするのは面白くない。
「おっさんを疑うのは良いけどよぉ。証拠はあんのー? 俺がイカサマしたっていう証拠は」
「証拠は………無いが」
「だったら、おたくの『思い過ごし』なんじゃねえの? エヴァンス君?」
 鵤は意味深に微笑む。
 それに全くと言っていい程顔色に変化は無いし、動揺もしていない。
 エヴァンスは生唾を飲み込んだ。彼はやり手な筈の自分が手をこまねく―――鉄壁のポーカーフェイスだ。
「……ッ」
 駄目だ。
 思いきって言った結果、やはりイカサマを使われていたのは濃厚な線のように思えた。だが肝心の決定的な証拠が無い以上、白状させるなんて事……到底できそうにないと悟るエヴァンス。
 ――ならば。
 依頼の報酬が入ってある金袋、残り全ての額を丸ごとテーブルにごそっと乗せた。そして。
「次の勝負でこいつを全部賭ける!」
「何?」
 その宣言に彼らは驚く。
「今度イカサマをやるなら絶対に見破ってやるぜ。だから真っ向から勝負してくれ! それからな……おっさん、バリ爺さん、メオ。次は俺が勝つ!」
 エヴァンスは熱くなって言った。
 たとえどんなに追い詰められている状況だったとしても決して屈しない。むしろ突き破って勝ってみせる位の意気込みだった。
 バリトンは、そんなエヴァンスを見乍ら思う。
(「やはりこの小僧、……わしの若い頃に少し似ておるわい」)
 一方、鵤は……
 不敵な笑みを浮かべていた。



(まあ、真っ向から戦いてぇってならそれでもいいけどよー」)



 そして迎えた最終ゲームにて。


(「だが悪いねえ。おっさんイカサマも得意だけど、真っ向から戦っても強ぇんだわ」)


 秘め続けていた実力を発揮した鵤がエヴァンスを抑えて圧勝したのだった。



「………なんでこうなってしまったんだ」

 深い悲しみに暮れてがっくりと凹んでいるエヴァンスに対し、バリトンは告げる。

「言ったじゃろう? トリックオアトリート、とな」

 最初に大人しく酒を渡していたら良かったものを。
 ……なんて。今更どうしようもないが。

 そんな見るからに精神ダメージを喰らっているエヴァンスの横には、金袋をありがたく懐にしまって機嫌のいい鵤。
 この男の器用なイカサマの技には感心したものだが、最後のゲームで見えた飛び抜けたギャンブルの才能には思わず目を見張った。

「―――まともにやったら勝てんなというのは見抜いたわい」

 なんていう感想をバリトンが零すと、鵤は。

「よく言うぜ。おたくだって只者じゃあねぇの、分かってんだぜぇ」
「ふっ。傭兵50年超の酒場通い分、『それなり』にというだけじゃよ」
「ははっ、……おっかねぇ爺さんだこと」

 そんな二人の会話が聴こえていたエヴァンスは、余計凹むことに。機嫌良くポーカーを挑む前に相手をよく見るべきだった、と。

「あれー、鵤ちゃんとバリトンちゃんはー?」

 そこに、二人を探すメオの声。

「ん……?」

 エヴァンスは顔を上げてみると、確かに先程迄そこに居た筈の二人は居なくなってしまっていた。どうやら先に帰ってしまったらしい。メオとエヴァンスを、残して。

「……」
「……」

 二人は暫く見つめ合い、

「……じゃあ罰ゲームしよっかー」
「え」

 そして動いた。
 メオ選手!
 小型のマイ得物である斧を構える!

「おい、待て! どういうつもりだ!」

 そしてそれを―――

「や、やめろー!!!」

 ぶん回したああーーー!!
 ハロウィン最大級の理不尽がエヴァンスを襲うーーーー!!!!!

「はっぴーはろうぃーん」

 ゴツッッ

 そしてエヴァンスは綺麗に宙を舞い、ドカッと床にぶつかる音を響かせた。
 しかしそんな彼を気に留めず、メオは涼しい顔で改めて着席する。
 更には手を挙げて店主を呼ぶ。

「追加の注文いいー?」

 この時、エヴァンスは心の中で嘆いていた。
 ――メオ・C・ウィスタリア。戦場での活躍に目を見張り、隊に誘いたいと思っていた相手だった。まさかこんなに手に負えない人物だったなんて!

「ハロウィンなんぞ大っ嫌いだぁぁぁぁ!」

 エヴァンスは全力逃亡。
 依頼で稼いだ報酬も、皆の酒代と飯代、そして賭け金として消えてしまったし、ゲームには負けるし、罰ゲームは受けるし。散々酷い目に遭った一日となってしまった。だから、とても月が綺麗な夜だったけれど、こうして思いっきり叫ばずにはいられなかったそうな。









 HAPPY HALLOWEEN ?





━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【ka3319 / 鵤 / 男 / 43 / 達人級のギャンブラー】
【ka0639 / エヴァンス・カルヴィ / 男 / 28 / ハロウィンの王様】
【ka3988 / メオ・C・ウィスタリア / 女 / 23 / ポーカーフェイスの吸血鬼】
【ka5112 / バリトン / 男 / 77 / 50年超のベテラン傭兵】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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たいへんお待たせしてしまい、本当に申し訳御座いませんでした。
こんにちは、瑞木雫です。この度は、ゴーストタウンのノベルの御依頼頂きまして、誠にありがとうございました!
皆さんの絡みを描くのが本当に楽しかったです。アドリブが満載で、御発注のイメージ通りになれているかどうかドキドキしておりますが、お気に召して頂けたら幸いです…!

もしも内容の中に不適切な点等御座いましたら、是非、遠慮なく仰って頂けた方がとても有り難いです。

皆さんにとって思い出のハロウィンの物語となれていますように。
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発注者:キャラクター情報
アイコンイメージ
(ka3319)
副発注者(最大10名)
エヴァンス・カルヴィ(ka0639)
メオ・C・ウィスタリア(ka3988)
バリトン(ka5112)
クリエイター:-
商品:ゴーストタウンのノベル

納品日:2016/01/20 15:23