※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
-
愛しき龍よ、Good Night
●
折角龍園まで来たのだからと、サヴィトゥール(kz0228)と別れた蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)は龍園内を探索して帰ることにした。
ふらりふらりとあてどなく歩き、気がつけば大きな洞窟の前にいた。
人の気配を察したのか、洞窟の入り口前にいた飛龍が顔をもたげ、蜜鈴を見る。
「おや、おんしの家じゃったか? 起こして済まなかった……なんじゃ、おんし……怪我を……」
「もう飛べぬ飛龍だ。そこはそういった負傷した飛龍達の閨になる」
唐突な声に蜜鈴が驚いて振り向くとそこにはサヴィトゥールがいた。
「おんし、いつから……」
「少し前だ。どうした? 帰るのではなかったのか?」
サヴィトゥールが飛龍に近付くと、飛龍は安心したようにその場に再び伏せ、丸くなる。
「少し、散歩してからと思ったのじゃが……」
「そうか。今は中に幼獣たちがいて気が立っている飛龍も多い。用が無いなら向こうで話そう」
道すがらサヴィトゥールは今の場所には今年孵った飛龍の幼獣達がいるのだと蜜鈴に教えた。
あぁやって戦場に出られなくなった飛龍達に後裔の教育係になってもらうのだと。
人と生きる上でのルールを幼獣に教え、不要に火を吐かないように躾けたり、危険と危険ではない物事を教えるのも彼ら負傷した飛龍達の役目なのだと。
「彼らは勇猛で誇り高い。ゆえに一命を取り留めても戦えなくなるとすぐに死んでしまう。
だが、幼獣の世話を頼めばその役割をきちんと果たしてくれる。
今年は特に幼獣が多いから、彼らは大変そうだが、その分活き活きしているな」
そう話すサヴィトゥールの表情は柔らかい。
「そうか……幼獣も逢うてみたかったのぅ」
「この時間では無理だな。明るい時間ならまだしも」
気付けば転移門の前まで戻ってきていた。
「今日は色々と世話を掛けて済まなんだ。
……のう、サヴィ。明るいうちに来れば、子らにも逢わせて貰えるのか?」
「あぁ。……ただ、タイミング的にこの辺一帯を走り回って探すことになるかもしれんが」
「本当か!? 約束じゃぞ!」
瞳を輝かせた蜜鈴を見て、サヴィトゥールは小さく笑った。
「では、気を付けて帰れ」
先ほどのやわらかな表情はすぐに消え、サヴィトゥールは背を向ける。
その背に向かって蜜鈴は微笑んだ。
(どうか、全ての龍と龍の子らに安らかな眠りが訪れんことを)
蜜鈴は満天の星に願いを掛けて、そして転移門を潜った。
━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
この度はご依頼いただき、ありがとうございます。葉槻です。
おまけ……ということで、そういえば蜜鈴さんって、飛龍の保育士体験来てなかったですね……と思い出しまして、こんなワンシーンにしてみました。
本当はね……龍達と戯れるシーンとかも書きたかったんですけどね……ジスーががが。
そんなわけで、少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。
この度は、ステキなご縁を有り難うございました!