※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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さながらサンドリヨン
それは『五年前』のある日。
ばきん。
硬い音が響いて、尾形 剛道(ka4612)は転びそうになった。
理由はすぐに判明する。ピンヒールのヒールが折れてしまったからだ。
「チッ、またか」
剛道は溜息を吐く。片方は無事だけど、如何せんヒールなものだから、高さのバランスが酷い。仕方がないので両方脱いで素足になった。
より際どい戦場に身を投じる為と、彼は日常的にピンヒールを愛用している。けれど大の男がピンヒールを履いて激しく戦えば、あっと言う間にヒールは折れた。
しかもあまり頓着しないために適当な安い物を買うから尚更だ。そも――なぜ、女の装飾品とはあんなにも無駄に高いのだ?
また買いに行かなくては。大柄、しかも男である剛道の足に合うサイズのピンヒールはなかなか見つからないのに。面倒臭ェ、また溜息。
「なんだ、ヒール折れたの?」
と、愛している男が顔を出す。「ご覧の通り」と言わんばかりに剛道は折れたヒールを見せた。男は「あらー」と苦笑して、
「じゃあ買ってくるわ」
「……は?」
剛道が聞き返す前に、男はひょいと何処かに歩き出していて。
戻ってきたのは間もなく。
なんとも、まぁ、豪勢なラッピングだこと。
ブランドに詳しくない剛道でも、箱を見ただけで分かる。
「……これ絶対高い奴だろ」
「そうだよ?」
あっけらかんと答えつつ、解かれる包装。
「足だして」
目の前で傅いた彼が笑う。剛道は一瞬だけ躊躇するも、何とも言えない表情で従った。
差し出された足。
血のように真っ赤なピンヒール。
鮮血のように艶やかで。
薔薇のように美しい。
「……うん、ピッタリ。綺麗だ。似合ってるよ、『 』」
名前を呼んで、彼は傅いたまま剛道を見上げた。剛道は眉根を寄せる。
「男に言う台詞かよ」
「ピンヒール履いてる人に言われたくないなー」
「うっせェ黙れ」
新品のキック。
なんだかむず痒いような心地がしたから、もう一発。
するとスイッチが入ったから、二人は愛し<殺し>合いましたとさ。
――彼から貰ったピンヒールは、間もなくボロボロになって、折れて壊れてしまったけれど。
今でも真っ赤なピンヒールを見ると、そんなことをなんとなく思い出す。
かつ、こつ。今日も剛道は足音を高らかに響かせる。
戦い<愛し>合える場所を求めて。
『了』
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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尾形 剛道(ka4612)/男/24歳/闘狩人