※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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日本庭園にて
「瀬川さん……こ、ここでいいですかぁ?」
おどおどしつつ聞いて、弓月・小太(ka4679)さんが私の前にある長椅子に腰掛けた。
ここはとある公園の日本庭園。小さな池があり、ほとりに休憩できる東屋がある。周りは庭木に囲まれ、竹林もある。公園の他の場所から閉じることで雰囲気のある空間を保っているのだ。
公園の他の場所で響く声すら遠く感じる。
そんな場所で。
「ぼ、僕一人ですよね。何だか緊張しますねぇ」
腰掛けたものの、落ち着かない。どうぞ、と茶を出すとようやくほっとする。
「今日は僕のインタビューって聞きましたけど、何を話せばいいんでしょうかぁ?」
落ち着くと使命を思い出したように聞いてくる。先ほどの自然な様子が失われてちょっとがっかりする。
仕方ないのでこの場所をどう思う、と聞いてみる。
「ええと、静かでゆっくりできる場所ですよねぇ」
ぷ、と軽く噴き出してしまった。
「は、はぅ?」
びくっ、と引きつつ赤くなってしまった。
ごめんごめん、と謝って、あまりに小太さんが静かでゆっくりした様子だったからつい、と説明する。
「そ、そうなんですかぁ?」
自覚はないですぅ、と言葉が続いた時に気付いた。
小太さん、姿勢正しくこちらを向いている。
根が生真面目なのだろう。話をする人がいればそちらに向く。何か役目があればそれを全うしようとする。インタビューするから、とここに呼び出したので、インタビューを受けることに全身全霊を傾けようとしているのだ。
もっとも、恥ずかしがり屋ではあるようでこちらの瞳をまっすぐ見てくる、というようなことはない。座った位置も一定の距離を保ったままだ。
こういう子は借景を当てるに限る。
「え? 瀬川さんの方は向かず、池や竹林を見ながらしゃべってほしい、ですかぁ?」
申し出るとびっくりした様子。
それでもお願いしたようにしてくれるので助かる。
「この服装ですかぁ? 雅楽や舞をならってますからぁ」
「いま水面に落ちた葉っぱのような、動から静とか……落ちて終わるんじゃなく落ちてから始まるんじゃないかとか、そんなのを意識しながら舞ってますぅ……」
日本庭園の背景の中、いい取材になった。
最後、小太さんが立ち上がる。
「こちらこそ、今日はありがとうござ……はうっ!」
柱の出っ張りに青い袴を引っ掛けて、はらり。
なるほど。
恥ずかしがり屋だが、そういう星の下に生まれているらしい。