※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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うつつにもどりて
陽が高くなった頃。
ようやくうたた寝から目覚めた氷雨 柊(ka6302)は、柱に寄りかかったままうんと伸びをした。
すると、いつの間にか膝で眠っていた白猫がずり落ちそうになり、恨めしそうに柊をひと睨み。
「あらぁ、いつの間にお膝にいたんですー? 起こしてしまいましたねぇ」
ごめんなさいねぇ、と顎を撫でてやると、白猫はすぐにごろごろと喉を鳴らした。
未明に“怖い夢”にうなされて起きた時と違って、ちょっと眠っただけなのに随分頭がスッキリしている。陽の光のお陰か、夢は見なかったのだ。
満足した猫が家の中へ入ってしまうと、柊も後を追い部屋に戻った。
いくら小春日和とは言え、秋ももう終わり。冷えた身体に綿入れを羽織り、ほぅっと息をつく。
「……うーん」
とは言え。
“怖い夢”を見たあとは、やっぱり何だか人恋しくて――先日大怪我して還ってきた彼の顔が、無性に見たくて堪らなくなった。
足許で箱座りする猫に言うともなく、
「怪我はもう治ったでしょうけどー……差し入れ持って、会いに行ってしまおうかしらー」
呟き頬に指当てて、小首を傾げる。
突然行ったら迷惑かしらー、少しは喜んでくれたり、とか、するかしらー……と、部屋の中を行ったり来たり。猫は知らん顔で、ゆさりと尾を振っている。
と。
柊の足が抽斗の前で止まった。
着替えるのかと思いきや、
「やっぱり、止めておきましょうー」
言って取り出したのは、1枚の写真。
そこには、婚礼衣装に身を包んだ彼と柊が写っている。
祝言を挙げたわけではなく、話せば長くなる事情により、付き合う前に撮ってもらったものだ。
本当の祝言の写真じゃなくても、柊にとっては宝物。けれど飾るのはちょっぴり面映ゆくて、でもいつまでも抽斗の中じゃ彼に申し訳ないかしらぁ、その内に勇気を出して飾ろうかしらー……なんて思いつつ、抽斗にしまったままにしていたのだ。
写真の彼の頬に、指先でそっと触れてみる。
「元気になったから、早速依頼を受けて、飛び回っているかもしれませんしねぇ」
それからちょっぴり唇を尖らせ、うりうりとつっつく。
「たまにはそちらからも誘ってくれないとぉ、拗ねちゃいますからねー?」
今頃彼、くしゃみしていたりして。
同行した仲間に「お、噂されてんな」なんてからかわれている姿まで想像して、柊はふふっと笑った。
「さてぇ。良いお天気ですしー、洗濯でもしましょうかぁ」
言って、ちょっと悩んでから再び写真を抽斗に戻すと、とてとて廊下を駆けて行く。
部屋に残された白猫は、抽斗をじぃっと見上げた後、にゃあと一鳴きしまた眠りについた。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka6302/氷雨 柊/女性/20/銀繻子猫娘】