※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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To toe
「ああ、こんなに真っ赤になってしまって」
小川から上がった後、アークは傍にあった乾いた岩の上に座らされていた。
シャンカラは跪き、濡れたブーツを恭しい手付きで脱がせていく。すっかり素足になると、冷たさで感覚が麻痺した爪先を両手で包み温めようとした。
「大丈夫だから……手、離して?」
「しもやけになったら大変ですから」
却下されてしまい、かと言って裸足で氷原を逃げ回る訳にもいかず、アークはされるがままになる。
足先とはいえ普段人目にさらすことのない部分を見られ触れられるというのは、こんなにも心細くなるものらしい。落ち着かず、居心地悪く身じろいだ。
「さっきはすみませんでした」
ぽつりと彼が呟く。
「残酷だなんて言ってしまって……『もしも』の話に、僕が勝手に期待してしまっていただけなのに」
「期待?」
尋ねると、顔を上げた彼と目が合った。彼の碧い瞳は、アークと幼馴染の彼女を映していた時と同じように、穏やかに凪いでいて。
「いけませんか? 僕は……龍人は短命な上、隊長で天寿を全うした者は稀ですから、ずっと独りで良いと思っていました。それなのに、他でもないアークさんにああ言われてしまったら」
「?」
首を傾げると、彼は困ったように笑った。
「僕が異界で過ちを犯しそうになった時……彼を殺すつもりで振るった剣の前へ躊躇いもなく飛び込んできて、僕を諌めてくださったでしょう?
そんな大恩ある貴方にああ言われてしまったら……期待は、しますよ。良くないことが重なった末の『もしも』であっても」
「シャンカラ、」
「別に叶わなくて良いんです。アークさんに傷が残ってしまったら僕も悲しい。彼女とも本当にお似合いでしたから、むしろ叶わない方が良いと、今は思っています」
返す言葉を探していると、彼はアークの爪先へそっと唇を寄せる。
「ただ……ほんの少し期待して、独りの時間の慰めにすることを許してください」
爪先を柔らかい感触が掠める。いつの間にか感覚が戻っていたらしい。触れるか触れぬかの僅かな温もりを知覚した途端、思考回路がショートする。言いたいことが色々あるのに、浮かぶ言葉は次々白く塗りつぶされていく。
「……アークさん? え、またですか!? しっかりしてください!」
彼の声が急速に遠のいていく。
(『また』って、誰のせいだと……)
言い返すことができないまま、アークは意識を手放した。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka6568/アーク・フォーサイス/男性/17歳/誰が為に花は咲く】
ゲストNPC
【kz0226/シャンカラ/男性/25歳/龍騎士隊隊長】