※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
『待て』と『お預け』

「……えーっと」

 アークは当惑していた。

『もう少しだけ、このままで』

 そう懇願されたはずなのに、もう結構な時間彼の腕の中にいる。気がする。
 耳の中で自分の鼓動が喧しいくらい鳴り響き、全身を巡る血が沸騰してしまいそう。
 シャンカラの表情を窺おうとするも、キツく抱きしめられすぎて上手くいかない。
 アークはもじもじと身じろいだ。

「あの……シャンカラ。少し、苦しい」

 そう訴えると、慌てたように彼の腕が緩む。けれどそれでも回された腕は解けぬまま。
 目が合うと、彼は上気した頬でこの上なく幸せそうに微笑み、

「アークさん……」

 掠れがちに名を呼び顔を近寄せてきたものだから、アークは大急ぎで彼の口を両手で塞いだ。

「だっ、だめっ!!」
「ふへっ?」

 口を塞がれたまま、彼の眉尻が情けなく垂れる。

「うー? ふぉういういひれうへいへへくらさったんらないんれふか?」
「いやそうだけどっ……というか、そういう意味って、どういう……」
「へ? ほいひ、」
「言わなくていいっ、というか言わないでっ」
「ふぇー……ふひふへほられれふか?」
「そっ、そういうのは、まだ早いというか……っ」

 ここへ来て、勢い彼の唇に触れてしまっていたことに気付き、アークは声にならない声を上げて手を離した。手のひらに残る感触から必死に意識を背け、

「シャンカラに触られるのは嫌じゃない。好き……だよ。でも、」

 まだ言い終わっていないのに、ぱぁっと顔を輝かせた彼が再び顔を近寄せて来たので、アークはもう一度その口を塞ぐ羽目になった。

「きみは……この前といい、案外……」
「?」
「……なんでもない。と、とにかく……この前みたいなのとか、今みたいなのとか……いきなりはどうすればいいか分からなくなるから、その……ゆっくり、慣れさせてほしい、というか……」
「!」

 するとシャンカラ、急いで腕を解いたかと思うと、両手を膝に置き背筋を正して座り直した。

「どうしたの?」

 尋ねると彼は生真面目な顔で言う。

「アークさんを怯えさせてしまうのは本意ではありませんから」
「極端だね……」

 呆れ混じりにその横顔を仰ぐと、彼は出し抜けににっこり笑った。

「でも、お忘れかもしれませんが僕も一応成人男性なので。『待て』もほどほどにしていただけると有り難いです」
「!?」
「ピアス、とても良くお似合いですよ」

 アーク、硬直。その髪に、恭しく彼の唇が触れた。





━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

【ka6568/アーク・フォーサイス/男性/17歳/誰が為に花は咲く】
ゲストNPC
【kz0226/シャンカラ/男性/25歳/龍騎士隊隊長】
  • 0
  • 0
  • 0
  • 0

発注者:キャラクター情報
アイコンイメージ
アーク・フォーサイス(ka6568)
副発注者(最大10名)
クリエイター:鮎川 渓
商品:おまけノベル

納品日:2018/08/16 17:52