※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
きっとこんな始まりだった

 それにしても。
 哲学的ゾンビと言いつつ、先程の冷笑といいそのあとの照れ隠しといい、蓄音石の僅かな音声データから合成したくせに見事な再現度だと我ながら感心したくはある。
 自問自答の為になると言うのは結局現時点で気が付いた有用性であって、彼をつい生み出したその最初の動機はきっともっと単純だった──もっと色んな声が聞きたくなった。
 そうして目覚めた、彼の最初の声が、
『──冒涜ですよね』
 そんな、氷点下まで冷めきった声だったとしても。やっぱり……ああ、こんな声は余計に、あの蓄音石から、自分の想像だけで再現することなんて難しかっただろうと感動すら覚えてしまったものだ。
 とはいえ。
『僕がこんな復活を望む事が……分かってなかった訳がありませんねむしろ分かりすぎていたわけですよねこんな物まで仕込んでくれて』
 それはそれとして責め立てられるのはグサリと刺さるものではある。実際ぐうの音も出ない部分はある。ああそうだ。彼は嫌がるだろうと分かっていた。彼女が死ぬまで自壊を防止するプログラムなんてのを組み込んでいるくらいなのだから。
『こちらの意向は無視して自分の好きなようにやって、好意なのだから受け入れろと押し付けるなら、成長がありませんね。僕が言いたい事もあの時とまったく同じですよ──そのザマで僕が居なくても幸せになる等という言葉のどこに説得力がある』
 ……ああ本当、我ながら忠実に再現した。
 こういう人だった。己の道理に合わないと感じた事についてはまず徹底して棘を突き立ててくる。相手の弁解を聞く前に言うべきと思ったことは全て叩きつけてくるのだ。
 久々に聞いた彼の冷たい声は、ついそんな始まりの日を思い出させた。それからここまで、他愛のない会話を出来るまでには、それなりに対話を重ねる必要があったんだよな、と。
 改めてその事を噛み締めて、自分は彼とこれからどんな対話が必要だろうかと考える。彼が己に結婚を望むのは、未だに彼が己の存在を不本意と感じていることに他ならないだろう。自壊阻止プログラムを取り消させる為に、彼女自身に彼を不要と判断させようと言うのだ。
 ……我ながら、酷い仕打ちだ、と思う。でも、望み通り彼を消滅させる前に、彼自身に自分が必要だと学習し直させることは出来ないかと考える。
 彼は厳しい人だった。だが、言うだけ言ったそのあとは、全く取り付く島が無いという訳でも無かったのだから。






━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
凪池です。おまけをお届けします。
私なりに彼というものを考えて、目覚めた直後はきっとこんな感じになるだろうなと。はい、相変わらず厳しいというか、やっぱり、そのへん上手く、自分のキャラとしてどう動くだろうかと言うのがごまかせないMSで申し訳ありません。
ただ私としては、少尉が正しくてメアリさんが間違っていると言いたいのではなく、ただこいつ一人がこういう局面ではこう感じるだろう、ただそれだけの事をありのままに書いただけで、やはり皆さんもそれに対して、それぞれに思うままに反応を返して頂ければそれで良いのかと最近は思います。
改めて、今回のご発注、それからこれまでのご縁に感謝します。
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発注者:キャラクター情報
アイコンイメージ
メアリ・ロイド(ka6633)
副発注者(最大10名)
クリエイター:凪池 シリル
商品:おまけノベル

納品日:2020/02/03 10:37