※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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いや、嘘ですけどね
「で、ねえのか恋バナ。幼少期の初恋とか」
まだ言うか、と少尉はメアリを半眼で静かに見下ろした。
初恋。初恋だって?
「……このまま行けば、貴女ということになるんじゃないですか?」
震えを抑えて。
静かに、平坦な声で告げてやった。
一度目を閉じて、ともすれば止まりそうな呼吸を一つする。
目を開いて、真っ直ぐに見直した彼女の顔は、完全に虚を突かれた顔をしていた。
瞳が揺れる。これまで感情を伺いにくかったそこにはっきりとした光彩が生まれた。その色。その意味。
……分かってはいた。彼女は決して「そんなつもり」ではないのだろうということは、何となく。
No、という答えは覚悟していて。だけどもう一つ理解できてしまう。その理由。そうなのか。貴女は。
……ならば。
「辛い恋など止めて、僕にしませんか? 大切にしますよ」
──短い間ですけどね。
すっかり皮肉とセットにすることが身に付いた思考がそこまで思い浮かぶが、今はそこは口にしないように控えた。
「う……あ……、私、は……」
呻くような声だった。苦し気。その苦しみは自分の言葉の拒絶という重みからか。それとも僕の言葉でその苦味を自覚させられたが故なのか。
震える唇。瞳が目まぐるしくそこに宿す輝きを変えていく。少しだけ満足した。きっとこの彩は、僕にしか見られないものだ。……ああそうだとも。ただこれが見たかった、だけ。
「いや、嘘ですけどね」
だからそう。ここまでだ。
「……。嘘、かよ」
声はまだ掠れていた。どこかすがるように。
「これくらいの意趣返しはされるだろうことをした自覚はあるのでは?」
「まあ……そうか」
言って、彼女は深く息を吐いた。安堵したように、見えた。
「……思ってたより、食えねえところもあるんだな」
冗談にしては悪質が過ぎると言いたげに、彼女は今日一番険しい声で言ってきた。
「思い知って、凝りてくれるなら望むところですよ」
涼しい顔で受け止めて見せる。
そう。思い知ればいい。自分など共に居ても不快な人間だと。
懲りればいい。この可能性を全く考えていなかったのであれば、実際女性として迂闊に過ぎるだろう。
流石に何か気まずさを感じたのか、彼女がケーキを食べ進める手がやや早くなった気がする。
それでいい。こんな時間は、さっさと過ぎればいい。
──嘘が嘘で済むうちに。
━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka6633/メアリ・ロイド/女性/20/機導師(アルケミスト)】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご発注有難うございます。
いや、嘘ですけどね。(三度目)
おまけノベルというとIF of IFという感じですので、ええ。
本編じゃ絶対できないことをやってやろうという凪池の無駄なチャレンジ精神が毎回試される代物に。
この可能性が思いついてしまってそれでも流石に自重すべきだろうという事でまあ、供養なのですが。
何もかもなかったことになるとはいえそれでも不愉快だという事であればお申し付けくださいませ。
許容範囲でしたら、ここだけの話初稿はもっと少尉の失恋具合が酷かった(待て
改めまして、ご発注有難うございます。