※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
トリプルJは活字中毒

「ほー、こんな喫茶店もあったんだな」
 トリプルJ(ka6653)、今日は暇を持て余していたので喫茶店に入って時間を潰すことにした。
「店内禁煙ですのでご了承ください」
「分かってるよ」
 店員にいわれ世知辛い世の中になったもんだと適当な席に着く。
「……しかし」
 煙草が吸えねぇってのは困ったな、と口をへの字に曲げる。
 仕方ない、とメニューを何気なく開く。
 その時だった!
「な、なんだ?」
 目を見開いた。
「分厚いメニューだなとは思ったが、これは……」
 足を組んで身を崩した姿勢を正した。で、真剣に読み込む。


【本日の珈琲/希望】
 人は忘却を恐れる。
 それは大切にしていた愛情や喜び、愛おしさやあこがれを失う可能性があるからだ。
 忘却は神である。
 なぜなら、神は、奪いたまい、与えたまうものであるから。
 本日の珈琲は本日限り。本日に与えられるが、明日には奪われる。
 それは間違いない。
 ただ、この味わいはあなたの心に残るだろう。
 なぜなら神は明日、本日の珈琲を奪うから。あなたの心までは奪わない。

・本日の珈琲
 キリマンジャロ……400円(税込)


「……読ませるじゃねーか」
 じーん、と顎を少し上げて噛みしめている。
「じゃ、次はどうだ?」
 J、気に入ったようで次々と読み進む。
 すっかり夢中だ。


「へえ、読書が趣味ですか」
 ところ変わって同盟領の片田舎「タスカービレ」。
 イ寺鑑(kz0175)が珍しく東方茶屋の手伝いをしていた。
「趣味っていうか、活字中毒だな」
 J、ここは喫煙していいのでぷはー、と存分に煙草をふかしながら特産の白茶を味わっている。
 鑑がそういったのは、Jが持参した本を読んでいたからだ。
「意外ですね」
「そうか? それより、こっちの世界にもパルプマガジンやらミステリやらがあればなぁ」
 本を閉じてぼやくJ。
 でもって、ちらっと東方茶屋のメニューを見た。
 で、ため息。
「な、なんですか?」
「もうちょっとこう、読ませるようなメニューだったらなぁ、と」
「は?」
 鑑、怪訝そうにした。
「いやだからよ。先日、文学的で格式高く読み手を唸らせるようなメニューのある喫茶店に入ってよ」
「文学的?」
「いいからここも努力してみろって」
「はいはい。まったくもう」


 で、後日。
「そういうことじゃねぇんだよ……」
 J、鑑からスプーンのように小説のページをちぎって添えた白茶を出されてがっくりするのだった。


   おしまい





━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
トリプルJさま

 いつもお世話さまになっております。
 おまけ小説は、設定に記載のある「煙草をふかしながらメニューの文字で心を慰める」という活字中毒っぷりに注目させていただきました。
 普通のメニューを読み込んで「読ませるねぇ。腕の立つ作家だ」とかいうのは既存のギャグマンガにありましたので、実際に読ませるような文章をメニューに組み込み、本編で出演指定のありましたイ寺鑑をこちらにも出張らせて被害者に、という構成です。
 オチがやや弱くて申し訳ないですが、ネタとJさんの食いつきっぷりを楽しんでくださいませ。

 では、ご発注ありがとうございました♪
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発注者:キャラクター情報
アイコンイメージ
トリプルJ(ka6653)
副発注者(最大10名)
クリエイター:瀬川潮
商品:おまけノベル

納品日:2019/10/23 16:39