※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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嗤う鬼
銀と猪川來鬼は、鬼の二人組である。
同族の男女で、趣味嗜好も割と似ている。
行動を共にすることが多く、二人でいると楽しそうにしている。
ともすれば『カップル』(より古い言葉で『アベック』、あるいは最近の言葉で『リア充』)と、端から見れば思うかもしれない。
だが、尋ねればきっとそれを否定するだろう。
自分たちはそういう関係ではない。
似て非なる、違うものだと言うのだろう。
あくまでオトモダチ。
ざっくり言えば同好の士。
同じ方向を向いているだけの、知り合い同士なのだと。
まあ、たとえそれを質問したとして。
回答を持ち帰れるかは別の話だけれど。
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うらぶれた路地裏に小さな酒場があった。
手入れの行き届かない店内は、安酒と紫煙と猥雑な話で満ちている。
まっとうな社会性の持ち主なら近づかない、アウトローの見本市。あるいは温床。
銀と來鬼は、当たり前のようにその中に溶け込んでいた。
「――だからよう、次の輸送は明日の――」
そして正真正銘、縁もゆかりもない、行きずりの男の話に耳を澄ましていた。
「――ばっかおめえ。んなもんぶっ殺せば済む話だろ――」
正確には盗み聞きしていた。
男が仲間たちと楽しく『お話』しているのを、近くの席で、來鬼の鋭敏な聴覚でかすめ取っていた。
とりあえず頼んだ安酒など床に飲ませつつ、男たちの会話に一方通行で混じっていた。
こうなった経緯は話せば短い。
『なんか面白そうな匂いがした』から、なんとなくつけてみた。以上。
「――んじゃ、後はアジトで決めようぜ――」
男たちは立ち上がった。
どうやら彼らはどこぞの半端な盗賊団であるらしく、明日にでもぼんくらな金持ちを狙うらしかった。
二人は視線を合わせると、とても楽しそうに、
――とてもねっとりしたおぞましい、
笑顔を向け合った。
●
ところで、銀と來鬼はハンターである。
あちら(リアルブルー)ならば『職業は会社員です』くらいのざっくりとした区分だが、ともあれ賃金の発生する依頼請負人を生業としている。
基本的には善良なる民衆を守るのがハンターとしての心構えであり、ならば、
――連中を追跡した先には、いかにも悪いものが棲んでいそうな廃墟があった。
かつてそれなりの威厳を放っていたであろう屋敷は、もはや見る影もない。
ああ、まさに『溜まり場』だ。きっと連中のお仲間が蠢いているのだろう。
行いだけ見れば文句なしの無料奉仕だ。依頼でもないのに自発的に見つけた悪事の芽を、先んじて摘もうという理想的行為。
がんがんがん。
二人は、屋敷のドアを激しくノックした。
乱雑に、粗暴に、何度も何度も殴りつけた。
「うるせえよ! 何の用だ、さっさと――」
たまらず飛び出してきた男は、
ざん。
言い切る前に、ファンシーなコボルドマスク男に真正面から叩き割られた。
返り血を浴びながら、銀は高らかに笑い始める。
なんだなんだと群がってくる有象無象どもを見て、來鬼はにこりと花のような笑みを浮かべた。
「ねぇ。あ、そ、ぼ?」
そうして、状況はあっという間に終了した。
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――いや、終了させてくれなかった。
殴る、蹴る、斬る。
二対他など問題にならない、圧倒的な戦力差。
チンピラ同然の夜盗など、本気で殴ればそれで終わりの相手である。
「ひ、ゃ、ゃめ」
「あ、やめてほしい? やめてほしいの? やめてほしいんだってー!」
虐める、嬲る、弄ぶ。
「そうなの? それじゃあ、もっと遊ぼう!」
砂の城をちょっとずつ崩すみたいに、適度に加減しながら『可能な限りおもちゃにする』。
「あ、やべ、楽しい。楽しすぎて手が止まんねーじゃんか?」
「うちもね? 楽しすぎてほんとねー?」
熱い抱擁と口づけを交わしながら、鬼の男女は盗賊どもを陵辱する。
悪人にも三分は残っていたはずの尊厳ごと、徹底的にしゃぶり尽くす。
生かさず殺さず殴って蹴って斬って折って剥いでもいで潰して削って焼いて遊んで遊ぶ。
間違ってもまともなハンターの行為ではなく、そもそも二人にそんな意識は毛頭ないのであった。
楽しければそれでいいのだ。
遊んでも誰も文句を言わなさそうなおもちゃが目の前に転がってきたから、ちょうどいい暇つぶしにしてあげようと思っただけ。
ちょっと猫が気まぐれを起こしました、そんな程度の楽しい修羅場。
そう、二人は同好の士。
ちょっと遊びで殴り合ったり殺し合ったり壊し合ったりするのが大好きな、おんなじ趣味の気の合う二人。
お互いの血を見ると余計にヒートアップして、巻き込まれた方はご愁傷様ということで。
自分の不運とか因果応報とか呪えばいいんじゃないかなって感じで。
「安心して? 死んでも、骨とか肉とかまだまだ遊べるところはいっぱいあるからぁ」
「ぎゃーはっはっはっは! 感謝しろよゴミカスー!」
盗賊たちが最期に聞いたのは、そんな常軌を逸した鬼の哄笑だった。
屋敷の壁がびりびりと震える。
それはまるで、新しい主たちの狂気に怯えているように見えた。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka6662 / 銀 / 男性 / 30歳 / 符術師(カードマスター)】
【ka6539 / 猪川 來鬼 / 女性 / 24歳 / 霊闘士(ベルセルク)】