※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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ぽかぽか
リゼリオの商店街を歩きながら、ミアはうんと背伸びをする。
最近はずいぶんと冷え込んできたものだが今日は珍しくいい陽気。
心地のいい風をいっぱいにあびると、身体までぽかぽかした気分になってくる。「今日はぽかぽかだニャス」
こんな日に部屋でごろごろしていてはもったいないと街へ繰り出したのはいいものの、何か用事があるわけでもない。
着の身着のまま気の向くまま。
自分の嗅覚に任せてあっちへふらふら、こっちへふらふら。
お散歩は、そんな時間の無駄を楽しむものだ。
「あっ、肉まん売ってるニャス!」
ぴょんと飛びつくように露店へと駆け寄る。
恰幅のいいおっちゃんから蒸籠で蒸された大きな肉まんをひとつ受け取ると、綺麗に2つに割ってから口いっぱいに頬張った。
ふんわりした皮の中にアツアツの肉ダネ。
甘い肉汁の中で、シャキシャキしたタケノコの食感が嬉しい。
「う~ん、これもぽかぽかニャスな」
満面の笑みで噛みしめながら半分に割ったもう片方の肉まんを眺める。
ここにあの人がいたら、このぽかぽかも分かち合えたかな?
思い描くと、きゅっと胸が締め付けられる。
彼は家庭を持つ余裕はないと言っていた。
だけどその立場を考えると、きっといつまでもそのままというわけにもいかないだろう。
そして現に縁談の写真を目にしてしまうと、いっそうそれは際立つ。
あのどこか挑戦的な自信のある笑みが頭にちらついて離れない。
「でも山積みの書類の下になっていたんだから、そんなに大事にされてないってことニャスよね……?」
言い聞かせるように口にして、残りの肉まんもぺろりとたいらげた。
お腹を満たすぽかぽかといっしょに、不安も全部飲み込むつもりで。
自分は彼にとっての何になりたいんだろう。
その問いに今のミアは答えることができない。
身体は一人前に大人になっても心はまだまだ未熟なそれだ。
本能のまま好奇心のままに飛びつく自由奔放さは、自分自身に対しても芯にある本心を隠す。
その本心を語れるようになるにはもっともっと時間が掛かるかもしれないが、きっとそれが大人の階段を上るということなのかもしれない。
「ほんと、ぽかぽかいい気持ちだニャ」
眩しそうに目を細めて高く昇ったお日様を見上げる。
どうせなら一緒にお散歩したいな、と。
今はその素直な想いを大切にして。
――了。
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【ka7035/ミア/女性/20歳/格闘士】