※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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かえるばしょ
ミアが目覚めたのは夜もだいぶ更けたころ。
ぼんやりする頭で回りを見て、自分が眠りこけてしまったことに気づくと飛び起きる。
そうしたらいつの間にか身体にかけてあった青いコートがずるりと落ちて、慌ててそれを握りしめた。
彼は執務机で書類整理を行っていた。
きっとミアが起きるのを待っていてくれたのだろう。
平謝りするミアを彼は笑いながらやんわりなぐさめると、家まで送りましょうかと言ってくれた。
すごく魅力的な提案だったけれど、流石にこんな夜中に彼に送ってもらうだなんてサーカス団のみんなに気づかれたらいろんな意味で心配をかけてしまいそうな気がしたから、ぐっとこらえてやんわりと断った。
彼も仮に夜道の危険があろうと自分よりもミアの方が頼りになることは知っているし、無理に送るようなことはしなかった。
ミアももうちょっとくらいグイグイ来てくれていいのにニャス、と内心思いながらも、彼なりの気遣いにお礼を口にした。
霧ががかった街を近場のオフィスへと向かって歩く。
ミアは転移門を使って自分の家のポイントまでひとっとびで帰ることができる。
でも覚醒者でない彼をミアの家に招待するためには短くない旅路を必要とするだろう。
いつか大好きな仲間たちを彼に紹介したい。
いつか彼を大好きな仲間たちに紹介したい。
そんな想いがほんのりわき起こっても、忙しい彼の身を考えればひとつの夢として胸の内にしまっておくことしかできない。
――お仕事がなくなればいいのに。
でもそうしたら、今の彼は彼でなくなってしまうような気がする。
――なら、帰る場所がいっしょになればいいのに。
その願いがどういうことか、彼女は実のところ理解はしてはいない。
まるで友達と遊んだ帰り道に「家が一緒ならまだ遊べるのに」と思うのと同じように、ただ純粋に浮かんだ願い。
だけどそれが物理的に叶わないことは、年齢的には大人になる過程で彼女も理解していた。
どうしよう。
どうしよう。
「はっ……いっそのことミアがあっちの家に? お金持ちならメイドとか募集してないかニャ?? でもそうしたらご主人サマになるから気軽に遊べなくなるニャス???」
代案崩壊。
そもそもそしたら団のみんなと離れ離れになってしまう。
痛いほど頭を悩ませても全部の願いをクリアできる答えは出てこない。
もどかしい――けれども、そのもどかしさはなんとなく嫌ではなかった。
――了。
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【ka7035/ミア/女性/20歳/格闘士】