※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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ゆきずりラーメン道
とある昼下がり、ミアは芝生の上に寝転がって雲を見上げていた。
周りには大小さまざまな大きさの「フープ」が彼女を取り囲むようにいくつも散らばる。
「う~ん……やっぱりうまくいかないニャス」
公演用の新しい技に挑戦し始めて数日、なかなか上達の兆しが見えない。
なんとなくコツを掴みかけているような気はするのだが、そのコツが何なのか結局のところ分からず、どこかで失敗してしまう。
休憩の名目で寝転がってしばらく。
しなやかな身体のバネでミアは飛び起きる。
「気分転換ニャスな」
大きく背伸びをしながら歩き出したミアは、着の身着のまま気ままにに歩き出した。
秋の訪れを感じていたのもつかの間。
雪こそ積もっていないものの街はすっかり冬景色で、気づけば季節は年の瀬。
新年も目と鼻の先だ。
聖輝節が近いというのもあって通りはどことなく浮ついた雰囲気で、歩いているだけで楽しい気分になるもの。
露店でクリスマス調のカップケーキを1つ買って、お腹の中から季節に浸る。
そんな中、街の掲示板で見かけたチラシにその足が止まった。
「ジャンボラーメン早食い大会、真っ先に完食で賞金1万G……!?」
宝石のような赤い瞳がキュピーンと光る。
賞金はこの際どうでもいい。
ジャンボラーメン。
その甘美な響きは彼女の食指を惹くのに十分すぎるものだった。
ちょうどお腹の準備運動も済ませたところだし――カップケーキの最後の一口を飲み込んで、彼女の足はチラシに書かれた料理店へと向く。
ドンとカウンターテーブルを揺らして巨大な丼が目の前に鎮座する。
一列に並んだチャレンジャー。
その中に混ざった華奢なミアの姿はなんとも異様であったが、それでも各挑戦者の前に置かれた抱えるほどの大きさのラーメンを前にすると、違和感も薄れてしまうというものだった。
「いただきますっ!」
目を輝かせて箸を取る。
周りの屈強な男たちが我先にと麺をすするのを横目に、まずは謎セオリーにのっとってスープから。
美しい琥珀色。
レンゲの底のナルト模様がハッキリ見えるくらい素晴らしい透明度を保ったスープは、ほんのりと甘い醤油の香りを漂わせる。
口元へ運びながら鼻の先でそれをめいいっぱい楽しんで、ズズッとひと口。
魚介出汁の豊かな甘みが口いっぱいに広がって、遅れて香ばしい醤油の塩気が舌の上で踊り出す。
飲み込めば喉の奥から香りが鼻に抜けて、外を歩いて冷えた身体に温かさがじんわりとしみた。
「ん~!! 最っ高ニャス!」
思わず満面の笑みを浮かべて、今度は黄金の麺へ。
細身の麺はスープを纏ってキラキラと金糸のように輝く。
おちょぼ口でちゅるりと啜ると、先ほどのスープのうま味にもっちりした面の食感と小麦粉の甘みが加わり「拉麺」が完成する。
飲み込んで、思わず零れるため息は幸せの象徴。
本当においしいものを食べた時、感情ダダ漏れで無口となる。
「おいおい嬢ちゃん、そんなペースで大丈夫か?」
あまりにゆっくり楽しむミアに、店主が見かねて声をかけた。
ミアはふるふる頬っぺたを左右に振って、まっすぐに店主を見返す。
「こんなにおいしいもの、急いで食べるなんてもったいないニャス!」
「いや、嬉しいけどよ、大会の趣旨がよ」
しどろもどろな店主をよそに、ミアは次の一口をずずり――ンマァイ!
時々シャキシャキメンマを挟んで食感を変えながら、油っ気が欲しいときはひときわ存在感を放つ厚切りバラ肉の角煮チャーシューをかじる。
ぷるんとした肉の油は時間が経つにつれてスープに染み出し、また新たな味わいを演出する。
食べながら勝手に進化していく
このラーメンは化け物か?
「うー……もう食べられん」
「俺もだ……」
そうこうしていると、スタートダッシュをかけていた男たちが次々に音を上げ始めた。
誰もかれも半分くらいでのギブアップ宣言。
両手で抱えるほどのサイズのラーメンは、早食いというよりはそもそも完食できるかどうかの勝負になりつつあった。
ズーズー。
ズルズル。
ちゅるん。
ごくん。
ニコニコ笑顔で食べるミアのペースは衰えることを知らない。
いつしかその食べっぷりに、周りの参加者たちも唖然として見守るのであった。
「ふー、満腹満福。幸せニャス~」
温まったお腹をさすりながら、ミアはほっこりとひと心地ついていた。
あのお店、絶対にまた行こう。
心に決めながらふと、どんぶりのうずまき模様に似た雲を見上げる。
「あれ、そういえば何か大事なことがあった気がするニャ……」
流れていく雲は答えを教えてはくれない。
しばらくして思い出すことを諦めたミアは、貰った1万Gを手にスキップを刻んだ。
「お腹もいっぱいにニャったし、デザートでも探しにいくニャス♪」
まだ見ぬ美食を求めて、ミアは賑わう路地の商店街へと足を踏み入れていった。
――了。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka7035/ミア/女性/外見20歳/格闘士】