※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
-
はじめての依頼
「いよいよお仕事かぁ。ちょっぴりドキドキするよぉ」
ハンターになって初仕事となる現場へ、幸は心持ち緊張しながら赴いていた。
場所は、とある人間の街にある小さな公園。
見事な花を咲かせる桜の木に纏わりつく白蛇を見て、思わず目を瞬く。
「わー……あれが『雑魔』なんだねぇ」
雑魔とはいえ、VOIDである。
けれど、幸が蒼界にいた時に映像で見ていたVOIDとはまるで違う。蒼界に出没していたVOIDと言えば、目玉がぎょろっとしていたり、クラゲのようだったり虫のようだったり、気味の悪い触手がぞろっと出ていたりした。
なのに目の前の雑魔は、パッと見ただの白い蛇にしか見えない。
それでも嫌な雰囲気に肌がぴりぴりするのは、精霊と契約して得た力のせいだろうか。
「本当に蛇みたいだから、餌で釣られてくれるといいんだけどぉ……ちゃんと戦わないと、だよねぇ」
呟き、覚醒者として得た力を解き放つ。
マテリアルというらしい温かな力が四肢へ流れると、真白な蘭を思わす花の幻影が幸を包んだ。――バニラの花だ。
白い花は幸の身体を優しく守り抱くように包むと、空気に溶けるようにして消えた。けれどバニラ特有の甘い香りは幸の身体に残り続ける。まるで『ずっとそばにいるよ』と伝えているかのように。
覚醒し終えた幸は、蒼界にいた時には触ったことすらなかったアサルトライフルを取り出し、構えた。
蒼界でVOIDと戦うのは専ら軍人の役目だったが、ここ紅界では違う。
普段は地方の貴族だったり工房を営んでいたりと、ごく一般の生活に溶け込んでいるソサエティ所属の覚醒者が、有事の際にこうして集い戦うのだ。
いつの間にか精霊の加護を得ていた幸も。
「危ないよぉ、加勢するね」
仲間に迫る蛇影へ、マテリアルで強化した弾丸を景気よくぶっ放す!
もう、誰かに守られるだけの幸ではないのだ。
けれど。
凛々しい戦いぶりを披露しても、幸のほんわりまろやかな心根は変わっておらず。
咲き誇る桜を見上げ、
「ちゃんと完了できたら、お花見とかできたらいいなぁ」
と、ぽつり。
甘い香りを纏わせたまま、ふぅわりと微笑んだ。
━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【ka7161/桜崎 幸/男性/16歳/香子蘭の君】