※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
愛の行方は風任せ

●風は囁く

 初夏のさわやかな風が、クローディオ・シャールの金の髪を踊らせる。
 相棒のヴィクトリア(※愛用の自転車)もご機嫌麗しく、緑に包まれた街道を快調に走り続けていた。
 そこでふと、見知った顔がこちらを向いているのに気づき、クローディオはハンドルブレーキを優雅に握る。
「よっ!」
 片手をあげて近付いてくるのは、ジャック・J・グリーヴだった。
「やあジャック。実に気持ちの良い日だな」
 クローディオの口調はやや堅苦しく思えるが、これは彼の出自からすれば仕方のないことだ。もちろん、ジャックはそんなことは気にしていない。
「なあクローディオ、今日は暇か?」
「特に予定はないが」
 それを聞いたジャックがニヤリと笑う。
「よし。じゃあおもしれえ……じゃない、ちょっとした社会勉強に付き合えよ」
「社会勉強?」
 クローディオは首を傾げたが、結局ジャックの家についていくことになった。


●知の探求

 クローディオはグリーヴ家の応接間ではなく、ジャックの私室に通された。
 そこで謎の箱を目にすることになる。
「これがそうなのか?」
 謎の箱からは幾本ものコードが伸び、箱を挟んでテレビと電源コード、そして片手に収まるぐらいのコントローラーが二つ繋がっている。
 クリムゾンウェスト民にはテレビも電源コードも謎のアイテムだが、ハンターはリアルブルー民との交流もあり、多少の知識はある。
「ああ。社交性を身につける訓練になるんだぜ」
「社交性か」
 表情を余り変えることのないクローディオだが、目に好奇心の光がひらめく。
 常々ジャックの見聞の広さには感心してもいたし、自分にないものを持っている相手との交流は、良い刺激になる。
「ほら、誰かと話をしてたらよ、あー今、なんか気に障ること言ったかなとか気になることってあるだろ? そういう経験を積むことができんだぜ」
「成程。それは興味深いな」

 箱を熱心に眺めていたクローディオは、ジャックがニヤリと笑ったことに気付かない。
(ククク……チョロいぜ! 堅物でクソ真面目なクローディオなら……)
 ジャックはぐっと拳を握った。
(簡単に”ぎゃるげえ”仲間に引き込めるぜ!!)
 まあ『社交性の訓練』というのはあながち嘘でもない。……かもしれない。
「よし、じゃあ早速始めっか!」
 ジャックは浮き浮きとスイッチを入れた。


●出会いの刻(とき)

 画面にオープニングの美しい映像が現れ、クラシック調の音楽が流れ出す。
 ジャックには耳なれた音楽だが、この曲を聴くだけでもう、愛しの少女に逢える期待に鼓動は高鳴り、優しい声を待ちわびる切なさに胸が苦しくなってくる。
 だがジャックははやる心を押さえて、クローディオをチュートリアルに導いた。
 コントローラーは少し慣れれば片手で充分に操作できる。
「まずは操作に慣れねえとな。……この娘にしようぜ」
 もちろん、選んだのは愛しのサオリたん。長く真っ直ぐな髪、大きく見開かれた瞳。だがあどけなく可憐な微笑みは、ほんの少し緊張しているようでもある。
 そう、この時点のサオリたんは、まだジャックのことを知らないのだ。
(ここに改めて誓うぜ。幾度巡りあっても、俺はサオリたんを選ぶッ!!)
 数人の少女の中から一押しのサオリたんを選択し、まだお互いを知らなかった頃のときめきをトレースしようとするジャックだった。
「サオリ……か。よろしく頼むぞ」
 クローディオがキリッと表情を改める。
 ――その瞬間、ジャックの胸に黒い焔がちらりと揺れた。

(俺のサオリたんを呼び捨てにするなッ……!!)

 いや、サオリたん選択したのは自分なんだが。

『街は初めて? じゃあ少し一緒に回りましょうか』
 サオリたんがクローディオに微笑みかけた。チュートリアルなので、色々教えてくれているのだ。
(ああ……サオリたんは本当に優しいな……でも俺以外にそんなに優しくなくてもいいんだぜ……)
 ジャックは物悲しい思いで画面を見つめる。
「おい。遊んでいる暇などあるのか。この街の治安が悪くて困っているのだろう」
 クローディオが呟き、かちかちとコントローラーを操作した。

  街を案内してもらう
 >断る

 その途端に、画面のサオリたんの表情が曇った。
『私と一緒じゃ、いや……?』

 ジャック、心の中でガッツポーズ。
(ククク……サオリたんの折角の誘いを断るとは! これで好感度はぐっと下がるぜ。残念だなあ。可哀想だなあ。ざまあねぇぜ!)

「嫌とかそういう問題ではない。やるべきことをまず先に……おい、どうすればこの娘に説明できるのだ」
 もちろん、一応やるべきことは決まっている。
 だがギャルゲーで女の子と仲良くなれる会話シーンを飛ばして、先へ行く奴はいない。
 しかしジャックは最初の段階で「社交性を身につける訓練」と言って引き込んだのだ。そこのところをクローディオに伝えるわけにもいかず、言い訳を探した。
「あのな、人の親切はちゃんと受ける。それも社会勉強ってことだぜ」
「そうか……そうかもしれんな。わかった」
 クローディオは困惑しながらも、機嫌をなおしたサオリたんとミニデートを経験することになる。


●すれ違い

 どうにかチュートリアルを終えたところで、ジャックの忍耐力は尽きた。
 なんだかんだと言いくるめ、クローディオにはサオリたんではない、他の女の子をメインに攻略させることにする。
「何、庭園でお茶を一緒にだと……女性に支払わせる訳にはいかんな」
 少しずつ慣れてきたクローディオは、自分基準で行動し始める。
 お陰で資金はすぐに枯渇。
(ハハッ、ハマったな!)
 ジャックは懐かしい思いで画面を見つめた。
 かつてのジャックがそこにいたからだ。
(サオリたんとのデートが楽しすぎて、すぐに金が尽きるんだよな……! それに資金稼ぎの方法はイマイチなんだよな、このゲームも)
 商売には一家言あるジャックならではの感想である。

 だがクローディオは特に困ってはいなかった。
「戦いに行けば資金が稼げるのだな」
 いつの間にかそこまで学習していたのだ。
 戦闘では、普段のクローディオの行動が一層強く反映される。
 護るべき物を護るためには、己の身を危険にさらすことも厭わない。
 そんな戦いぶりに、メインターゲットのみならず、同行していたサオリたんまでが好感度をガンガン上げていく。
「おい。なんでだよ……!」
 ジャックが茫然と画面を見つめる。
 クローディオは今や、サオリたんの他にも幾人ものキャラとフラグを立てまくっていたのだ。

 そうしているうちに。
『あの、クローディオさま……女からこんなことを言うのをはしたないと思わないでくださいね……』
 ついに女の子のひとりが、ふたりきりの場面で告白してきたではないか!
 これがサオリたんであれば、ジャックは何もかも忘れて、画面をたたき割っていたかもしれない。
「はしたないとは思わぬが。やはりこういうことは……おい。ご両親に挨拶するというコマンドがないのだがどうすればいいのだ」
 クローディオはあくまでも真面目である。

 そうしてかわしているうちに、女の子のほうがダイタンになってきた。
 深夜、クローディオを庭園に呼び出す。衣装もいつもとは違う、透ける程に薄いドレスだ。
(うお、なんだこりゃ……こんな場面あったのかよ……!)
 今やジャックのほうが赤面する有様である。
 頬を赤らめ、瞳を潤ませて画面の中から美少女が甘く囁く。
『クローディオさま、私、あなたと一緒にいると……』
 クローディオは眉をひそめる。
「どうした、顔が赤いぞ。熱でもあるのではないか」
『ええ、ええ。あなたとお会いしてから、もうずっと……』
「ばか者。それならこんな所を薄着でうろうろするものではない!」
 クローディオ、あくまでも大真面目である。
『わかりました……私、勘違いしていたみたい……』
 女の子は涙をはらりとこぼし、夜の庭園から逃げるように立ち去って行った。
「間違っていたことを悟ってくれたようだな」
 クローディオは満足そうに頷いた。
「そうじゃねえって……」
 ジャックは何を言うべきかもわからず、ただソファの座面に拳を叩きつけるしかなかったのである。


●愛を取り戻せ

 西の空が薔薇色に染まるころ。
 夕飯の時間に間にあうようにと、クローディオは腰を上げた。
「なかなかに楽しかった。また良ければ誘ってくれるか」
 ひらり。
 待たせてあったヴィクトリア(ママチャリ)に跨り、クローディオは軽く手を振ると、一陣の風となって去っていった。
 夕日の中、ママチャリの貴公子が遠ざかる。
 その背中が見えなくなるまで見届けた後、ジャックは叫んだ。

「……サオリたんは俺の、俺だけのものだああああああ!!!!」

 そして一目散に自室へ駆け込む。
 サオリたんの分だけはフラグを叩き折らんと、クローディオの残したデータを操作するために……。


 要するに。
 ゲームの出来が良いということは、女の子の反応もリアルなのである。
(この仕打ち。リアルでも、ゲームでもかよ……ッ!!)
 ジャックはコントローラーを握り締め、この残酷な事実に打ちのめされるのだった。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka1305 / ジャック・J・グリーヴ / 男 / 20 / 人間(CW)/ 闘狩人 / 一途な愛】
【ka0030 / クローディオ・シャール / 男 / 27 / 人間(CW)/ 聖導士 / 真摯な心】

【 サオリたん / ゲームに登場する美少女 】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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好きなようにとのお言葉に甘え、過去のイラストの一枚から勝手にゲームの内容をねつ造しました。
学園物も捨てがたかったのですが、ファナブラ世界みたいなゲームならCW人も馴染みやすいかと思いまして。
ご依頼のイメージを大きく損ねていなければ幸いです。ご依頼有難うございました!
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発注者:キャラクター情報
アイコンイメージ
ジャック・J・グリーヴ(ka1305)
副発注者(最大10名)
クローディオ・シャール(ka0030)
クリエイター:樹シロカ
商品:WTツインノベル

納品日:2016/05/24 13:15