※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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You Got Mail
「――キヅカさん、お手紙です」
いつものように依頼を受けにオフィスを訪れると、窓口の受付嬢が1通の封書を手渡して来た。
この世界でハンターとしての仕事をするようになってからたまにあることだが、郵便システムが発達していないこの世界では、少なくともハンター達に対する手紙のやり取りはこのオフィスを通じて行われることが多い。食べていくためには依頼を受けねばならず、そうなればオフィスの窓口は必ず通る。転移門を通じて各地のオフィスは繋がっているし、流通の基点となるのは必然と言えば必然であった。
リクは笑顔と共にお礼を述べてそれを受け取ると、少し離れたベンチに腰かけてそれを開く。内容はついこの間受けた仕事の依頼主からのお礼だった。
あれから現地はどうなったのか、あの時関わった人々のその後は、そして自分は――そんな事がつらつらと書かれてある最後に、丁寧な筆跡で一言――
――ありがとう。
そう、添えられていた。
この世界に来てから何度この言葉を貰ったことだろう。言葉も意味も同じ、だけど込められた思いは1つ1つ違う。それは決して優劣の問題ではなく、その先に見える人の姿が、表情が、まぎれもなく自分の記憶の中にあるという事実。
たった1つの言葉だけれど、確かに自分とその人とが繋がているという証だった。
とりわけ一般人に関して言えば、同じ人から再び依頼を受けるということはあまりない。それはその人に再び困難が降りかかっていないという意味だし、とても良いことだ。結果として、世界中の依頼人とは一期一会であることが多い。
――だけど、このありがとうで繋がっている。
二度と会う機会がないとしても、その一言は確かな繋がりとして自分の中に、この書面の中に残る。それはリクにとって、何よりも代えがたい――確かな生きた証であった。
貰ったお札を握り締めてゲームセンターへ向かう自分の姿はもうここにはない。あるのは、他の誰でもない“キヅカ・リク”としての生活と繋がり。
戦いが激しくなるにつれて考える――この戦いが終わったら、自分はどうしているのだろう。
その問いに答えは出ない。だけど、きっと一番後悔しない答えを選べると――今の自分なら、信じられるような気がしていた。
――了。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka0038/キヅカ・リク/男性/19歳/機導師】