※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
シングルベル in リゼリオ

 独特の甘ったるいクリーミーな香りに包まれて、リクは詰め込めるだけ詰め込んだお腹を苦しそうにさすった。
 食べども食べども減らない在庫。
 部屋の壁一面、窓際の涼しい部分を占拠するケーキの箱の山を前に、まさしく気分はクライマーズ・ハイだった。
「ううん、でも……この甲斐あって推しが上位に食い込んだと思えば悪い気はしな――うっぷ」
 まだホールの半分ほど残った目の前のケーキを前にして、胃の中から戻りかけた甘い空気を慌てて飲み込む。
 流石に食べ過ぎたかな……そう言えば、年を重ねてしばらく無縁だったニキビが額に久しぶりにできた。
 心なしか肌艶も……というか、身体が丸っこくなった気がする。

 こ、これから沢山戦場を駆けまわらなきゃいけないから!
 そのための事前の蓄えだから!

 言い聞かせて、体重のことは記憶から除外することにした。
 
 ケーキバトルロイヤル。
 贔屓の少女たちの応援のためとはいえ、流石に沢山買い過ぎた。
 そして一度買った手前、心を込めて作った彼女たちのことを思えば捨てるわけにもいかず、故郷特有の「MOTTAINAI」精神で全部身の糧としてしまおうというのは自然な流れで――こうして毎朝夜、食事はもっぱら苺のショートケーキだ。
 1日1~2ホール。
 ご近所や各国の知り合いにおすそ分けできる分はとっくに配り終えて、この調子もあれば年明けには食べきれるかな……これがクリスマスケーキであることを考えれば、一緒に食べてくれる存在がいないことがこれほど骨身にしみたことはない。
 かといってこれまで外食だのレトルトだのに頼っていた生活習慣から、この白い巨塔をアレンジして「別の味」として楽しむ知識も技術もない。
 ひたすら押し寄せるクリーム&クリーム、時々苺。
 とはいえ、1つ1つ微妙にクリームの甘さや層の厚さの変化を感じて、同じレシピながらも日々試行錯誤して商品を改善し続けている受付嬢たちの姿が思浮かび、涙もこぼれた。
 半分は悲痛の涙だが。
「こんな時、あの大食い受付嬢が作り手でさえなければ……くっそぉ、俺、負けない!」
 涙と脂汗を拭いながら、残りのホールにかぶりつく。
 外が真っ白な雪に覆われる中、リクの初夢は真っ白なクリームの波にさらわれる悪夢であったという。
 

――了。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka0038/キヅカ・リク/男性/20歳/機導師】
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発注者:キャラクター情報
アイコンイメージ
鬼塚 陸(ka0038)
副発注者(最大10名)
クリエイター:-
商品:おまけノベル

納品日:2019/01/07 10:40