


魂の反逆:ウィンス・デイランダール (ka0039) 2015/02/09 22:42:49
けだものの一匹と鳴かない静謐の夜だった。薄闇色の寝室を月が青く照らしていた。
少年の表情は垂れ下がる銀の前髪に隠されていた。
シーツを握る右手の強張りのみが彼の心情を密やかに語っていた。


魂の反逆:ウィンス・デイランダール (ka0039) 2015/02/09 22:44:33
やがてそのシーツの白に赤黒い染みがじわと広がった。それは未だ塞がり切らぬ傷口から滲み出た紅だろうか。
或いはせき止められた激情が静かに溢れ出るそのさまかも知れない。
喉奥から漏れ出た微かな吐息が震えた。
毛布が緩やかに肌蹴られ、寝台が小さく軋んだ。



魂の反逆:ウィンス・デイランダール (ka0039) 2015/02/09 22:45:38
寝台から降りた少年は覚束ない足取りで歩き出した。立てかけられた鍛錬用の木剣を握り、けだものの一匹と鳴かない静謐の夜を、ゆっくりと、ゆっくりと、ゆっくりと。
物言わぬ月のみがただ、青白く見つめていた。













