※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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乙女の悩み
「……ごめんね、めいちゃん。ボク、胸の大きい子が好きなんだ」
「ええっ? そうだったの……?」
「そうなんだ。だから君とは……」
「そんな……! 待って。ねえ待って……!」
薄暗い部屋。大切な人の名を呼びながらベッドからガバッと起き上がっためい。
周囲を見渡して――自室であることを確認すると安心したようにため息をつく。
――夢、だよね。今の……。
……良かった。夢で良かった。本当に良かった。
額に滲んだ汗。寝ながら泣いていたのか、濡れた目をこすりながらベッドから滑り降りる彼女。
淡い色のカーテンを開けると、真っ白な光が入って来て、部屋中を暖かな光が満ちる。
その光が、さっきの悪い夢を溶かしてくれるようで――めいは目を細める。
「いい天気みたいね」
窓の外の空を見上げる彼女。
そう。今日はあの人とお出かけ……デートの日だ。
そんな素敵な日にあんな夢を見るなんて……。
大切な人からとんでもないカミングアウトをされた上にフラれるとか、夢見が悪いにも程がある……。
昨日嬉しさのあまり寝つきが悪かったせいだろうか。
これから気合入れてお洒落をしないといけないのに。
目にクマなんて出来てたら最悪だわ……。
「うん。あの人があんなこと言う訳ないし。気持ちを切り替えて準備しなきゃ」
くるりと踵を返すめい。
そうだ。着替える前にシャワーを浴びよう……!
とっておきの石鹸を使って身体を磨けば、きっと元気と自信がつくに違いない。
この間リゼリオに行った時、薔薇のオイルを使った石鹸を買った。
ちょっとお高めだから、何となく勿体なくて少しづつ使っていたのだけど。今日はアレをたっぷり使おう……!
めいはバスタオルを手にするとぱたぱたと浴室に走っていき……ふと、鏡に映った自分の姿をまじまじと見つめる。
その目線は足元から順番に上に上がって行って……胸元で止まる。
「……ごめんね、めいちゃん。ボク、胸の大きい子が好きなんだ」
ふと頭を過る、夢の中のあの人の声。
――やっぱり、小さめ……かなあ。
男のひとって、やっぱり大きい胸がすきなんだろうか?
わたしの大切なあの人も、胸は大きい方がいいのかなぁ……。
見た目はとても可愛らしいけれど。彼だって男の子だし。
そういった嗜好はある……と思う。
……いっそ、好みを聞いてみる?
いやいや。ダメダメ。
いきなり『好みの胸の大きさは?』なんて聞いたらドン引きされちゃう。
でも、小さくてちんちくりんなお子様より、綺麗なお姉さんの方がいいよね、きっと――。
ちなみに。本人にその自覚はないが、めいは決して胸が小さい方ではない。
むしろ年齢から考えたら豊かな方である。
――まあ、本人に聞いたら『ボクはめいちゃんが好きなんであってどんな状態かは関係ないよ』とサラッと男前な台詞を言うのだろうけれど。
これも比較対象を知らないことと――何より、恋しているが故の悩み、というものなのだろう。
寂しい独り身の者が聞けば「ばくはつすればいいのに」と言われる程度のものではあるが、本人はいたって真剣なのだ。
まあ、こんな解説をしている間も彼女の逡巡は続いている訳でして……。
で、でも! リアルブルーにいた頃よりはそれなりに大きくなったし……!
――揉んだら大きくなるのかな。
いやでも、それもどうなのだろう……。
具体的にどうやってやるのか分からないし……。
誰に聞いていいのかも分からないし。
……本を探してみようかな?
あ。この間ハンターオフィスで会った人が胸筋を鍛えればいいとか言ってなかったっけ……!
胸筋ってどうやって鍛えたらいいのかな。
錬筋術をハンターに齎した節制の精霊プラトニスさまを信仰すればいいのかしら。
……それはそれで胸筋が鍛えられすぎてムキムキになりそうな気もする。
バストアップは確かにするのかもしれないけど、マッスルになるのはいかがなものか。
やっぱりこう、女の子らしい、ふんわりとしたバストがいい。
出来れば形も良くしたい。
胸の理想的な形としては、鎖骨の中心から左右の頂点までの線の長さで、胸に正三角形が描けること。
さらに形が半球型で、バストの高さと底辺の長さがほぼ同じで、ふっくらと盛り上がっていればいいと本で読んだことがある。
……言葉で言うのは簡単だけどこれ、大分ハードル高いですよ。
形を整えるにはまず自分に合った下着から! とお友達が言ってたなあ……。
デートの前に下着屋さんに寄ろうかしら――。
そういえば、バストアップには大豆とキャベツがいいと聞いたことがある。
これから毎日のご飯に取り入れてみようかな……。
今日の朝ごはんも豆乳とキャベツの塩サラダにしてみよう。
バストアップは1日にして成らずだ。
――こんなに必死になるのは、あの人が大好きだから。
彼の理想に近づきたい。
本当に素敵な人だから、釣り合いが取れるくらい素敵な人でいたい……。
紅の世界で出会ったあの人。
転移したばかりで不安だっためいを、優しく支えて笑顔で包んでくれた。
自分の弱さを認めた上で、強くなろうと頑張っている……そんな人だから。
この先もずっとずっと一緒にいたいと思うし、そばで支えたいと思う。
「……って、いけない! もうこんな時間!!」
鏡の前で随分長いことぼんやりしていたらしい。慌てて風呂場に駆け込むめい。
下着屋さんに寄る時間はないかもしれない。
けど朝ごはんはしっかり食べなきゃ……!
――ずっと胸の大きさで悩んでいたけど、よく考えてみたらあの人の好みを知らない。
今日はちょっと胸元の開いた服にして、反応を見てみようかな……?
髪もアップにして、お姉さんぽさを演出してみてもいいかもしれない。
リップはいつもピンク系だけど。今日はもうちょっと赤みが強いのにしてみようかな。
いつもと違う自分を見せたら、あの人はどんな顔をするかしら――。
うふふと笑う彼女。
不安と、願いと。沢山の好きを詰め込んで――女の子は綺麗になっていく。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ka0669/羊谷 めい/女/14/恋に悩む乙女
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お世話になっております。猫又です。
めいちゃんの悩みのお話、いかがでしたでしょうか。少しでもお楽しみ戴けましたら幸いです。
鏡の前で真顔で悩んでいるめいちゃんを思うとちょっと顔が綻んでしまいますが……胸を含めてめいちゃんのこれからの成長がとても楽しみです。
好き勝手色々書いてしまいましたが、話し方、内容等気になる点がございましたらお気軽にリテイクをお申し付け下さい。
ご依頼戴きありがとうございました。