※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
七つの温泉(うみ)を制覇せよ!


 冒険団『時ノ蒼海』を知っているか。
 夢と浪漫を胸に抱き、今日も今日とて世界の神秘と謎を追いかける。


「地図通りだと、この辺りなんだけど。だんだん、天井が低くなってるのは気のせいかなあ……」
「心なしか、息苦しくはござらんか、ざくろ殿」
「……湯気……、蒸気かしら? 不思議な匂いがするわね」
 古地図を手に、洞窟内の先頭を行くのは時音 ざくろ、斜め後方をシオン・アガホ、彼女の左隣に金刀比良 十六那がついて進む。
 三人が足を踏み入れたのは『伝説の侍が残した不老長寿の秘宝』が在るとされる秘境。
 辿りついたはいいが、そこには誰もおらず、地図を詳しく読み解けば、どうやら山の中腹にあるこの洞窟内を指している。
「うう、ここまで来て毒ガスは勘弁してほしいな……。どこか、懐かしい匂いではあるんだよね」
「ざくろ殿にとっては、懐かしい?」
(……リアルブルーと、結びつきがあるんだろうか)
 侍という単語からして、そう考えておかしくはない。シオンが小首を傾げるのを受け、ざくろは胸中で呟く。
(そうだ、この匂い)
 古い記憶を引っ張り出す。
 『玉子が腐ったような』と、しばしば表現される、これは――

 突き当りの岩が、隠し扉になっていた。三人で、ゆっくりと押せば回転して開いてゆく。


 かくして。
 そこにあったのは古代文明の巨大温泉施設……広大な温泉迷宮だった!




「……温泉、は理解したわ。それで、『不老長寿の秘宝』というのは?」
「温泉には、色々な効能があるんだ。――でも、そういう意味ではないみたいだね」
 入ってすぐに、硫黄の香りが三人を歓迎した。乳白色の、露天風呂である。
 振り向くと、壁側に効能や注意事項がご丁寧に羅列されている。

 『七つの温泉を制覇せしとき、侍の宝を手にするであろう』

「宝は、最奥にあるのだな!!」
「制覇ということは、全てに入れということ……? ……のぼせないように、気を付けないと」
「待って。二人とも、待って。その前に、その、『着衣禁止』って…… そこじゃないn 2人とも平気なの!!?」
 宝が奥にあり、手にするためには七種の温泉に入らなければいけない。
 で、あるのなら、何を迷うことが?
 サクサクと服を脱ぎ始める少女たちに、少年こそが赤くなる。
 わたわたするざくろへ、
「ざくろ殿、サムライ修行の為なら、平気でござる」
 キリッと答えるシオン。しかしさすがに、頬は少しだけ紅潮している。
 対する十六那は、文字通り顔色一つ変えていない。
「えっ、だって女の子しかいないし……。時音ちゃん、女の子でしょ」
「十六那、ざくろ男、男だから!」
「「…………」」
「どうして、二人そろってスルーなの! ほら、タオル!! せめて、これはちゃんと巻いてよね!!」
「「この女子力」」



●温泉トラップ!
(男らしい所や、かっこいいとこ見せるんだもん)
 ざっぷざっぷ、硫黄泉に浸かりながらも次のポイントへ続くであろう場所へ前衛を担い、ざくろは進む。
「ああー、でも温泉はやっぱり、気持ちいいねえ……。体の芯まであったまるっていうか、今までの疲れが落ちるよ」
「ざくろ殿、止まるでござる!! イザヤ殿が……!」
「え!? どうしたの!!?」
 切羽詰ったシオンの声に、ハッとしてざくろが振り向く。そこには、温泉の心地よさに骨抜きにされる十六那の姿があった。
「私のことは、気にしないで。……二人とも、先に行ってて。すぐに追いつくわ」
「頭にタオル乗せて説得力ないよ! 満喫するつもりでしょ!?」
「……フン」
「行くよ、もう~~」
 それに、硫黄の匂いは嗅ぎ続けると中毒症状を起こしちゃうんだから。
 十六那の手を引き、ざくろはなんとか温泉を渡りきる。



●お宝トラップ!
 第一の関門を抜け、次の準備室(脱衣所)へ。
「なんだかんだで、いいお湯だったね……。次は、どんな温泉だろう」
 ガラガラ、
 ピシャンッ
「ざくろ殿? どうして閉めたでござる?」
「目に毒 というか、着衣禁止の理由が分かった」
「隠すような物じゃないでしょ? どうせ、通らなくちゃいけないんだから ……あら」
 扉を開ければ、温泉の湯が張ってある部分に金銀財宝が敷き詰められている。
「く~~~!! こんなにお宝があるのに持ち帰れないなんて!!」
「落ち着くのだ、ざくろ殿! 拙者に名案がある。このタオルも包んで」
「それはダメ!!!」
「……あら、大丈夫よ。私が持って行くわ」
「ちょっ、十六那っ!!!!?」
 するり、十六那がなんのためらいもなく体に巻き付けていたタオルを取り去った。
 ――下は水着だから恥ずかしくないもん。
「「ずるい」」
「私は荷物頑張って持ち歩くから、水着着ててもいいのよ」
 ツン、と切り返して一言。
 しかし、その周到さに助けられたのも事実。
「全て持ち帰ることはできなくても、ありったけで充分の価値だよね……」
「本物だったらね? 帰ったら、ちゃんと鑑定しないと。あら、この石は偽物だわ。……選別が大変ね」
 がらくたばかり、持ち帰ったって仕方ないし。
 三人でタオルに一つ包み分、目ぼしいお宝を選別して漁ること暫し。
 目がチカチカするけど、胸はワクワク。
 ホンモノは確かにあって、それを見つけた時の楽しさったら!!



●温泉ダンジョンを駆け抜けろ!
 打たせ湯ロード。(苦行)
 血の池温泉。(色が)(お宝変色要注意)
 灼熱サウナ。(苦行)
 などなどの猛者を千切っては投げ千切っては投げ。
「癒されるより、疲労が増してきた……」
「……サムライって大変ね」
 足取りが重くなってきた、ざくろとシオンの背へ、遠い目をして十六那が呟いた。



●温泉モンスター!?
「砂……風呂…………? これも、温泉なのかな??」
「砂にもぐれば良いでござるか?」
「何が、クリアの条件なのかしら。……素通りして良さそうなものだけど」
 温泉も、これで六つ目。
 もう少しでゴール、秘宝に届く……!
 後半だからこそ注意が必要だと、ざくろが今回も先陣を切る。
「わー、なんだかポカポカしていて、砂の中が気持ちいいよ。砂を被って横になるのが正式なんだよね」
 リアルブルーだったなら、スタッフの人が砂を掛けてくれたはず。
「って、わわ!!?」
「ざくろ殿!」
「時音ちゃん!!?」
 ――ずっ、ざくろの右足首が何者かに掴まれ、砂の中へと引きずり込まれる……!!
「……あ、気持ちいい…… このまま、寝ちゃいそう」
「しっかりするでござる、それは罠でござる!!」
 首から上だけを残し、砂の中へ取り込まれたざくろは恍惚とした表情。
 絶妙な暖かさ、砂の重さが心地よくて。湯あたりしかけていた体に、この熱は程よくて。
「『なお、このダンジョンは制覇に制限時間があり、越えてしまった場合には秘宝を手に入れることは不可能である』。
……なるほど、ここに来て寝落ちを誘う作戦ということね。仕方ないわね、あとは私が一人で行くわ。二人とも、起きられないでしょ?」
「はっ!!」
 ざくろを助けようとして、気づけば自分も砂の中。おまけに夢の中へ片足入っていたシオンが、十六那の言葉で我に返る。
「ざくろ殿、イザヤ殿、ここは拙者に任せるでごさる! モンスターと判れば、サムライがお相手いたそう!!」
 桃色の髪に絡まる砂を振り払い、気合一発シオンが抜け出る。タオルの下から武器を取り出す。
「さあ、掛かってくるがよい!!」
「くっ、ダメだ、やめるんだシオン……ッ」
 砂の魔物に取り込まれたまま、快楽から抜け出せずにざくろは声だけを発する。
 砂が集まり、人型を取る。シオンと対峙する。
「ダメだったら!!」
「せぇえええええい!!」

 ――斬ッ

 シオンの一閃により、砂人形はバラバラになり……ざくろたちの悲鳴が響いた。
「目が……目がァ…………!!!」
「だから、砂を相手に斬りかかったらダメだって…… いたたたたた」
「……Oh、サムライ、蒟蒻は斬れないデース」
「砂、だけどね……って、シオン、タオルタオル!!」
「? ――――っ」
 武器を取り出したことと大きく動いたことから、ひらりはらり。
 角度上、ざくろにしか見えないアングルだったことが幸いでした(映像的に)。

 なお、ざくろが出血多量に陥り少々休憩&冷却時間を取ることとなる。



●最後の難関
 炭酸泉、シンプルな名称のそれは透明な湯だった。
「あれ、普通に…… 温泉だね」
「びっくり高温ではござらんか?」
「お宝を浸すと溶けるとか?」
「ないみたい」
 身を清めて、秘宝の間へ―― そういうことだろうか??

 制限時間を示す砂時計には余裕があり、三人はこれまでの疲れをとることを選ぶ。
「む、美肌効果とな」
「……すでに美肌には意味がなさそうだし、一度入ったくらいで美肌になるなら……ね?」
 説明書きに反応したシオンへ、十六那がフフッと笑う。
「あ、でも、なんだかほんとにスベスベするよ。ほら、お肌がつるって……」
 ぱしゃん、湯から白い腕を出し、ざくろが撫でて見せる。
 湯に濡れる黒髪、白い肌。
 女性陣を敵に回した瞬間だった。



●伝説の秘宝
 七つの温泉を渡り歩いた。
 モンスターもやっつけた。
 お約束ハプニングも乗り越えた。

 時は充ちた。
 いざ、秘宝と対面――!!!


 大仰な岩戸を、三人がかりで開ける。
 重々しい音をたてた向こう側、台座にあるは――……


 たまご。


「えーと ……。温泉卵?」
「こちらには野菜があるぞ、ざくろ殿!」
「野菜も蒸されているようだな。ふむ、ここから湧いている温泉は飲めるのか」
「……。制限時間、って調理時間ってこと?」
「温泉を利用して、健康的な食生活こそが長寿の秘訣ということか!! サムライの道は奥が深いでござる!!」

 唖然とするざくろ。
 目を輝かせるシオン。
 気にせず食べ始める十六那。

「ところで、ここで問題です」
 蒸し野菜へ温泉卵をONしながら、ざくろが口を開いた。
「ざくろたちの服。入り口に置きっぱなしなんだけど……。これを食べたら、また戻る……の?」



 俺たちの冒険は、どうやらこれかららしい。
 今日も今日とて、世界の神秘と謎を追いかける。冒険に終わりはないのだ!!




【七つの温泉(うみ)を制覇せよ! 了】


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka1250/ 時音 ざくろ /男/16歳/機導師】
【ka0117/ シオン・アガホ /女/15歳/魔術師 】
【ka1841/金刀比良 十六那/女/17歳/魔術師 】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
ご依頼、ありがとうございました。
ドタバタコメディというより温泉行こうテロに近い仕上がりとなりましたががが
温泉の魅力を詰め込んだ冒険譚、お届けいたします。
楽しんでいただけましたら幸いです。
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発注者:キャラクター情報
アイコンイメージ
時音 ざくろ(ka1250)
副発注者(最大10名)
クリエイター:佐嶋 ちよみ
商品:■イベントシチュエーションノベル■

納品日:2014/12/08 11:56