※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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これは、とある御仁の、思いの丈である。
同時にこれは、ヘルメス情報局の記者である筆者が記事に起こすことの無かった、ただの記録である。
乱筆はお許し頂きたい。まさか、人の目に触れるとは思っていなかったものなのだ。
では何故、と問う貴方の心中は洞察に難くない。筆者自身も同じ心境である。
やんごとなき理由で、此度、その一部(筆者注:一部である。)を開陳することになった。ご覚悟の上、臨んでいただきたい。
とある御仁の、あまりに深い、思いの丈を。
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……なに?
サオリたんの事を聞きたい?
………………っ!! しっかたねぇなあ!
いいか? 耳の穴かっぽじってよく聞けよ? 一度しか語らねえからな? 聞き逃すなよ? ペンの準備は? 紙は? ……足りねえよ、これ使っとけ!!
よし、じゃあ、いくぞ。先ずは何からだ? まあいいか。とりあえず語るぜ?
サオリたんはな、本名は水天宮サオリ、っていうんだ。へへ、いい名前だろ? 年齢は16歳だ。コウコウ2ネンセイ。ブカツはサドウブだ。だが、華も活けられるんだ。これがまぁ、すげぇ見事な華を活けるんだぜ!?
俺とサオリたんの出会いは……まぁ、置いておいて。なに?
聞きたい?
聞きてぇのか?
……ったく、しっかたねぇなぁ!
ありゃァ忘れもしねぇ四月十四日……サオリたんがな、黒スーツの悪漢に絡まれてたんだ。腕を、こう、こんな感じで掴まれてな。俺様はもちろん助けに入ったぜ。明らかに困ってそうだったしな。それに……なんてーか、ほっとけなかった。ひょっとしたらその時から運命感じてたのかもしれねぇ。
……と、とにかく。俺様は悪漢達を追い払った。
すると、だぜ。
サオリたん、俺様にビンタくれやがったんだ!
おい、どう思う! 俺様は驚嘆したね! 助けたのに、ビンタだぜ? 「なんて事を……!」、って言ってな。それはもう見事な一枚絵でなあ……あ? 一枚絵? そんなことはどうでもいいんだよ。
とにかくな。それには理由があったんだ。俺様が良かれと思って追い払ったやつらは、サオリたんの……家族とも呼ぶべき奴達だったのさ。
のっけから俺様は、サオリたんを傷付けてしまった……。
(筆者注:しばし、かの御仁は押し黙り、独り酒を呷っていた)
それからしばらく、サオリたんと会うことは無かった。だがよ、ずーっと気になってたのさ。解るか?
そっか、解らねえか。しっかたねぇなぁ!
――あの時のサオリたん、確かに、嫌がってたんだよ。それが、気になってた。
答えが解ったのは、2週間後だ。サオリたんが、俺様のいる教室にやってきたのさ。
『無礼をお許しください』
と、な。礼儀正しいっつーか、義理がたい、っつーか! なあ!
その時だよ!
センタクシが……出たんだよ。こう、俺様が想った通りの、最高の奴がよ!
もちろん一発ドン、だ。
それを聞いた時のサオリたんの表情が、なぁ。こう、キたんだよ。ズッシリ、この胸にな。
んで、だ。
あろうことか、サオリたん……泣いちまったんだ。澎湃、って、言うんだったっけな。そんな感じだった。
……教室で、だぜ?
もちろん俺様は外に連れて行った。人目に晒すのは……なんつーか、よくねぇ。
あ? その後何があったか、だって?
……ば、ばっかお前、そりゃ……言えねえよ///
とっ、とにかく!
その時は、さっぱり聞けなかったんだが……後で、解ったんだよ。
サオリたんは、良いとこの生まれだった。それも、ちょっとやそっとの家じゃねえ。
大地主、大富豪、その土地の主みてぇなもんだった。こっちでいう、シャンシャンなんちゃら家みてぇなもんだとな。
それで、はっきり解ったぜ。俺様が、あん時感じた……運命、みたいなもんの正体が、な。俺とサオリたんが出会った時。あん時、サオリたんは……逃げたかったんだ。身内の囲い込み、自由のない暮らし――檻の中の未来に、鬱屈してたんだと。後で謝られたぜ。
『私の弱さを、全て、貴方のせいにしようとしていたと気付いたのです』、ってな。
……おゥ、これを面と向かって言えるサオリたんの神がかった義理固さっつーか、芯の強さが解るか? 解る? それを俺様にしか言わないっていう、その、なんだ、この……あァ?
ほんとぉぉぉぉにぃぃぃぃぃぃぃいいい?
適当こいてンなら吹っ飛ばすぞ? あ? マジで? よぉぉし、ならいい。いや、よくねぇ。サオリたんは渡さねぇからな!? なんつったってなぁ、俺様は……
『私、誰かに手をあげたのは……初めてでした』
って言われてんだからな!! サオリたんの……はっ、はっ、はっ、はっ、はじっ、はじめて……言わせんなコラァ!!!!
(筆者注:この時彼はエール酒を数え切れぬほど飲み干していた。氏が常からこういった人物であるかは筆者の及び知らぬ所である)
あ? 俺様だ? もちろん、家族は好きだぜ。だが、貴族であることに面倒を感じなかったわけじゃねぇ。うちの家は、金も地位も十二分にあるわけじゃねぇしな。いや、まぁ、いい。俺様の話は別にいい。
サオリたんだよ。サオリたん。
で、な。俺様はどうしたかっつーと、だな……勿論、アレだ。ワビいれてもらったわけよ。ったりめぇだろ? 通すもん通さなくちゃなんねぇ。
俺がしてもらった“詫び“はな……あー、その…………だよ。
っせーな、なんども言わせんなよ! デエートだよ! デート!
つっても、サオリたんは門限厳しいからな。習い事も多いしよ。帰り道に買い食いしたり、どっかに寄ったりだったが……。
たったそれだけの、たったそれだけのことだぜ。だけどよ……サオリたん、そりゃあもうメチャクチャ喜んでたんだ。こう……一枚絵でな。笑顔でなぁ……あ? 一枚絵がなんだって? ンなもんどうでもいーんだよ。
サオリたん、他の子と違って土日に誘えないっていう鬼畜難易度でなぁ……他の子の平日イベントも潰れちまう上に土日はサオリたんと遊びに行くためにバイトとステータスアップに勤しまなくちゃなんねえし、セーブデータ共有もできねえから地味に束縛するタイプっつーか……あ? 難易度? バイト? こっちの話だ、ほっとけ!
とにかく、なんつーか、何よりこっちの気が晴れた気がしたんだよ。救えた、っつーかな。
……その時はな。
ありゃァ俺様にとって手痛い失敗でもあったわけさ。
色々あったぜ。サオリたん、自由、だとか、楽しみ、だとか、そういうのを覚えちまった……ああ、俺のせい、だな。確かにそうだ。
ただ、サオリたんのおかげ……おぅ、あえてこういうぜ、おかげでな。俺様は、こう、ケツを持たなくちゃなんねぇっつーか、だな、そういう、心構えみたいなもんをな、ガチっと固めたわけだ。
つまり俺様は、サオリたんのおかげで……漢に、なったのさ。
商売でもそうだよな。俺様の行動は全部、俺様に返ってくる。んでもって、それだけじゃない。それには、『相手』も巻き込まれるんだ。否応なく、な。
となりゃぁ、俺様は、俺様らしく……護ってやらなきゃ、ウソだろ、ってな。そう思……あ?
結局何の話だと?
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァアアアア!????
登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka1305/ジャック・J・グリーヴ/漢/(年齢=彼女いない)歳/ゲーマー】
【??????/サオリたん/女性/(年齢=秘密)歳/水天宮家跡取り】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お世話になっております、ムジカです。
この度はご発注有難うございました。ギャルゲー経験がミジンコレベルに微小なムジカですが、このような発注を頂き、とてもとても恐悦している次第でございます。
お、お楽しみいただけたでしょうか……?
あの素敵な発注文から、サオリたんのサオリたんたる所以をどこまで書くかというのは凄く悩んだのですが、こういった形なら、サオリたんらしさを崩さず、ジャック様らしさを崩さずに描写できると思……ったのです。
本当は改行も無くして一息に書きたかったのですが、想定以上に見にくかったので、諦めちゃいました。
さて。それでは、この度はご発注ありがとうございました。今後とも、御縁がありましたら宜しくお願い致します。