※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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鍛えた筋肉の使い道
明くる日、ジャックはいく分緊張した赴きで目の前のクローゼットへ聖印を切った。
「ついにこの日が来たか……」
生唾を飲み込みながら逸る気持ちを抑え込むと、慎重にその扉を開く。そこには“漢”の生きざまを示すための正装が丁寧にしまい込まれており、“戦地”へ赴くための装備がピカピカに磨かれて、まるで飾り物のように立てかけてあった。
彼は恭しく一礼してそれらを手に取ると、その厚い身体に手早く身にまとっていく。そしてほとんど家具を壁際に寄せた中、唯一残されたテーブルの上に――そっとゲーム機を備えた。
それから知り合いの菓子店に頼んだケーキや、使用人に頼んでおいた奮発した料理の数々を並べると、再び聖印を切ってゲームの電源をONにする。起動した画面の中で、愛する“あの子”がジャックへ向けてほほ笑んだ。
「――サオリたん、お誕生日おめでとぉぉぉぉ!!!」
クラッカーを鳴らすと同時に盛大に叫ぶ。それからハッピ、ハチマキ、ウチワの3種の神器を身にまとった状態で祝いの――もとい生まれてきてくれた事への感謝のオタ芸を舞い踊るのだ。
「ッセイ! ッセイ! L! O! V! E! サ・オ・リィィィ!!」
ほとばしる汗が煌めきながら飛び散って、渾身の応援歌を口にする。鍛え上げられた肉体から発せられるアグレッシブな振り付けは、迫力よし、激しさよし、キレよし。どんなに苦しい姿勢のポーズでも、どんなに腕を振りまくろうとも、この筋肉には大した負荷など掛かりはしない。むしろ日付が変わるその瞬間まで、ずっと踊り続けられるぜ。
――おめでとう、サオリッ!
――ありがとう、サオリッ!
――今年も健やかに、ほほ笑んでいてくれッ!
これは自分からの精いっぱいのお祝いだと――声が枯れるまで叫び踊り続けた。
やがてケーキの蝋燭が全て溶け切ったころ、彼は満足した様子で息を弾ませながら、“彼女”と一緒に料理の数々を黙々と平らげる。2人分の食事を食べきるのは少々キツかったが、恋愛とは常に苦痛を伴うものなのだ。
パンパンに膨れたお腹を抱えて、彼はどっかりとカーペットに横たわる。それから微睡んだ瞳で、画面の中の少女へと笑いかけた。
――それからしばらく家族からの視線が痛かったとかなんとか話が上がっているが、その真偽は定かではない。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka1305/ジャック・J・グリーヴ/男性/22/闘狩人】