※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
ビター・シュガー

 港町の繁華街、路地の入口で、エアルドフリスは何と表記されていたのか判然としない程に錆付いた看板へ身を預けるようにして、地面にへたり込んでいた。
 元来、酒に強いタチではない。いや、有体に言って相当な下戸だった。ビアの一杯でさえ、酔いが回る程である。そういう人間が九十プルーフを超える火酒を呷れば、こうなるのは当然の事だ。
 手にしていた酒瓶は、何処へ行ったのか。残っているのは、上下の感覚さえ怪しくさせている酩酊だけである。
 ダウンタウンの片隅に蹲るただの酔いどれには、誰も関わろうとはしない。
 ただ、雑踏だけが目の前を過ぎてゆく。やがて、酒精に侵された頭の中で、雑踏の音が大きく響くような感覚に襲われた。
 道を行く足音、談話する声。大勢の人間が発するノイズが、孤独を浮き彫りにする。そうだ、自分はどうしようもなく独りだった。
 行き摺りの女と肌を重ねる度に、寧ろその感覚は大きくなっていったのではなかったか?
 独り、焚き火の傍で無聊を慰めていれば良かったろうに、そうする事にも耐え切れなかった、半端で意気地のない孤独主義。昔から何も変わっちゃいない。
 頭に響き渡るノイズに、押し潰されそうになっていたその時である。
「あの、だいじょうぶ、ですか?」
 ふと舞い降りたその声に顔を上げると、そこには一人の少女がいた。十に届くか否かという年頃の、中性的な服に身を包んだ少女。
「どこか、具合でも悪いんですか?」
 いや、やや高いがテノールで告げられたその声からすると、少年──だろうか。
「……なんの用だ。見世物じゃないぞ」
 据わった眼で睨むと、少年は怯える顔をした。だが彼は、世話焼きなのか、負けん気が強いのか、足を退く事もなく、何やら掌に乗せて差し出して来た。
 それは、一口大のチョコレートだった。
「甘いモノ食べると、元気出ます、よ?」
 怯えの気配を押し隠しながらも笑みと共に菓子を差し出す少年に、今更ながら自分の行いが無下に過ぎたと、ばつの悪い思いを感じ、チョコレートを摘まみ取った。すると、少年は安堵の息を漏らして、そしてまた笑みを向けると、半ば逃げ出すようにして去ってゆく。
 それを見送ってから掌の上を一瞥して、他に対処法も思い付かず、チョコレートを口に放り込む。
「……あますぎだ」
 口の中で溶ける甘さに、舌を打つ。押し潰されそうな感覚が和らいでいる事に気付き、少し癪に障ったからだった。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka1856/エアルドフリス/男/20/魔術師】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 いきなり勝手に登場したこの少年ですが、彼がそうなのかどうかは、僕も決めてません。そうであっても、そうでなくても、これは美味しいシチュですし。僕個人としては、寧ろそうじゃない方が好みだったりします。お好みに合わせて妄想を膨らませてみてくださいませ。
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発注者:キャラクター情報
アイコンイメージ
エアルドフリス(ka1856)
副発注者(最大10名)
クリエイター:-
商品:おまけノベル

納品日:2018/02/28 11:25