※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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甘い罠の意味
メイムはグラズヘイム王国のクリシス家の治める町にある図書館にいた。そこに不思議な本もあることに気づいた。
「これはあの本に書いてあった小説だよね」
思わず手にとって読み始める。「あの本」というか、そのシリーズでは有名な小説のタイトルである。実存するなら読みたい人は多いはずだ。
実際、メイムは手にしている。なかなか面白い、夢でなければ良いのだが。
カチン、かさかさ……ぽぽぽ、ぽっふん……。
謎の音が響く。メイムは本をしまうと音の方に足を向けた。
何がいるのか想像するが、害虫や害獣ではないだろう。それらは早々に駆除されるから。
(ここだね)
本棚の陰からそっと覗く、ツインテールは握って落ちないようにしつつ。
そこにいたのは三十センチほどの大きさの、三頭身の男の子の人形が三体。布とボタン、毛糸など手作り風。
メイムには見覚えがあった。
それらが動き回るとメイムが聞いた音がする。
(原因は分かった……これらがいるなら、プエルもいるってことだよね?)
見ていても仕方がないため通りすがりとばかりに通路に出てみた。
人形たちはメイムを見た後、読書をやめてぱたりと倒れる。二秒ほどするとちらりとメイムの方を見て硬直する。
「動くってわかっているから」
しゃがんで話しかけると、人形たちは立ち上がりメイムを見上げる。
「で、あんたたちの主人はどこにいるの?」
三体は腕を胸の前で組んで揺れた。
「『どーしよー、教えていいのかなー』てことかな?」
人形たちは首を横に振る。
「んー? 『主人って誰?』」
三体は首を縦に振った。
メイムは一体を掴むと「プエルのところに案内をよろしく」と笑顔で言った。残りの二体がメイムの足を突いてから方向を指し示した。
戦略や狩猟のコーナーに、本を取るための梯子に座り、真剣な目で本を手にする憂悦孤唱プエルを発見する。その近くにも人形たちはおり、思い思いにくつろいでいる。
「何読んでるの?」
「う、うわあ」
プエルは驚いて後方に落ちかかる。
「……なんだ人間がいたのか」
プエルは確認後、読書に戻る。
「だから! 何読んでいるの」
「……うるさい、あっちにいけ」
「ほほー、そんなことを言っていいのかな?」
メイムは手にしている人形を持ち上げた。その人形が怯えている。
「……そ、そんな人形質取ったところで、ぼ、余は動じないぞ」
(ぷぷっ、めちゃくちゃ動揺しているんだけど)
溜息を一つついてからプエルは本の背表紙を見せた。
「これだよ」
「罠を作りたいの?」
「まあな」
「何をするかによるんだけど」
「レ……ある人を無傷で捕まえたいんだ」
メイムはうなずいた。
「それなら、こんな本はどうかな?」
メイムは本棚から東方絡みの本を何冊か取り出す。
「こっちのヒトなら、この辺りの計略には弱いはず」
「でも、色々知っているんだよなぁ」
梯子から下りてきた。
「それはそれ。例えば、これについて……」
内容をかいつまんで説明し、アレンジも教える。
「あとは、発想力の問題だよ」
「……なるほど。考えれば、知らない罠になるのか」
「そうそう」
メイムが選んだ本は実は「こんな本があったら面白よね」とか「とんでもない技を集めました」と言った冗談本やら空想本である。
プエルに示した部分も、実際にできるか不明だ。
リーンゴーン。
鐘の音がする。
「あー、おやつだよ。晴れているし、外でお茶をしないとね」
「お茶……おやつ」
「そうそう、おやつ。なんでおやつっていうか知っているかな?」
「え?」
メイムがうんちくを披露した。プエルは相槌を打ったが脳内は菓子で一杯だろう。
一行は中庭に向かった。
中庭にはあずまやがあり、そこにテーブルセットがある。テーブルにはティースタンドやティーカップ等準備が万端だ。
ティースタンドには菓子や果物、サンドウィッチなどが載り、おいしい香りを漂わせている。
プエルの様子を見ると喜びとハンターの前だから威厳を保たねばという二つが見える。
足元の人形たちが左右に飛び跳ねて踊っているのは、プエルの心情を物語っている気がした。
「ティータイムも紳士のたしなみよね?」
プエルは何かの葛藤後、メイムの椅子を引く。
「ありがと!」
「うう」
うめき声がプエルから漏れるが、テーブルの上を見ると茶を淹れ始める。
「ティーカップは温められている……。ティーポットは、お湯がこれか……茶葉。この茶葉はヒカヤのだね」
(紳士のたしなみは飲んで食べる方で、淹れるのは別だと思う。ああ、茶葉を見て産地が分かるのはすごいわ)
プエルの様子をメイムは観察する。菓子類の甘い香りの中に、ヒカヤ茶のさわやかでしっかりとした重みのある香りが加わる。
注ぎ終わるとメイムの前にティーカップとソーサーを置いた。
「砂糖とミルクは?」
「お薦めは?」
「何も入れなくてもおいしいけれど、砂糖を一匙入れるとよりよいよ」
「なら、お薦めで」
プエルは砂糖を一匙入れた。
「なんで、僕、こんなことしているんだっけ」
「ふふふ、それがハニートラップというものよ」
「ハニートラップ?」
「そう、王国では有名な物よ」
プエルは眉を中央に寄せる。
「そのくらい知っている!」
プエルは胸を張る。ただし、その表情を見ると知らないと分かる。
「それより、食べよう」
スコーンを持って逃げようとしているプエル人形とプエルは目が合った。
「あ、お前たち!」
プエルが人形を捕まえようとしたが、人形はラグビーのようにスコーンを別の人形に投げた。何度かプエルをかわしたが、コントロールが悪く、スコーンは宙を飛んだ。それを小鳥がキャッチして逃げた。
「……そんな隙を狙って、砂糖入れを持って逃げる一体の人形……あ、こけた」
メイムが実況する。アリがものすごい速さで現れ、砂糖に群がった。途中にいたプエル人形が真っ黒になっている。
「あああ」
プエルがうめく。
その様子をメイムは見て笑う。いや、こらえた。口を両手で押さえ、肩を震わせる。
「いたただくよ……ひょっとしてこれ、プエルが作ったの?」
「うーん、そういうことらしい」
椅子につくプエル。
「どう食べるといいかな?」
「これらをたっぷり載せて食べる。クリームは甘さをおさえてあるんだ。シロップはヒカヤ茶を使ってさっぱりとした甘さ」
「……すっごいハニートラップよね」
「そうだ」
メイムは微笑み褒めておく。
(これさ、好感度上がるよね、生きていればイケメン青年で性格よしでこれもできたら。こわいなー。ハニートラップの意味違うけれど、普通に甘い罠だよね。それで、こんな菓子やお茶を用意して、一対一で微笑んで……。今、すごくこっちをにらんで菓子に笑顔の歪虚だけどー)
メイムはもそもそとスコーンを食べる。美味しいのが悔しい。何が悔しいのかわからないが悔しい。
平穏な時間。森の小動物のように人形たちは遊んでいる。小川に人形が一体落ち流される。
「大変だよ、パンヤって濡れると乾きにくいよー」
メイムが言うとプエルが慌てて立ち上がり、追いかけて捕まえた。そのあと、建物に消える。
「……あれ? 取り残されているんだけど……結局、ハニートラップの意味、プエルはわかっているのかなー?」
ツメが甘い。言葉の意味を聞かなかった理由はいくつかありそうだ。
「だから、かわいいなーと思えるんだけどねー」
メイムは笑った。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】
ka2290/メイム/女性/15/霊闘士
kz0127/プエル/男性/14/紳士?な歪虚
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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こんにちは。
書いているうちに、青年でうまくすれば、契約者を増やせたんですね! そこにつながってしまうのは歪虚の宿命。
そもそも、歪虚の性格もありますし……どうなんでしょうか。
発注ありがとうございました。