※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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昔取った杵柄
「悪いね、こんな地味できつい仕事」
「いや、出るものは出るんだし構わないよ。一応経験はあるから、他の奴ほどきついって訳じゃないし。それに……」
――うっかり遊びすぎて金欠な上に、オフィスに行くのが遅かったせいでこれしか仕事がなかったから、ね。
くるりと回り、服装のチェックを済ませる。
厚手のタイツに沼地用のブーツ、軍手は手首で留められる本格的なもので、肌の露出は顔の僅かな部分だけである事を再確認する。
毒液を飛ばすタイプではないのでゴーグルはなし、代わりに虫取り網と簡単には破れない袋、万が一噛まれた時用に止血バンドも用意した。
ソフィアが受けた依頼は毒蛇の捕獲、子供でも出来るけど危険度もそれなりにあって、体力と根気に身体能力が要求される、言ってしまえば“人気のない”お小遣い稼ぎ系のお仕事だった。
依頼主に告げたように、経験はあった。
一般人がやりたがらないと言っても、ソフィアからしてみれば気持ち的にも楽な方の仕事だ。
人間を相手にする訳じゃないから、他人の顔色を伺ったりする必要はない。
医者にかかる金なんてなかったから絶対に毒を受ける訳には行かなかったけど、蛇自体は温厚な生き物で、隙さえ知っていれば捕まえるのはそれほど難しくなかった。
素性を詮索される事すらなかったから、かつてのソフィアにとっては極めて都合のいい『子供でも出来る』お小遣い稼ぎだった。
網と袋を持ち、他の装備は鞄にしまって現地へと向かう。
気候は『厚着を除けば暑くない』と言った程度で、蛇の冬眠前にはまだ間に合うだろう。
歪虚退治でもなし、やるのは久しぶりだけど、特に問題は感じない。
生息地の沼地は土が柔らかく、草が茂っていて、湿気の多いいかにも蛇が好みそうな地形だ。
足元の視界は悪く、不意を打たれやすい。なんなら不注意で蛇を踏みつけて反撃されかねない、というのが人気のない仕事になった理由だと思う。
「よっと」
木のうろに近い場所に瓶を使ったトラップを仕掛けておく、捕まったらラッキーだから置いておく事に損はない。
…………。
こんな、誰もがやりたがらない仕事が出来る理由は、『それが一番手っ取り早く小金を入手出来る手段だったから』に尽きる。
今や立派な職人の腕を持っているといっても、最初からそうで在れたはずもない。
幼い見た目に複雑な生い立ち、幾ら年や経験を重ねていても、森を出て暫くのソフィアは何も出来ないし、させてもらえなかった。
『エルフの恥さらし』
そう言われる事はほぼなくなっていたけれど。
『なんでエルフの夫婦がドワーフの子供を――』
そんな言葉は、時折悪意なしにでも飛んできていた。
両親といると、そういう事があるのだ。
別に両親を嫌っていた訳じゃない、感謝すら覚えているけど、外野の囀りで心が軋む。
一人でいた方が心は楽だった、心配かけないように必要な時間に顔を出して、安心させた後にふらりと距離を取る。
何が出来る訳でもない、何も出来ない。
歪んだ心は子供の群れに入る事を嫌っていたし、自分が真っ当なつもりでいる大人に近づくのも嫌だった。
何かしたいと思う心だけが燻る。
自分が負担であることはわかっていたから、贅沢なんて言わなかった。
お小遣い稼ぎに手を出したのは――そう、自分を抱える分の負担を軽く出来ればと思っていたし、それが出来る事で一人前になれると思っていた。
お金でやり取り出来る自由さに心惹かれていたのもある。
掃除に草むしり、ガイドの真似事。
機会とチップをもぎ取るには厚顔さと強かさが必要で、そういった事にも少しずつ慣れていった。
身元が確かだとは言いがたかったから、店番などの仕事は取れない。その点、仕事を果たせば金がもらえる毒蛇の扱いがどれだけ楽な事か。
見つけて、隙を伺って、網をかけるだけ。
「……いっちょ上がり」
思っていたのと同じように、仕事は楽に果たした。
罠の分も含めて毒蛇を5匹、全て袋に放り込んで、さっさと戻ると依頼人に引き渡した。
…………。
金を受け取って、帰り道を歩く。
しきりに礼を言う依頼人の事を思い返しながら、本当に大した事じゃないのに、と考えていた。
手の中には自分で稼いだお金、お小遣い稼ぎの事は当時両親にも伝えていたけれど、それは心配をかけないものだけで、少しでも危険なものは黙秘していた。
一部だけでも本当の事を伝えておけば、隠しごとがあってもそっちの事だと勘違いしてくれる。その頃から自分は狡さを身につけていた。
「……狡くならないで済むなら、そっちでも良かったんだけどね」
でもそうはならなかった。狡い方が生きるのは楽で、狡く在る事を止める事のないまま、ここまで来た、つまりはそれだけ。
他の可能性に想いを馳せる事があっても、それは絵空事以上の意味を持っていない、酒と共に流される、その程度の戯言だ。
現実は生き汚く歩いてきたただ一つだけ。
泥にまみれて、お世辞にも綺麗とは言えないけれど、愛着くらいはあった。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka2383/ソフィア =リリィホルム/女性/14/機導師(アルケミスト)】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お待たせしました、こちら個室にて『誰が来てもテーマは同じ』と宣言したおまかせノベル。
テーマは『毒蛇捕獲の依頼』でした。
身体能力や生い立ちによって各PCの立ち回り方は違ってくるのですが……。
ソフィアちゃんならこんな感じかな、と。
森を出たばかり~商人の世話になる前を想定しています、グレるならこの時期かと。
服装はジーンズと悩みましたが、ソフィアちゃんなら多分タイツ。