※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
生憎、その瞬間は今生ではないだろうけれど

 何度、その死を見ただろう。

 切欠はリッターを失ったことだった。
 けれど二回目は、三回目は、四回目は……
 回数を重ねるごとに損失は、大切な縁を失う回数は減った。
 切欠であるリッターを失うことがなくなっても。
 ヴィルマ・レーヴェシュタイン(ka2549)がその死を見る結果は変わらなかった。

 やり直せるなら、違う道を選べるかもしれないと、はじめのうちは信じていた。
 だって放っておけなかったのだ。
 記憶の中におぼろげにある存在に、どこか似ているように思えたからだと思う。
 のめり込む様子に、自分でも覚えがあったから。
 切欠があって交差した運命があるように、切欠があれば運命は変わると思いたかった。

 種族の違いはわかっていた。
 年齢の差も次第に知れた。
 人間らしさが垣間見えた時、手を伸ばせる可能性を探ると決めた。
 随分と年上のくせに、年下のように思える変わり者を、引き戻せると……思っていた。
 結局は全て、その死でもって縁は切れていた。

 揃った鍵は、いくつ?
 
 過去の栄光。
 あり得たかも知れない、という願望と想像は願いとなった。
 繰り返し、けれど全て繋げば長い時間は全てを強める力となった。
 世界という概念が固定され、だからこそ扉をこじ開けようとする異分子が存在した。
 死の道へと向かわなかった変わり者が開いた扉は……

 この世界で死者であるはずの存在は、生者と同じ形での存在を許されない。
 強められた願いは新たな種としての肉体を描き、死者の記憶をかき集めた。
 死の記憶を持ち、死の経験はなく。
 堕ちた知識を持ち、堕ちぬ生を得て。
 しかし生来の気質だけは同じまま。

 同じ側に引き戻したわけではない。
 結果として同じ場所に立てているだけ。
 縁を得て溜め込んだ全てを拳ではらした後ならば、気負う必要もないだろうと。
 唯一認めていたとも言える、善にも悪にもなり得る気質を活かす手を伝え、押し付けた。
 これから同じ道を歩む形があってもいいと、気まぐれが働いた。

 興味を刺激するのは簡単だった。
 何度も繰り返したことで、その気質は捉えていたから。
 ただそこに、ヴィルマの、ヴィルマ達の望みを重ね合わせればいいだけだった。
 別人であり同一人物であり、敵だった今の味方。
 どうやっても新しい形なのは変わらなかった。

 ただ……これから先は。
 何度も、死を見せることになるのだろう。

 この繰り返しが終わるまで。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

【ヴィルマ・レーヴェシュタイン/女/23歳/霧魔術師/似非英霊の……】
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発注者:キャラクター情報
アイコンイメージ
ヴィルマ・レーヴェシュタイン(ka2549)
副発注者(最大10名)
クリエイター:石田まきば
商品:おまけノベル

納品日:2020/09/04 09:44