※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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春はまだ遠く
フラメディア・イジリアはとても美しい娘だ。
腰まで届く燃えるような赤い髪、意志の強い、煌く橙色の瞳。凹凸がハッキリとした女性的な体形と――歩けば誰もが振り返るような容姿を持っていながら、フラメディア自身あまりそのことについて気にしたことはない。
そう。しいて興味があることと言えば、『強いものと戦う』ことだろうか。
帝国の騎士を務める父のもとに生まれ、幼いころから武器を振るうことが当たり前だった。
その為か、愛らしい見た目にそぐわぬ好戦的な性格となり……。
父の後を継いで騎士にならず、ハンターという道を選んだのも、そのほうが強敵と戦えると考えたからだし、実際その通りだった。
強敵がいると聞けばそこへ行き、十三魔が出たと聞けば駆け付ける――そんな生活は、フラメディアにたまらない充足を与えてくれた。
そんな彼女を、『年頃になれば相応に女の子らしくなるだろう』と静観していた父親は、自分の考えが甘かったことを痛感した。
洋服こそ華美なものを纏うことが多かったが、それ以外が……その。とにかくぶっ飛んでいたのだ。
年を経て女の子らしくなるどころか、一層戦いの腕を上げることに心血を注ぐようになったし、小遣いを与えれば全て武器と防具に変えて来る。
そんな娘に危機感を持った父は、娘に縁談を持ち掛けたが、フラメディアはそれらを全て一蹴した。
……いや、訂正する。フラメディアには一蹴したつもりは一切ない。
ただ、彼女なりの条件をつけただけだ。
『自分を打ち負かせるような強い男が良い』、と。
――フラメディアは日々の生活のお陰か、既に父の腕前を遥かに凌駕している。
魔人クラスの歪虚と渡り合うような娘に勝てるような男はそうそういない。
……そんな条件を突きつけられては、父が『一蹴された』と感じてしまったのは仕方のないことだったのかもしれない。
まあ、何はともあれそんな訳で。彼女は色恋とは縁遠い生活を送っている。
フラメディアはその日、依頼に出向いていた。
牧場を占拠していた猪型の雑魔を綺麗に一掃し、家畜たちに怪我もなく、ほぼ完璧と言える仕事ぶりをした。
――雑魔とは聞いていたが、流石は猪。タックルはなかなか身に染みた。
……ふむ。帰りに錬成工房に寄って、鎧を修復するついでに強化して帰るとするかの。
そんな事を考えていた彼女。ハンターオフィスを出たところで、声をかけられた。
「フ、フラメディアさん……!」
「ん? なんじゃ?」
小首を傾げる彼女に、男は狼狽えながらも言葉を続ける。
「えっとあの。自分、この間依頼で助けて貰った者なんですけど……!」
そういえばこの痩せた男には見覚えがある。確か先日依頼で行った村にいたような……。
「……そうか、あの村の者かえ。村長殿は元気にしておるかや?」
「はい! お陰様で……! って、今日はそうじゃなくてですね!」
「む? どうした。また村に何事かあったのか?」
「いえ、違うんです。今日はフラメディアさん個人に用事があって……!」
「ふむ? 聞こうか」
整った顔に微笑みを乗せるフラメディア。
やけに男の顔が赤い気がするがどうしたのだろう。
男は少し躊躇った様子を見せたものの、ガバッっと頭を下げて……後ろ手に隠していた深紅な薔薇の花束を彼女の鼻先に突きつけた。
「一目見た時から貴女と決めてました! 俺と付き合ってください!!!」
男の突然の告白に、足を止める道行く人たち。
ヒューヒュー! と口笛を鳴らして囃し立てる者、ニヤニヤしながら見守る者。陰ながら男を応援する者……。
当の告白されたフラメディアは、暫しキョトンとしていたが……すぐにニヤリと不敵な笑いを浮かべた。
「……そうか。我を所望するか。いいだろう、付き合ってやろう」
「えっ!? いいんですか!?」
「うむ。強くなるための修行に付き合えと言っておるのだろう? あの村を守る為に立ち上がるお前の心意気、良く理解した。雑魔くらいになら渡り合えるようにしてやるゆえ、安心するがよい」
フラメディアの返答にパァ……! と表情を明るくした男。続いた言葉に、一瞬で地獄に叩き落される。
えっ。恋人になって欲しいとお願いしたのにどうしてこうなった!?
残念! フラメディアさんは幾度となく男性から告白を受けて来たが、全て決闘の申し込みと勘違いして返り討ちにしてきている猛者なのだ!!
「そうと決まれば……そうさな。まずは体幹を作るところからじゃな」
「えっ。ちょっ。フラメディアさん!? この花束の意味ご理解戴けてます?」
「……薔薇は戦いには向かんぞ? お前が得意な武器を見定めてやろう」
「だからそうじゃなくてーーー!!」
半泣きの男をズルズルと引きずって行くフラメディア。
告白が予想外の方向に向かって、見守っていた者達は何ともいえない表情をしていた。
――フラメディアの春はまだまだ遠そうである。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ka2604/フラメディア・イリジア/女/14/強さを求める少女
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お世話になっております。猫又です。
フラメディアちゃんの日常のお話、いかがでしたでしょうか。
青木とやり合う話にするか、日常の話にするか悩んだのですが、フラメディアちゃんの設定欄を読んでいたら苦悩するお父さん像がむくむくと沸き上がって来てこのようなお話になりました。少しでもお楽しみ戴けましたら幸いです。
好き勝手色々書いてしまいましたが、話し方、内容等気になる点がございましたらお気軽にリテイクをお申し付け下さい。
ご依頼戴きありがとうございました。