※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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或る夕映え
1017年11月X日
徐々に太陽が傾いでいき、西の空が橙に染まる頃。
今日は庭に出ることを許されたので、端の方においてあるベンチに座っていた。
ゆったりとした時間だった。この施設の中では、時間がゆっくり流れる気がする。それは日常の雑事を忘れられるというような穏やかな時間ではなく、真っ白で病的であり、真綿で首を絞められているような、そんな時間だった。
太陽の光線が、白い外壁を染め上げていく。
長くなる影。俺は自分の影を眺めてここに来てからのことを考えた。
彼女と出会い、様々な患者と出会い、たまには退院という別れを知り、けれどまた帰って来る者もいた。
ここにいる患者たちがいなくなることはないのだろう。俺は漠然とそう思った。
患者たちにも、患者たちの信じている世界があるのだ。
例えば、寿命をかけるとこ。例えば天使を探すこと。天使を待つこと。
きっと、彼らの中ではそれは正しいことなのだ。ただ、他人……この施設の外にいる自分は正常だと思っている人間たちには不快に見えるのだろう。
俺は自傷をしていた。それは当然のように思えた。
自分の体を剣で突き刺した。それはこの閉塞感の答えを知りたかったからだ。
そんなことをつらつら考えていた時、俺の傍に気配を感じた。
振り向くと、そこには、この前十字路でぶつかった少女が立っていた。
軽やかにはねた栗色の髪に、星のような瞳が印象的な少女だった。
少女は、無言で俺に手紙を差し出した。
受け取るより他にないので、俺が受け取ると、少女は走り去ってしまった。
手紙には、
「ありがとう」
と、短く記されていた。
もしかして、俺があの時少女をかばったお礼なのだろうか。
ふと、空を見上げると、厚い雲の隙間から、夥しい光が梯子のように降り注いでいた。
俺がその荘厳な光景を眺めていると、扉の方から、俺の担当医である彼女が、もう部屋に戻る時間だと呼びかけた。
建物に戻る途中、俺はあの老人の姿が目についた。彼はやっぱり空を見上げていた。
彼の天使はいつやって来るのだろうか。
「もう時間よ。早く部屋に戻りなさい」
彼女が再度呼びかける。
「今行きますよ」
遠くない未来、俺もここを出て行くことになるのだろうか。
いや、それとも……
今は何もわからない。
けれど、とりあえずは、彼女の元に戻ろう、と思った。
──患者の手記より
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka2726 / Gacrux / 男 / 23 / 闘狩人】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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光は階のように降り注ぐ。
重ね重ね、ご依頼ありがとうございました。